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完全支配魔法

第六九話です

 カムラは女武者を捉えると、そのまま屋敷に連れて行った。ベリアシュは歓喜したがそれよりも、とカムラはその武者から情報を得ようと迫った。が、しかし。わからないの一点張りであった。当然そんな筈はない。わからない等と、ありえないのである。その上に東洋人ではない、や、ウリヤノフに命を助けられた等、支離滅裂であった。ウリヤノフが東洋に行った経験は少なくとも公式記録にはない。


「二択かな」

「というと?」

「嘘か、実はウリヤノフはいい奴、か」

「どちらもあり得ますが…」


オーダは少し言葉が途切れた。


「何かあるのか?」

「魅了魔法による記憶改竄の際、不完全だと記憶の整合性が狂うんです、まぁ私もやった事がありますので…」

「人に?」

「ペットにです!」


オーダは咳払いをして落ち着きを取り戻すと、再び説明を始めた。


「つまり、完全支配魔法の使用であれば説明がつきます」

「その場合は真実は聞き出せないんじゃないか?」

「元の人格が残っているかわかりませんが、無い場合は記憶は戻らないでしょう。私で認知の強制は止めてみせますが人の人格は記憶によって大体は構成されます。自身の信じた正義を間違っていたと断じるのは難しいでしょう」


カムラがふと険しい顔になった。それはぶつけようのない怒りを見つけてしまった様な表情であった。


「か、カムラ?顔が怖いよ?」


だがカムラはラリアの言葉を意に介さない。


「他も呼ぶからそいつらと話し合ってくれ。俺は涼んでくる」


ポラールは元より涼しい場所。この時間の外はやや暖かくなってきた、部屋の方が涼しい筈である。だがカムラは部屋を出てしまった。

カムラが部屋を出た後、ヤンが合流し、詰問を続けたが、やはり意味がなかった。


「私が彼女にもう一度完全支配魔法をかけます。それで意識に残ると考えられる記憶をたぐってみます。

ヤンさんと久治郎さん、それからガブリエルさんはここに残って、ラリアは部屋から出るなり、残るなりお好きになさってよろしいですよ」

「それじゃ部屋から出るよ。私カムラ追いかける」

「わかりました」


***


 カムラに追いついたラリアであったが、そのカムラは部屋のソファに座って、顔を下にしていた。手を組み、貧乏ゆすりも止まらない。


「どうしたのカムラ」

「どうした?どうしたって何だ、何かあるか」


カムラは明らか気が立っている。普段であればほっておくが殊今回はラリアは気になってしょうがない。


「カムラはあの子どうするべき?」


これにカムラは一瞬の逡巡も無かった。


「殺すべきだっ!自身の生まれ故郷を忘れ、親への恩を忘れ、支離滅裂に、人を殺した!許し難い!!」


カムラの怒りは凄まじいものがあった。


「理由等関係あるか!騙された等知った事!許される由にはならない!改心させるってぇのも無しだ!もしこれで味方となるならそいつは元から芯のない愚か者だっ!!!」


カムラは机を叩くと思わず立ち上がっていた。だが、我に返ったか、その気迫を胸に押し込んだ。


「…すまなかった」

「いや、いいよ。気持ちが聞けたから」

「そうか」

「でも、カムラは殺す気じゃないでしょ?」

「…それも確かだ」


カムラは再度椅子に座る。ラリアはその側に寄り、カムラを隅に追い込んだ。


「先ずは待とう?オーダの返事を、さ。それで見てみよ?取り敢えず」

「…その間に俺も戻ればいいのだろ?」

「うん。そうしよ?」


カムラは胸を叩いた。咳をして、気持ちを落ち着かせている様だった。


「俺は、あの女をきっと許せないだろう。だが、まぁ、対話くらいなら、やってみるつもりだ」

「よろしい」


ラリアはカムラの頭をワシワシと撫でた。


***


 オーダは女武者の記憶を一つずつ紐解いて言ったが、肝心の名前は分からなかった。だが、ウリヤノフが奴隷にされたこの女武者を助け、更にはインキュバスらしき男がこの女の目をみるだけで怪我を治した、という事がわかった。読み替えれば、亡命してきた女性をウリヤノフが拉致。唯一戦力になり得たこの女性は奴隷にせず、そのまま仲間の完全支配魔法で別人にした、とも読める。また名前は千姫と言うらしかった。ただ無論どこまでが事実でどこまでが嘘かは分からない。彼等にとって都合の悪そうな事実を並べればそうなるという程度にしかない。


「わた…私は…」

「私は?千姫、合ってますね?」

「確かに…」


オーダは完全支配魔法でカムラが千姫洗脳から救ったというカバーストーリーを捏ち上げ、記憶を書き換えた。このインキュバスがどんな男か定かではないが、さして上手には使えていない。オーダはある程度話を考え、これを埋め込む事にした。


「貴女を洗脳したのは誰ですか?」

「わからぬ…思い出せぬ…」


だが千姫は頭を抑え、意識を失ってしまった。幾度とない上書きは本人にも良くない。最早元の人格はオーダは諦めていたのだ。だが、こうも相手が弱れば考えもの、また頭というものは欠落した記憶を別で埋めようとするもので、このままではカムラへの認識が歪みかねないとも感じていた。


(弱りましたね…そのインキュバスの位置が最も知りたいところを…。それから、東洋に行った記録が無いだけで、もしかしたらウリヤノフは東洋に行ったことがあるやもしれません。これは…)

間に合いましたでござ候!

やったー間に合ったー!いやー昨日からサボりにサボったツケはなんとか返した、筈ですよ!良かったよかった!

読んで頂いた方、是非評価、ブックマーク、感想のほどしていただけると励みになりますので、良かったらしていただけると嬉しいです!でも読んで頂いただけでも嬉しいので、また見かけたら読んでいってください!

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