モクドナルドへ
…どこか寂しげに、でもどこか満足気で…何かを決心したようなじいさんと。
純粋に俺達三人との別れを惜しんで、寂しそうに手を振り続ける雨宮 凛の二人に見送られて…。
俺達三人は、再びあの長い石段を今度は降りきり、雨宮神社を後にし。
…誰からともなく、たまに学校帰りに立ち寄っているハンバーガーショップの “モクドナルド” へ、三人揃って無言で入店を…した。
カウンターでいつものようにメニューを見ながら…。
無表情の俺は、チーズバーガーとウーロン茶(S)を。
浮かない表情の美沙は、オレンジジュース(S)のみで。
相変わらず脳天気な摸は、セットメニューのテリヤキバーガーとフライドポテトの(M)、そしてメロンソーダ(M)を、それぞれ注文し…。
そんな俺達三人に “迅速!丁寧!スマイルは永年無料!” の謳い文句通り、迅速かつ丁寧に恐ろしほどの作り笑いの少しポッチャリとした女の店員さんが
「お待たせ致しました~!ごゆっくりど・う・ぞ~!」
…と、差し出してくれたトレーに乗った注文の品々をそれぞれ手にすると。
俺達三人は、いつもの窓際の席へと静かに…向かった。
…。
…俺と摸が並んで座り、そんな俺達二人と対面するように、正面の席に美沙が一人…そっと腰掛ける。
周囲は夕食時ということもあってか、家族連れから仕事帰りのサラリーマン、OL、俺達三人と同じような制服姿の高校生まで、様々な年代のお客さんが、それぞれに注文した商品を食べながら談笑し、店内は結構な賑わいを見せて、いる。
「いただきますぅ!」
席に着くなり摸は嬉しそうにそう口を開いて、トレーの上に乗っているテリヤキバーガーの包みを手にし、それを開いてさっそく食べ始める。
そんな摸とは対照的に、トレーに乗っているオレンジジュースにはまったく手をつけずに、テリヤキバーガーをおいしそうに頬張る摸と、目の前に置かれたトレーの上からウーロン茶の紙コップを手にした俺の顔を交互に見つめながら…浮かない表情の美沙が静かに口を開く。
「…あたしのせいで…何か、ごめん」
突然の美沙のその言葉に、俺と摸が不思議そうな表情で、美沙の顔を見つめると…。
美沙は俺達二人のその視線に応えるように
「ほら、さっき…あたしがよく考えもせずに余計なことを言っちゃたから… “お二人の力になりたいんです” …なんて。…でも、凛さんのおじいさまの話しを聞けば聞くほど…あたし達三人の能力だけじゃ、どうしようもない…っていうことが分かってきて…」
ここで美沙は一度言葉を区切ると
「…凛さんの胎内に存在する悪鬼を、凛さんの身体の中から引き離せない以上、どのような手段を使っても、結局は…凛さんを傷つけ救うことが出来ないんだって思ったら、自分が言った言葉の安易さが、何だか急に情けなくなってきてしまって…」
そう言うと…小さく俯く。
…。
美沙も、俺と似たようなことを考えてたんだな…。
俺はそう思いながら、手にしたウーロン茶には口をつけずに、そのままそれをトレーの上に戻すと
「…謝ることなんか、ねぇよ。俺も似たようなこと、考えてたしさ…」
ボソボソッとそう言ってから、美沙を見つめ直す。
「そうですよぅ!僕もぉ、同じ能力者である凛ちゃんのことを助けたい!ってぇ思ってましたぁ~。それにぃ…本当に様子だけを見て帰ってぇ、それを依田先生に報告するだけだなんてぇ…何だか、悔しいじゃないですかぁ~」
頬張ったテリヤキバーガーで口をモグモグとさせながら、摸は脳天気にそう言うと。
…右手に食べかけのテリヤキバーガーを手にしたまま、目の前のトレーの上に乗っているフライドポテトの容器の中から同じくらいの長さのポテトを器用に二本、同時に摘み上げると…それを勢い良く口の中に放り込んだ。
美沙は、俺と摸のその言葉に安心したかのように、ホッとした表情をすると
「良かった…二人があたしと同じ気持ちでいてくれて…それなら、凄く話しやすいわ」
そう言うと、自分の目の前に置かれたオレンジジュースの乗っているトレーを、少し窓際のほうにずらしてから…。
制服の上着の内ポケットの中から、じいさんから貰った古く汚れた朱色の小さな縁結びのお守りと雨宮 凛がくれた可愛い図柄の入ったメモ用紙一枚、そして…長く黒い糸のような物を取り出すと、テーブルの上に並べるようにそっと、置いた…。




