第44話
十二年、朝の鐘は同じ刻限に鳴った。
春には雨を含んで石壁をやわらかく伝い、冬には凍った井戸の底へ沈むように響いたが、鐘そのものは少しも老いなかった。老いたのは、それを聞く人の方だった。
アスターテは、三つ目の鐘が鳴り終わるまで窓辺に立っていた。
中庭の薬草畑には、夜の霜がまだ白く残っている。枯れた茎の先で雫が細く光り、朝日が石壁を下りるにつれて、一つずつ土へ落ちていった。
机の上には、マルガレーテから届いた手紙がある。
開いた紙の中央に、リーゼロッテの名があった。
その名を最後に聞いた時、まだ少女と呼ぶにも幼かった。
ローエンハイム邸の庭で、落ち葉を両腕へ抱えきれないほど集めていた。赤い葉も、茶色い葉も、虫に食われた葉も、落ちているものはすべて拾い上げ、アスターテの膝へ山のように置いた。
「春まで預かっていてください」
小さなリーゼロッテはそう言った。
「こんなにたくさん?」
「捨てたら、かわいそうですから」
風が吹くと、半分はすぐ庭へ戻った。リーゼロッテは困った顔をした後、また拾いに走っていった。
あの頃から、落ちているものを見過ごせない子だった。
十二年後の手紙には、その子がアーデルスドルフ家へ嫁ぐことを拒んだと書かれている。
父と兄が職を失うかもしれないことも、家名が傷つくことも、十二年前の女の名が世間へ出るかもしれないことも知った上で。
アスターテは手紙を二つに折った。
廊下の向こうで扉が閉まった。
修道女の軽い足音が遠ざかり、代わって、客舎へ向かう男物の靴が石床を踏んだ。踵の固い音が一つ近づくたび、彼女の指は折った手紙へ深く食い込んだ。
足音は部屋の前を通り過ぎた。
紙に残った皺を、アスターテは長いあいだ直さなかった。




