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第5話

 深紅の衣装を仕立てた店は、王都の西側にあった。


 店内には春の服地が積まれ、淡い色の間に、あの深紅の切れ端がわずかに残っていた。

 アエミリアが指を触れると、布は何事もなかったように柔らかかった。


 仕立屋は注文控えを開いた。


 注文したのはエーリヒだった。


 衣装は最初からリーナのために作られていた。

 記された寸法はアエミリアのものではなく、採寸にはリーナ本人が二度来ている。


「では、わたしのために仕立てた衣装を、後から直したのではないのですね」


「はい。初めからメルフェルト様の寸法で承りました」


「布の代金は、誰が出したと聞いていました」


 仕立屋は困ったように帳面を見た。


「ハルデンブルク家からのご注文とだけ。どの財産から支払われたかまでは、私どもには分かりません」


 ヴァンフリートはそれ以上聞かなかった。


 店を出てから、アエミリアは振り返った。

 窓の中で、深紅の切れ端が春の布に囲まれ、傷口のように小さく見えた。


「リーナは最初から知っていたのでしょうか」


「知らん」


「採寸には来ています」


「自分の衣装だと知ってた証拠にはなる。お前の金だと知ってた証拠にはならない」


「ですが、夜会では――」


「気に入らない女へ、先に罪を着せるな。お前は着せられて困ってるんだろ」


 アエミリアは言葉を失った。


 腹立たしさは消えなかった。

 しかし、腹が立つことと、何を知っていたかとは別である。


 ヴァンフリートは彼女が追いつくのを待たず、通りを曲がった。


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