第18話
六百枚の行き先についても、確認が進んだ。
家主への支払いは、リューベックの出金の控えと一致した。高い利息で貸していた債権者からは、まとまった返済を受けた日の記録が出た。
最も大きな金は、そちらへ流れていた。
債権者は当初、帳面を開くことを渋ったが、法院への説明と受領の確認を求められると、元金と利息を分けて示した。リューベック側に残る支払額とも合っていた。
紙や事務所の維持に使われた分もあった。さらに、以前の案件で不足したままになっていた支払いが、六百枚を受け取った後になって果たされていた。
アエミリアは、双方に残った同じ支払いを二度数えないようにしながら、ひとつずつ金額を合わせた。
ひとつの帳面だけでは、何もかもは分からなかった。
しかし、金を受け取った者たちの記録を並べると、受領した六百枚は、リューベック自身の債務と事務所と、それまでに空けた穴へ収まっていった。
シグルーンへ分けられた金は、そこにはなかった。
「合いました」
アエミリアが言った時には、机の端まで書面が広がっていた。
ヴァンフリートは、金額だけでなく、受領日をもう一度辿った。
それから、リューベックの供述書を脇へ置いた。
「この支払い先は、法院でも確認できるようにしておく。写しだけで済ませるところと、本人に話してもらうところを分けよう」
アエミリアは頷いた。
金の流れを確認した書面の隣に、過去案件の記録を並べ直した。
初めには、同じ方法を使うという紹介があった。次には、同じ事件を扱ったという説明があり、やがて本人が確認したことになった。それが監修へ変わり、最後の六百枚では、共同受任と代理受領を支える名前になっていた。
アエミリアは、最も古い受任の日付から、最後の受領証まで指を滑らせた。
「少しずつ、シグルーン様との関係が深くなっています」
ヴァンフリートは、その横へ協業を断った返書の写しを置いた。
「近づいてるのは、こいつの説明だけだ」
さらに、同じ頃の研究帳を開いた。
依頼人へは本人が確認したと伝えながら、私的な帳面には、その本人の判断を確かめられないと書いていた。
「ここを聞く」
ヴァンフリートは言った。
「一緒に仕事をしてたなら、なぜ外から推測してたのか。直接教わったなら、なぜ本人に聞けないと書いたのか」
アエミリアは供述書を見た。
「批判していたことより、こちらの食い違いですね」
「ああ。仲が悪くても、金のために組む奴はいる。悪口だけで無罪になるなら、共犯者同士で罵り合えば牢が空く」
彼は、印刷所の原稿と研究帳を一緒に閉じなかった。
誰かに読ませるために書いた言葉と、自分が分からないことを記した言葉を、それぞれ別に残した。




