第11話
それより後の仕事になると、確認したという説明は、手紙にも残り始めていた。
依頼人が念を押す前に、アイスベルク女史確認済みと書かれているものがあった。別の案件では、監修を受けたと説明されていた。
仕事そのものが、急に粗雑になったわけではなかった。
相手方と交わされた書面は整い、約束された処理も終わっていた。聞き取りに応じた者のなかには、今度の事件については驚いているが、自分の依頼には不満がないと話す人もいた。
ただ、支払った費用を尋ねると、以前の案件にはなかったものが出てきた。
「こちらですか」
仕立店の女主人が、請求書を作業台へ広げた。
店の奥では、若い縫い子が裁った布を重ねていた。
窓辺の裁ち鋏が朝からの日を受け、開いた刃の片方だけが光っている。
客のために掛けられた外套の裾が、戸を開け閉めするたび、二人の肩近くで揺れた。
女主人が依頼したのは、亡夫の親族との清算だった。商いに使うものを残して店を続けられるよう、リューベックが話をまとめたという。
請求書の終わりに、特別確認費として三枚が加えられていた。
「誰が、何を確認する費用だと聞いた」
「アイスベルク先生が、最後に内容をご覧になるためだと」
「リューベックへ払ったんだな」
「はい。お渡しいただくものと思っていました」
女主人は、縫い子の方を一度見た。
「あの方のお名前があるなら、そのくらいは必要なのだろうと。それに、店を閉めずに済んだのです。私は、その仕事には満足しております」
「仕事に満足したことは分かった。今聞いてるのは、この三枚だ」
ヴァンフリートは請求書の一行を指した。
「風邪が治ったからって、来もしなかった医者へ往診代を払うか」
女主人は返事をせず、請求書を手前へ引いた。
「来なかった、のですか」
「アイスベルクは確認を否定してる。リューベックから受け取った記録も見つかってない。向こうが渡したと言うなら、その裏を取る」
女主人は暫く、三枚と書かれたところを見ていた。
奥で布を畳んでいた縫い子が、手を止めないまま顔だけを上げた。女主人はそれに気づくと、作業を続けるよう、小さく頷いた。
「私が文句を言わなかったから、次にも同じことをしたのでしょうか」
「その時に知らなかったことまで、お前の落ち度にするな」
ヴァンフリートの指が、請求書から離れた。
「お前が払った理由を聞いてる。払わせた奴の代わりに謝れとは言ってない」
女主人は紙を持ち上げた。
「写しをお取りください」
そう言ってから、少し考えた。
「必要なら、原本もお預けします」
アエミリアは、まずその場で文面と日付を写した。依頼の費用とは別に加えられた三枚について、女主人がどう説明され、誰へ支払ったかも記した。
帰り際、女主人は戸口まで送ってきた。
外套の仕上がりを確かめる客が入ってくると、彼女は普段の声で迎えた。アエミリアが振り返った時には、もう客の肩へ布を当て、袖の長さを見ていた。




