摸 ①
…。
自分の身体を抱え込むようにして、うずくまって。
…僕はジッと、我慢をしていた。
泣いては、いけない。
瞳に溜まった涙の粒が溢れ出ないように、必死の形相で歯を食いしばって。
…涙を流したら、三人ともまたきっと面白がって、さらに行為がエスカレートすることは、目に見えて…いる。
大丈夫、大丈夫…。
僕は自分に言い聞かせるようにして…心の中で、何度も呪文のように、そう言葉を唱え続ける。
大丈夫、いつものことだから…大丈夫。
ほんの少し、あとほんの少しだけ…我慢をすれば、いい。
そう、ほんの少しだけ…僕が我慢をしさえすれば…。
「…おい!モグラデブ!!さっさとその変な能力使って、そこの地面に穴を開けてみろ…って言ってんだよ!」
うずくまったままの僕に向かって、投げ捨てられたかのような…そんな言葉が、頭上から降り注いで…くる。
…。
恐る恐る僕が…怯えた表情のまま、その声のしたほうへゆっくりと顔を上げてみれば。
…そこには、いつものように僕を取り囲むようにして、三人の意地の悪いクラスメイトが、残忍な眼差しで…僕のことを見つめ、見下ろして…いる。
そして…顔を上げた僕のことを、まるでそれを待っていたかのように、その内の一人が
「おい、早くしろよ!いつまで待たせるんだよ!」
そう言って、うずくまっている僕の右腰の辺りを、その左足で…思い切り蹴り飛ばす。
「うっ…」
思わず出てしまったそんな小さな呻き声と共に、僕は地面に横倒しに崩れるようにして倒れ込みながら…倒れ込んだその先、その体勢のまま急いで、言われた通りに…念じるようにして能力を使って、三人のすぐ近くの地面に、丸い穴を…開ける。
…。
三人のすぐ近くに唐突に現れた…直径、深さ共に、1m程度のその穴を見て、三人は愉しそうに…そして下品な笑みを口元に浮かべながら…お互いに目配せをしたかと思うと。
…次の瞬間、三人の内のリーダー格の一人が、倒れ込んでいる僕の太腿をまるで汚物にでも触れるかのように、右足の靴先で軽く突つきながら
「ほら!何やってんだよ!モグラデブは、ツ・チ・ノ・ナ・カ…だろ?」
やはり愉しそうに、僕に向かってそう言い放つ。
…。
僕は力なく、ノソノソとその場で立ち上がると。
倒れ込んだときに、自分の洋服についてきてしまった土砂を払い落とそうと、左手を軽く持ち上げたその瞬間…。
「もたもたしてんじゃねーよ!!!」
左脇腹に感じた圧力のような衝撃と、三人の内のリーダー格の一人が、怒鳴るようにして発したそんな言葉と共に…僕は自分の意思とは無関係に、無理やり横倒しになりながら…自分で開けたその穴の中へ転がるようしては落ち、そこで右半身を思いきり強打…した。
「うっ…」
僕は再び小さくそう呻いては、その痛みから穴の中で…まるで胎児のようにして丸まり、そのまま自身の身体を優しくそっと抱え込んだ。
そしてそれと同時に、今まで我慢していたモノがついに我慢しきれなくなって、両方の瞳の奥から溢れ出てきて…しまう。
三人は穴の周りに集まって、そんな僕のことを見下ろしながら
「こいつ、泣いてるぜ?」
「ヒャハハハハハハ!モグラデブが泣くと笑っちまうな!!」
「おい!モグラデブ!!モグラデブは、ツ・チ・ノ・ナ・カ…だろ?何回も言わせんなよ!!」
口々にそう言って、穴の周囲の地面の土砂を削り取るように、それぞれの足で…穴の中で胎児のように丸まり、涙を流している僕に向かって、それをパラパラと注ぎ込む。
…。
僕は必死に瞳を閉じて…その土砂が瞳の中に、そして口の中に入らないように…きつくきつく唇を一文字に結ぶと。
…早く、この地獄のような時間が終わってくれれば…と、過ぎ去ってくれれば…と、いつものように無力なまま、ただただひたすら、祈り続けて、いた。




