第13話
夕方、二年前の事件について頼んでいた資料を受け取りに、法院へ戻った。
閲覧室では、書記が窓際の灯を点していた。日中は明るかった長机も、端の方から灰色に沈み始めていた。運ばれてきた綴りを開くと、乾いた紙の匂いが立った。
エリーゼの事件で、シグルーンとリューベックが対立する側を務めていたことは、記録からも確認できた。
アエミリアは該当する箇所を写した。あの依頼人が協働の経験として受け取った言葉には、確かに省かれた半分があった。
当時の報道も確かめた。
裁定の結果を短く伝えただけの記事が多かったが、その中に、法曹向けの論評紙が挟まれていた。
アエミリアは、ある見出しで手を止めた。
「先生」
ヴァンフリートが顔を上げた。
アイスベルク流の実務は、どこまで有効か。
大きくはない活字だった。事件の早期解決を評価しながらも、その方法を他の紛争へ広く当てはめることには慎重であるべきだと述べていた。
書き手は、エリーゼの事件をよく調べていた。
最初の和解案と、最終的に残った条件とを比較し、当事者への説明の仕方にまで触れている。ほかの記事では数行で済まされている経過が、そこでは細かく辿られていた。
「随分、詳しく書かれています」
アエミリアが言った。
ヴァンフリートは発行日を確かめた。
リューベックの仕事が減り、その後、アイスベルクの名を口にして依頼を得るようになる頃のものだった。
署名の代わりに、一代言人、とだけあった。
「誰が書いたのでしょう」
「調べる」
ヴァンフリートはもう一度、冒頭から読んだ。
アエミリアは隣で待っていた。書記が別の机の灯を点すと、紙面へ落ちていた影が少し薄くなった。
「この方も、二年前のお二人の仕事を知っているのですね」
「少なくとも、知ってるつもりで書いてる。何を見て、ここまで言ってるのか聞いてみよう」
読み終えると、ヴァンフリートは紙を裏返した。
下の隅に、印刷所の名と所在地が残っていた。
アエミリアが手帳を開く。ヴァンフリートは、そこの活字が灯に向くよう、論評紙の角度を変えた。




