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初対話、カムラ、千姫

第七一話です

 ああも話す口すら持たないと突き放したカムラであったが、どうも頭に千姫なる女武者が残っていた。オーダの言う通り、彼はどちらにせよ千姫との対話が必要なのだ。本心では煮えくり返った怒りがあったとしてもである。部屋を出て、カムラは尋問室に向かった。

そこには未だに椅子に縛られた千姫がいた。


『カムラ殿、昨日は申し訳ない』


開口一番、千姫は謝罪した。カムラはそれに筆舌に尽くしがたい不快感を覚えた。昨日まで敵対していた人間が何故に謝るのか。事情は知ったとはいえやはり納得はし難いのである。


『なんで謝る』

『当然、貴方に乱心の由、斬りかかったのは仔細あって仰天していた』

『…だから何だ。何故謝る?お前は気づけないんだろうが、その謝意だって元の意思じゃない。偽物の意思に真なる謝意はありえない。元の千姫がいない以上以降永続的にありえないだろう』


カムラはそういった。彼女の顔を見ただけで当初の心構えは消え失せた。謝罪がそれ強まらせたに違いない、敵からの謝罪は彼が最も嫌うところであったかもしれない。


『八つ当たりと思ってくれて構わない。…故郷は覚えているか』

『心当たりが露も思い出せず…、最初の記憶は鬼のような男にて…』


顔を下にする千姫。カムラはその態度に益々不快感を募らせた。


『俺に恩はあるか』

『当然と心得まする』

『嘯くな、記憶が正しければ俺は殺さないでやったまで。最後まで悪態をついたのは紛れもなくテメェだ。今更謝罪されたところで、何にもならん。…ここに来たのは俺をどこで知ったかだ』


千姫は顔を上げた。


『ウリヤノフ殿が特定の21名を確保して売り渡すつもりだったと』

『21名?』

『ですが、このみぎり、其の人は我々に捕らえられる前にご自害なされ、書を交わしていた故に代理とし…』


カムラは千姫の口を咄嗟に抑えた。誰もいない事を確認する。


『言うな。もしオーダ、ヤン、ガブリエル、その他が来てもウリヤノフの私怨であったと言え、いいな。口を割るな。今のは絶対だ。破ったら俺は死なねばならんし、貴様も、仲間も』


カムラの顔は焦りに満ちていた。短剣を彼女の目に突きつける。その切羽詰まった様相に千姫は只管に縦に頷いた。カムラは短剣を収めるとドアの鍵を内側から閉めた。


***


 カムラが部屋から出た後、オーダが入れ替わりで出てきた。カムラは額当てを持っていた。


「これをもらった」

「それを?」

「あぁ。よくわからん。こうか?」


と、カムラは装備して見せる。その姿はなかなかに様になっていた。その花の柄さえ無ければであるが。


「ふふっ、似合ってますよ?」

「本当かぁ?」


カムラはそう返すとそのまま去っていった。オーダはカムラが千姫と話し合えたのだと安心できた。それでこそ話が聞き出せるというものである。


「こんばんは」

「こんばんわ」

「あれ、ブリトン語話せるんですね、それならヒサジロウさんを呼ぶまでもないかもしれません」


オーダは向かいに座ってそれぞれを聞いていく。ウリヤノフの仲間、その外見、本拠地、装備を聞き出した。だが腑に落ちないのはカムラを狙った理由だった。21名まではわかったが、千姫にも知らない事が多すぎたのだ。最終的には口から聞き出す他ない為にどうしようもなかった。理由は当然もう一つあったが、断定しにくいものでもあった。それ故に最終的にはウリヤノフから聞くべきとなった。だがオーダはカムラから真実を聞くのはどうしても憚られた。もっと、深く、広い溝が出来る確信が確証も無しにあったのだ。この際はカムラの真実は恐らくは重要ではないのだ。カムラは狙われ、これを払うという事が最も大事だとオーダは自分に言い聞かせた。


「オーダ~?」


その部屋にラリアが入ってきた。


「どう?」

「あらかた進みました。ただ核心は彼女も分からない様です」

「そっか。でもやるべきことは?」

「カムラを守る事ですね」

「ならそれでいいじゃない。わかりやすくてバッチリ!」


そう結論付けたラリアにオーダはどうしようもない憧れを覚えた。そうは考えられない自分とは彼女は違う。それがなんと良い事か。無論それは時として失礼に当たるであろうとは容易に想像が出来た。


「さて、ここからですが」

「あ、そうそうそれでね。一旦やっぱりサウスアスチュートに帰らない?」

「は、はい?」

「開けておくのはダメかなって。サウスアスチュートで終わらせるのもそれはそれで仕方ないし」

「なら、イニシュラに帰るという事ですね?」

「そう!お家でゆっくりしようよ!」

「仮拠点ですよ?忘れちゃ駄目です」


最初に立ち戻ってみれば、そもそもバフォメトを狩って終わらせる旅だった。それ故にこれは蛇足なのは全くの事実であった。ならばそれに従ってここは拠点に帰り。改めて今後の活動を考えればよいではないか、と。それも決して悪くはない事であった。オーダはこれを了承し、帰路につく事を決めた。

読んで頂きありがとうございます!

カムラは全然態度が変わらず、相当嫌なんでしょうねぇ

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