第20話
法廷の窓は、人が入るたびに曇っていった。
外套に含まれた朝の湿りが、暖炉の熱にほどけている。
高い窓の下では、硝子を伝った水が細く光り、その向こうを過ぎる馬車も、人の姿も、輪郭を失っていた。
傍聴席の長椅子が軋むたび、誰かが身を縮め、空いたはずの隙間へ別の外套の裾が入り込んだ。
ヴァンフリートは、机の上の綴りを少し脇へ寄せた。
アエミリアが、その隣へ最後の一冊を置く。紐を解くと、挟んでおいた細い紙片が、頁の間からわずかに覗いた。
奥の扉が開いた。
先に入ってきたリューベックは、裁定官の席へ軽く頭を下げた。襟はきちんと折られ、外套の前も揃っている。自分の席を示されるまで立って待つ様子には、長く法院へ通ってきた者の、慣れた慎みがあった。
ただ、腰を下ろす時、椅子の背へ添えた手が一度滑った。
シグルーンは、その後から入ってきた。
傍聴席のどこかで、囁き声が急に途切れた。彼女はそちらを見ず、ヴァンフリートの傍まで来ると、小さく会釈して座った。
アエミリアは、筆と白紙を彼女の手の届くところへ置いた。
「お使いください」
「ありがとうございます」
シグルーンは紙を引き寄せた。筆は取らず、まず裁定官の方を向いた。
両名の名が確かめられ、王国代訴官が立った。
清算金六百枚を受領したことについて、リューベックは争っていなかった。依頼人にアイスベルクの関与を説明したことも、自分の名で受領証を発行したことも認めている。
代訴官はそこまで述べてから、綴りの次の頁へ指を置いた。
「問題は、その説明が真実だったかどうかです。アイスベルク女史が共同して受任し、金銭の受領や処分を承知していたのか。それとも、リューベック卿が女史の関与を偽ったのか。今回の清算以前の案件についても、実際の関与と、依頼人に説明された関与とを確かめる必要があります」
裁定官に問われ、シグルーンは共謀を否認した。
リューベックは、隣の代言人と短く言葉を交わしてから答えた。
「女史との協力関係は、今回初めて生じたものではありません。私が依頼人への対応を受け持ち、女史が判断や助言をする。その形で仕事をしてきました」
よく通る声だった。
「今になって関与を否定されても、私一人が行ったことにはなりません」
シグルーンは何も言わなかった。
アエミリアの筆先が、その言葉を紙へ移した。




