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第15話

 ルイトポルトは証言席へ進むと、負傷していない方の手を、その縁へ置いた。


 白い包帯が、胸の前で目立っていた。ヴァンフリートはそれを見ず、婚約解消の通知を彼の前へ置いた。


「調査を命じたのは、お前だな」


「そうだ」


「家主や近隣の話をまとめさせ、医者を呼んだ。妹と一緒に聞いた。その後で、この通知が出た」


「それがどうした」


「順番を確かめてる。お前の紙は、そこを省くのが得意らしいからな」


 ルイトポルトの目が細くなった。


「医師の見解がすべてではない」


「母親が高熱で寝ていたのは見解か。医者が同行したのも、家賃を一度払ったのも、誰かの感想か」


「それらが事実でも、二人の関係まで否定されるわけではない」


「なら、その関係を示すものは、ほかに何を見つけた」


 ルイトポルトは答えなかった。


「医者に会った後だ。逢引きの目撃、恋文、病気より前から続いていた送金。何でもいい。一つ挙げろ」


「夜に女の家へ通ったことは、本人も認めている」


「調べる前に知ってた話だ。調べた結果を聞いてる」


 彼の左手が、証言席の縁を強く掴んだ。


「新しく見つけたものはない。だからといって、不貞がなかったと決まるわけではない」


「それで、あったことにして金を請求したのか」


 法廷が静まった。


 ヴァンフリートは、通知の一節へ指を置いた。


「ここには疑いとは書いてない。婚約中に不貞を働いた、だから払えと書いてある。お前は、この言葉にする前に、反対の事情を聞いていた」


「母親が病人だったというだけだ」


「その話をシグルーンへ渡さなかったのは、なぜだ」


「必要な資料は渡した」


「お前に必要な資料だろ」


「異議があります」


 シグルーンが言った。


「意図を決めつけた質問です」


 裁定官に言い換えを求められ、ヴァンフリートは通知から手を離した。


「何を基準に、医者の同行を省いた」


「人が一緒にいたからといって、愛人ではない証拠にはならない」


「夜の訪問が、回復すると終わったことは?」


「見られないようにした可能性がある」


「以前から通っていたところを見た者がいないことは?」


「人目を避けることくらいできる」


 ヴァンフリートは、彼の顔をしばらく見ていた。


「見えたら不貞。見えなければ隠した不貞か。お前の調査は、始める前から終わってるな」


「あの男が信用できないことは、誰でも知っている」


「だから本人以外に聞いたんだろ。その答えまで捨てて、誰なら信用するんだ」


 ルイトポルトは裁定官へ顔を向けたが、助けは来なかった。


 ヴァンフリートは続けた。


「書記がまとめた紙は、渡す前に読んだか」


「読んだ」


「病気も、往診も、聞いていた事情が落ちていた」


「そうだ」


「直させたか」


「直していない」


 シグルーンは、その返事を書き留めなかった。


 筆を置き、ルイトポルトを見ていた。


「調査人の勘違いでも、書記の聞き漏らしでもないな」


 ヴァンフリートが言った。


「お前自身が聞いて、お前自身が読んで、そのまま渡した」


 ルイトポルトは口を結んだ。

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