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手がかり

第七〇話です

 オーダが屋敷で調査をしている時に、四人の部屋に封筒が届けられた。ラリアがこれを受け取り確認した。宛名はアイヴァースギルドのサウスアスチュート支部。


「書かれたのは…先週だぁ!」

「何?」


蝋をナイフで切り取り、中の手紙を取り出す。内容は以下の通りであった。


〈第五級冒険者及び第十等魔術士ラリア=ブラウン様

 拝啓、ラリア様。現在ご多忙の由、ギルド一同認識しておりますところ火急の用事速やかにお伝えしたく緊急の手紙とさせてていただくところ、ご理解の程よろしくお願い致します。また本紙は必ずラリア様と同行されるヤスヒデ=カムラ準冒険者様、オーダ=フォン=マイヤー第三級冒険者様共々お目通しいただきたく存じます。

 先月に発生した一件に付きまして、不明の団体様より幾度かの連絡がありました。カムラ様の現在の位置を幾度となくお聞きになられ、これを拒否いたしましたが、万が一別ギルドの方であった場合は本部の判断によってはカムラ様には速やかに帰国頂き、当人らとの面会を行って頂く可能性があります。重ねて、ご理解の程よろしくお願い致します。

敬具

1782年8月2日 ギルド支部長ジョシュア=オーキンレック〉


三人は黙ってしまった。


「行かんぞ俺は」


カムラは言い、トルンガも同調した。


「それがいい。間違いなくウリヤノフの罠だ」

「そうかなぁ?完全支配魔法はあの建物内では使えないし、冒険者が沢山いるから何かあろうなら直ぐに攻撃されるよ?」

「だとしてもそれは罠じゃないって証拠にはならん。向こうにだって少ないながらインキュバスやサキュバスの冒険者はいるんだ」


もし、他ギルドとの戦闘ともなればそれは国家間戦争の火蓋に直結しかねない。ダウリーダ半島の利権は未だにアイヴァースは狙っているのである。


「戦争は不味いよ、私たちそんなにお金ないもん!」

「俺は嬉しいけどなぁ」


トルンガは呑気に言う。鍛冶師は戦争の時は儲かるもの、冒険者や傭兵の道具は大抵はオーダーメイド、つまりは受注が増えるのである。トルンガは今までに二度戦争を経験したが普段はこないサピエンスやエルフもそういう時に限っては店に来る。起こるだけ利になるイベントとも言うべきものであった。


「先ずはオーダの報告を待つ」


***


 オーダは手元の手帳にわかった事を書き出していった。千姫は先ずメイワ四年の生まれである事、生まれた国の記憶は残っていなかったが、久治郎は訛りから東の生まれと推測した。更にその体つきから最低幼少期からなんらかの武術を受けている事、名前からハンの娘の可能性までが考えられた。またオーダは彼女の記憶から対象の人物画を描いた。年齢は20代、男性、インキュバス、またやや茶髪である事である。


「これが事実なのですか?」

「これさえ偽の可能性もありますが、人の頭は変わっても肉体は覚えているもの。東洋人や東の出自である事は間違いないでしょう」

「では、このインキュバスに懸賞を賭けますか」

「それは私が決める事では」

「騎士爵を持つ貴方は立派な貴族ですぞ」

「いえ…まぁそうですね」


オーダはそれを認めざるを得ないが、だがそれでもそれは自身に折り合いがつかなかった。


「まぁ、兎も角このインキュバスの特定を行わなくてはなりませんが」

「ただこの特徴は些か薄いと言いたくなりますが」

「そう、ですね。否定できません。もしかしたらわざとこう記憶させたのかも」

「益々わからなくなりますが」

「…完全支配魔法の使用の是非を確認してみます。もしこれに反応があるならこれさえも偽と確定できる」

「わかりました」


魔力の強弱をオーダは確認していく。その強さがもし狂っているなら間違いなく改竄後。意識を集中させ、魔力を見る。千姫の脳のビジョンがオーダにも映るが、その魔力強度は。無かった。自然に記憶されたものだ。


「わかりましたか」

「本物です」

「おお!」

「ではこれでお願いします。私は一度休みます」

「では閣下にこの私から」


その時であった、千姫が再び目覚めたのである。


『こ、ここは…』

「おはようございます」


東洋の言葉を話す彼女はどうも千姫の記憶が一部戻った様であった。


『私は…いや、どうも記憶が混乱している』


千姫は手を抑えようとするが椅子と固定具で固定され動く事は出来ない。

その時であった。カムラがこの部屋に入ってきたのだ。


「…カムラ」

「…っ、まぁいい。オーダ、疲れてるだろうが火急の知らせだ」


その姿を見た千姫はカムラに思わず声をかけた。


『カムラ殿、先ほどは…』


だがカムラはそれを遮った。


「黙れ。オーダに用事があるんだ」

「カムラ、彼女は…」

「ラリアから聞いた。少しは慣れたと思っていたがやはり無理だ。んで、遥かにこっちの方が大事だ」

「…わかりました」

「あのな、サウスアスチュートの方から手紙が来た」

「…なんと。して、その内容は?」

「俺を呼び出してる。んで、推測だが、先週からあいつ等は俺を探していたかも知れん。その女から情報を聞き出してほしい」

「行くのですか?」

「流石に」

「当然ですね、賛成です。ですが一度休ませてほしいです」

「わかった。返事は?」


ヤンが名乗り出る。


「閣下にお話しは通しましょう。ご理解頂けるやもしれませぬ」

「ありがとうございます」


カムラはヤンに礼を言うと部屋から出た。


「オーダ、あの女に何を言った?」

「言ったというより、カムラを好意的に見る様に調整しました、出ないと話さないので」

「…いや、俺以外にしてくれよ…」

「貴方への印象が強かったものですから…」


オーダが申し訳なさそうにするのを見て、カムラも何も言えなくなってしまった。


「し、仕方ない、か」

「えぇ、ですから、次の時はカムラからも幾つか聞いてくださいよ?」


カムラは黙って頷いた。それを見たオーダは自身のベッドを目指して足早に進みだす。


「機嫌直してくださいねーーー!!」


何故分かった、とカムラは思ってしまった。分かり易いかは本人は気づき得ないのである。

読んで頂きありがとうございます!

完全支配魔法がかなり凶悪とわかったところで元の人格は戻りませんからね、最早真実かは推測でしか成り立ちません…オーダの性格がもっと悪かったら酷い事になっていたに違いありません。あ、語り手まで汚染される事はありませんからね、今んとこメンバー全員は大丈夫です。ラリアが抑えられない限りは、そしてオーダが抑えられない限りは大丈夫ですしね。

読んで頂いた方、是非評価、ブックマーク、感想のほどしていただけると励みになりますので、良かったらしていただけると嬉しいです!でも読んで頂いただけでも嬉しいので、また見かけたら読んでいってください!

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