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第11話

 開廷の朝、ヴェンツェルは言われたより早く法院へ来ていた。


 入口で預けられた剣を一本ずつ眺め、ルイトポルトの剣があることを確かめると、ようやく上衣の前を緩めた。


「ずいぶん立派な剣だな」


 ヴァンフリートが言った。


「持ち主よりは役に立つ。ここへ置いてあるだけで、私を安心させる」


 法廷の高い窓には、淡い朝日が差していた。

 人々が腰を下ろすたび、長椅子が乾いた音を立て、その音の間を、書記官の紙をめくる音が細く通った。


 ヨハンナはシグルーンの隣に座っていた。

 暗い青の服の襟元を白く閉じ、こちらへ目を向けても、ヴェンツェルと視線を合わせようとはしなかった。


 その後ろで、ルイトポルトが包帯の手を膝へ置いていた。


 裁定官が入ると、人々は立ち上がった。


 最初に確かめられた婚約解消の意思について、両者の答えに隔たりはなかった。


「わたくしは、婚姻を望みません」


 ヨハンナが言った。


「私も異存はない。極めて賢明な――」


「意思だけで結構です」


 裁定官が止めると、ヴェンツェルはすぐに座った。


「今ので帰れれば、いい法院なんだが」


「お前が帰ると、残った連中でお前の金の話をするぞ」


「最後まで聞こう」


 シグルーンが立ち上がった。


 彼女は通知と三枚の証言書を提出し、ヴェンツェルが婚約中に他の女性と関係を持ち、その女性と子供を扶養したことを、破談の理由として述べた。


 声には怒りがなかった。夜の訪問と金銭の支援が、一つずつ、静かな法廷へ置かれていった。


「相手方は、病人を救援したのだと説明しています。しかし支援は医療費だけにとどまらず、家賃や食料、その後の生活に及び、やがて少年はヴェンツェル様の屋敷で暮らすようになりました」


 彼女は顔を上げた。


「これらの事実と、その継続について、まず御本人へ伺います」


 ヴェンツェルは証言席へ進んだ。


「女性の住居を、夜間に訪ねたことは認めますか」


「認める」


「一度ではありませんね」


「三度だ」


「最初の夜は、朝までそこにいた」


「いた」


「医療費のほかに、滞納していた家賃と食料の費用を負担した」


「払った」


「その息子を、自分の屋敷へ住まわせた」


「小姓として雇っただけだ」


「現在も、母親の薬代を負担することがある」


「多少はな」


 シグルーンは紙へ目を落とした。


 ヴェンツェルが何を認めても、彼女は驚かなかった。

 答えの置かれる場所が、初めから紙の上に空けてあるようだった。


「ヨハンナ様が他人から聞く前に、これらのことを御自身から説明しましたか」


「していない」


「なぜですか」


「婚約者へ送る手紙に、薬代と家賃の話ばかり書いたら、読んだ方が気の毒だろう」


「説明を求められた後も、十分な事情は書かれていません」


 シグルーンは彼の返書を示した。


「関係はない。医師に確かめれば分かる。そのように書かれています」


「医者の名も書いた。門の場所まで書けば親切だったか」


「婚約者御本人から聞きたいと考えるのは、過大な要求でしょうか」


「私から聞いて、信用したのだろうか?」


「質問しているのは私です」


 シグルーンの声は変わらなかった。


 ヴェンツェルは一度口を閉じた。


「では答える。私には、関係がないとしか言えん。それを疑うなら、私以外に聞くのが早いと思った」


「結構です」


 シグルーンが席へ戻ると、ヴェンツェルはヴァンフリートを見た。


「俺からは二つだ」


 ヴァンフリートが立った。


「三度の訪問に、医者の来なかった夜はあるか」


「ない」


「母親が回復した後も、同じように夜に通ったか」


「通っていない」


「以上だ」


 ヴェンツェルは、もう少し助けてもらえると思っていた顔をした。


 席へ戻ると、すぐに身を寄せてきた。


「短すぎないか」


「お前の話を長く聞かせるのが、どっちに有利か考えてる」


「私だろう」


「だから短くした」

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