第40話
王妃宮の側には、その教育を手配した形跡がなかった。
以前話を聞いた侍従は、コンスタンティンの面会を取り次いだことはないと答えた。
エルザに尋ねても、同じ返事だった。二人が後継について命じられた用事は、ラディスラフへ向けられていた。
官房に残る送達の控えを調べると、コンスタンティンに関する報告は、ローベルの手元へ収められていた。王妃宮へ回すようには、指示されていなかった。
「こちらの記録も、お探しになったのですね」
閲覧の係は、アエミリアの書いた照会を見て言った。
「古いものは、納め先が何度か変わっております。どこで所在をお聞きになったか、こちらにもお書きください」
アエミリアは、元老院の書記の名を記した。
係は礼を言い、用紙へ受取りの番号をつけた。
その日のうちに、教える側へ出された通知と、官房へ届いた報告を照らし合わせることができた。
元老院の家々に残っていた紹介状も、発送の記録と合っていた。
ヨストの部屋へ戻り、それぞれの写しを机へ広げると、ヴァンフリートは、ラディスラフへ突きつけられた条件を端へ寄せた。
「断られたら、どうするつもりだった」
アエミリアは、机の上を見た。
王妃が望んだ後継の名は、変わっていない。エスネエーレを庇わぬことを求めたのも、その息子だった。
「ラディスラフ殿下が、エスネエーレ様を見捨てられなかったら、ということですか」
「ああ」
ヨストが、王族の継承順を確かめた紙を置いた。
「ジークムントの次は、ラディスラフだ。そのラディスラフを立てられなければ、コンスタンティンが来る」
「ですから、王族として政務を学ばせておくこと自体は、おかしくないのですね」
「おかしくはない」
ヴァンフリートは答えた。
「おかしなことばかり命じてたら、ローベルも、もう少し早く捕まってる」
彼は、面会を頼んだ書状を手に取った。
「ただ、王太子を殺す相談を引き受けた男が、その前から、弟の次に来る王子へ仕事を覚えさせ、元老院の連中に会わせていた。王妃には知らせずにな」
ヨストは、教育の始まった日と、エルザが覚えていた相談の時期を確かめた。
「弟が条件を受け入れなかった時にも、次を立てられるようにしていた、と考えればつながる」
「ラディスラフが女を捨てれば、母親の望みどおりにする。捨てなければ、母親の知らないところで用意した方を出す」
ヴァンフリートは紙を戻した。
「王妃は、自分の息子が王になるつもりで、長男を殺させた。その仕事を任せた相手は、息子が言うことを聞かなかった時の支度までしていたわけだ」
アエミリアは、机の端にある王妃宮の書状へ目をやった。
ラディスラフの名は、本文の早いところにあった。急いで支持を集めようとした筆の運びが、写した紙にも残っているようだった。
「ローベル卿にも、殿下のお返事までは分からなかった」
「分かってたら、予備はいらん」
彼は答えた。
「母親が息子をどこまで言いなりにできるかも、信用してなかったんだろう」
ヨストは、書状を重ねなかった。
「ただ、教育を命じた紙に、そう書かれているわけではない。この先、実際に誰がコンスタンティンを呼び、どのように後継へ立てたのかを確かめる必要がある」
「ああ。そこを見れば、ただの勉強だったのかどうかも、もう少し分かる」
ラディスラフへ尋ねる書状は、既に出してあった。
ヨストは返事を待つ間に、コンスタンティンを後継として扱い始めた最初の通知と、その前後の官房の引継ぎを閲覧したいと申し入れた。王妃宮から届いた指示があれば、それも確かめたいと添えた。
アエミリアが用紙を届けた時、係はいつものように受取りの番号をつけた。




