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第13話

 ヨハンナは、重ねていた手を膝の上で握り直した。


 シグルーンの問いに答える代わりに、兄の方へわずかに顔を向けた。

 ルイトポルトは椅子から身を起こし、まだ証言席にいる医師を見た。


「話は聞いた。だが、病気だったからといって、二人に何の関係もなかったことにはなるまい」


 その声が高い天井へ届き、薄く返ってきた。


 シグルーンは彼を見上げたまま、すぐには口を開かなかった。

 机の上には、彼女が確かめてきた三枚の証言書が並んでいた。

 どの紙にも、夜の訪問と金銭の支払いは記されている。


「医師への質問が、まだ終わっていません」


 彼女はそう言って、証言席へ向き直った。


「お二人から、どのようなことを聞かれましたか」


 医師は診療帳の縁に置いていた手を離した。


「ヨハンナ様からは、最初の夜、ヴェンツェル様がいつまでいらしたのかと。朝までだと答えますと、患者と二人きりだったのかと尋ねられました」


「それには、何と」


「私がいましたし、従僕も出入りしていました。ヴェンツェル様は、大半の時間を戸口に置いた椅子で過ごされました。そう答えました」


 ヨハンナの目が、机の端へ落ちた。


「その後の訪問については?」


「往診に同行されたと申し上げました。母親が起きられるようになると、薬は従僕が取りに来るようになったことも」


「お兄様からは」


「以前から親しかったように見えたかと聞かれました。患者の名も御存じではなかったと、お話ししています」


 シグルーンは証言書を一枚持ち上げ、それから、何も書かれていない裏を見た。


 ヴァンフリートが立った。


「お前はさっき、見ていないことまでは分からないと言ったな」


「はい」


「それは、不貞があったという意味か」


「違います」


「ペグニッツ家でも、あったとは言ってないな」


「申していません。私が見たのは、病人を助けるために来た人です」


 館へ呼ばれた際の書面が、書記官へ渡された。

 診療帳に残る日付と照らし合わせられ、裁定官がルイトポルトへ自家の印かと確かめると、彼は短く頷いた。


 医師は何も付け足さなかった。


 退廷を許されると、帳面を閉じ、その表紙を両手で包むようにして証言席を離れた。


 ヴェンツェルは、医師が扉の向こうへ消えるまで見送っていた。


「知っていたのか」


 声が小さかった。


「ああ」


「それで、あの二人を――」


 彼は先を言わなかった。膝の上の帽子へ目を落とし、潰れた縁を親指で押した。

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