第33話
帰り際、ヨストは階段の途中で足を止めた。
踊り場の窓から、庭の道が見えていた。さきほど撒かれた砂の上を、家令が門の方へ歩いている。
「ラディスラフから遠ざけておきたいだけなら、塔に置けば済んだ」
ヨストは言った。
ヴァンフリートも止まった。
「実際、ずっとそうしていた」
「それなのに、王妃は刑事法院へ送るよう求め、極刑を望んだ。後継になる息子にも、助けないと約束させようとした」
「エスネエーレを殺す必要なない」
アエミリアは、一段上に立って二人を見た。
暗殺の理由が分かれば、エスネエーレに着せられたものも解けると思っていた。
だが、ジークムントの死を望んだ理由が明らかになるほど、その後で彼女まで死ななければならなかった理由が、別に残った。
「共謀者に仕立てるだけなら、閉じ込めたままでもよかったはずですね」
彼女は言った。
「死なせなければならないほど、何かが……」
ヴァンフリートは、階上へ目を向けた。
エスネエーレの部屋の扉は、ここからは見えなかった。廊下の奥へ消えた足音も、もう聞こえない。
「生きていれば、困ることがあったのか」
彼は言った。
ヨストが、手にした書類へ目を落とした。
「事件のことを話されるから、というだけでは足りないな。彼女は、王宮で何が決められたか知らなかった」
「ああ」
ヴァンフリートは階段を下り始めた。
玄関へ続く廊下で、家令が戻ってきた。三人を見つけ、馬車の用意ができていると告げた。
ヴァンフリートは、その場を動かなかった。
「一つ、先に聞きたい」
「何でございましょう」
「エスネエーレを塔へ住まわせたのは、誰だ」
家令の目が、階段へ向いた。
「それは、ずっと以前のことでございます」
「知ってる」
ヴァンフリートは言った。
「あの女が、ラディスラフに会うより前の話を聞いてる」




