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テーブルの上に置かれた、じいさんがくれた古く汚れた朱色の小さな縁結びのお守りと美沙が半ば強引に雨宮 凛から貰った可愛い図柄の入ったメモ用紙一枚、そして謎の…長く黒い糸のような、物。

この三つの品物を前にして、俺と摸はただただポカ~ンと、それらを見つめ続けて…いた。

美沙はそんな俺と摸のアホ面を気にもせずに


「…鉛筆、持ってる?」


そう言って、俺と摸の顔を交互に見つめる。

鉛筆を持ってなかった俺は、首を左右に小さく振り…。

…隣りにいる、口をモグモグとさせてテリヤキバーガーを頬張っている摸のほうに


“摸、あるか?”


と言うように顔を向けると…。

摸は、美沙と俺のそんな視線を受けて、口の中のテリヤキバーガーをゴクン!…と飲み込んでから


「ありますぅ~!」


嬉しそうにそう言って、テリヤキバーガーを右手に持ったまま…身体をねじるように左手で、制服の右ポケットから、だいぶ芯先が丸くなった短く小汚い鉛筆を取り出すと…それを美沙に差し出した。


…。

摸よ…テリヤキバーガーをどうしても手から離したくないんだな…。

…まさか!?

その食べかけのテリヤキーバーガーをトレーの上に置いた瞬間に、俺か美沙かが奪い取るとでも思ってんのか?

まさか…まさかそんなこと、な…。

俺が摸を見つめながら、そんなバカげたことを一人考えている中…。


「…ちょっと借りるわね」


美沙はそう言ってから、その鉛筆を受け取ると。

それで一体何をするんだろう…と、俺と摸の好奇心に満ちた視線のその先で…雨宮 凛から貰った可愛い図柄の入ったメモ用紙一面に、まるで塗り絵を塗るようにして、その鉛筆を大胆に、走らせた…。


…すると、そこに現れたのは…。

何か白い線のような…いや、文字が浮かんで…くる。

美沙はその浮かんできた白い線のような文字を目で追いながら、一人小さく頷くと。


「うわぁ~!何ですかぁ?それぇ~?」


と、驚いている摸に向かって


「鉛筆ありがと」


そう冷静に言って鉛筆を返してから、俺と摸にそのメモ用紙を見せて


「…覚えてる?おじいさまが凛さんを初めて見たとき、結界を張って座敷牢に閉じ込めていたはずなのに、どうしてそこを抜け出して、リビングルームにいるのか…と凛さんに尋ねたこと…」


美沙のその言葉に、俺と摸が小さく頷くと…美沙は続けて


「あのとき…凛さんがメモ帳を取り出して、ボールペンでその理由わけを書いておじいさまに渡したでしょ?…ボールペンで書いたのなら、きっと下のメモ用紙に、その筆圧で字線だけが残っているかな…と思って。…それで無理に頼み込んで、凛さんからこのメモ用紙を一枚、貰ったのよ」


落ち着き払った声で、そう言うと。


…す、凄ぇ…さすが、さすがですぞ、助さん!…いや違った、美沙さん!


俺が感嘆の思いで、そんな美沙を見つめる中…。

美沙は手にしたそのメモ用紙を見つめながら


「 “一週間くらい前から結界のお札が剥がれていたよ” って書いてあるわ…」


そう言うと、俺と摸の顔を順番に見つめる。


…。

感嘆してばかりは、いられない!

このままではしっかり者で、頭も切れる美沙に、黄門様の座を…いや主人公の座を奪われてしまう…。

俺も主人公らしく、ここは何か気の利いたことを一発ビシッ!と言っておかねば。

…そう、ビシッ!と、だ!!


勝手に…主人公だと思い込んでいる俺が、その座に危機感を抱き、美沙に負けじと懸命に考え、その視線に応えるかのように口から出た言葉は…


「つまり、凛ちゃ…雨宮…は、一週間くらい前から座敷牢から外に出られた…自由の身だった、という訳か…」


…と、いう…数秒前にメモ用紙を見ながら、美沙が読み上げた内容を…ただ単にまとめ上げたものに過ぎず…。

さらにお気づきであろうが…小心者の俺には、摸のように雨宮 凛のことをいきなり、なれなれしく “凛ちゃん” とは呼ぶことさえ出来ず…。

…。

俺がひっそりと落ち込んでいる中…。


…それでも、そんな俺の言葉に美沙は、真剣な表情で小さく頷いてから


「…おじいさまの張った結界の札が剥がれていた、ということは、あの場ですぐに分かったのだけれど…。それが一体いつ頃からだったのか…ということが、まったく分からなかったから…。このメモ用紙のお陰で…少なくとも凛さんは、一週間くらい前から結界の破損した座敷牢から自由に外に抜け出せた…自由の身だった、ということが分かって、それで今、やっと謎が解けたんだけれど…」


そう言うと…。


ああ…。

気の利いたことが何も言えなかった上に、雨宮 凛のことを “凛ちゃん” とも呼べず…色々な意味で、キャパも含めて…俺の頭脳はもう、これが限界だ~!

…それなのに、さ・ら・に、別の謎があるだと~!

これはもう言っとくしかない…。


“ど・ん・だ・け~!”


完全に主導権を美沙に握られ、心の片隅でなぜかイッ◯ーさん化した俺は…。

主人公としての自信が崩れ去る音を勝手に一人…いや二人、心の中のイ◯コーさんと共に…べったりと寄り添うようにして聞きながら…。

それでも…美沙の言う、その解けた “謎” という内容がとても気になり、美沙の次の言葉を待つように、心の中でべったりと寄り添っている◯ッコーさんと共に、美沙のその顔をお気楽に…そして真剣に、見つめ直したので…あった。

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