表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/24

幕間01 秘密の渾名

 あたしと晶、律は同じ幼稚園で出会って仲良くなった幼馴染。

 時々クラスは違ったけど、小、中、高と偶然にも同じ学校に通っていたから、よく三人で集まっていろんな遊びをした。 

 中でも印象深いのが、小学二年生の時のこと。


「なあなあ、ふたりとも今日ヒマ? 親戚のにいちゃんからゲームもらったんだけどさ、いっしょにやろーよ!」

 

 帰りの会が終わったとたんに隣のクラスから駆けこんできた晶が、あたしと斜め前の席に座る律に興奮しながら話しかけてきたっけ。

 小さいころって、テレビや漫画やゲームなんてものは親が遠ざけがちじゃない?

 あたしたちも例に漏れず、こんな機会はめったになかったの。

 だから二人とも喜んで晶の家について行って、それぞれに用意されたコントローラーを握ったわ。


「にいちゃんが言うには、前に人気だったのを、り……りめいく? して、新しく出したものなんだってさ」


 晶が説明してくれた通り、それは昔家庭用ゲーム機にカセットを差して遊ぶ形だったものを、グラフィックの綺麗な最新型のゲーム機用に作り直した人気RPGだった。

 当時は一人用だったのを改良して、仲間にしたキャラクターのうち最大四人まで戦闘シーンで自由に動かすことができる仕様に変更されたようで、晶と一緒にストーリーを追いかけながら三人で戦いに参加することになった。

 主人公にはすでに晶の選んだ名前がついているので、あたしと律は比較的初期に仲間になったキャラクターたちに名前をつけた。


「あれ? なあんだ、名前、カタカナ四文字までしか入れられないんだ」

「そこが前とかわらなくていいんだーってにいちゃんが言ってた」

「そうなんだ。えー、どんな名前にしようかなあ」

「おれは自分の名前にする」

「えっ、律、名字から入れたらぜんぶ入らないよ?」

「……むむ」

「あはは、律のは鳥の名前みたいになったな! 美里音はどうする?」

「んー、あたしも自分の名前にしようかな。カタカナだと外国のひとみたいでいいなって思うし。……ね、晶のはかわいいよね、どこから出てきたの?」

「この前英会話のせんせーに自己紹介したときに、聞きまちがえられたやつにしてみた。マイネームイズー、タカナシアキラーって言ったのに、『タカ、ナーシャ?』って」

「タカナーシャ! あはは!」


 その時初めてキャラクターにつけた名前を、あたしたちはその後もいろんなゲーム内で使い続けた。

 せっかくだから、三人が揃った時だけ使う秘密の渾名あだなとして。

 あたしは自分の名前そのままだったから、後々特定されにくいようにって間に伸ばし棒を入れたりしたけどね。

 高校生になってからは時間さえ守ればオンラインゲームも許可されたから、夕食のあとにネット上で集合してパーティーを組んだりもした。

 やりとりはチャットが主だったから、パーティー用のグループチャットでマップを見ながら会話したりしてね。

____


『パーティーメンバーの ナーシャ がログインしました』


  ナーシャ《ちゃおー。もう集まってる?》

  コマドリ《いるぞ》

  ミリーネ《同じく。でも先に東の森にきちゃった! 待ってるねー》

  コマドリ《おい、気が早い》

  ナーシャ《ミリーネは集合場所で待っててくれた試しがない件》

  ミリーネ《ごめんごめん(笑)》

____


 元はその場の思いつきで決めたニックネームだったけど、長く使っていれば愛着も湧く。

 それに案外珍しいみたいで、他の人と被ることが少ないから見つけやすいというメリットもあった。 


「もし、残りの二人もこの世界に飛ばされてどこかにいるんだとしたら」


 ――この秘密の渾名は、三人が共有している立派な暗号となる。


 きっと律も晶もそう考えて、この名前を道しるべに掲げてくれるに違いないから。

 あたしはなんとしてでも二人を見つけ出すんだ。


 ……二人も同じように思ってくれているといいなあ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ