↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/73

帰路

第七二話です

千姫をサウスアスチュートに連れて行くか否かという話題はラリアが持ち出した話題であった。カムラは何も言う気も当初なかったが自分の嫌悪に関わらず、気まずい事、問題点があった。


「なぁ、この際パーティーに男一人体制が戻るのは良しとして、もしかしてイニシュラの部屋に四人も詰め込む気か?」

「ダメ?」

「管理者に問い合わせないと」

「拠点さえ買えたらなんだけど」

「ギリギリ120アーレスに足りないんじゃないか?」


だがオーダがここは補足した。


「いえ、今回の滞在とエーテルシュタットまでの移動、加えてロンディニアまではベリアシュ閣下が出費してくださるとの由です」

「本当か。ありがたいったりゃないな。何かこう、礼を」

「それに関しては私からも言ったのですが、寧ろポラール防衛をしてくれた返礼だそうですよ?」

「迷惑至極とか言ってたのに、そうか、これが返礼か」


カムラは理由もなしに感慨深くなった。


「だがバフォメトの革不足は結局解決できなかった」


トルンガが付け加える。元々の目的が果たせなかったのは些か悔いが残った。


「そもそもカムラがあそこで喧嘩を買わなければ…」


ラリアが愚痴を溢す。カムラは一瞬眉を顰めたが直ぐに引っ込めた。


「そうだな、ごもっともだ」


カムラはそれらしく謝って見せた。


「千姫を連れて行った後は?」

「インキュバス捜索を手伝わせつつ、サウスアスチュートにいるであろうウリヤノフの仲間を見つけさせるべきだろうな。俺達の安全がかかってるだろう?」


ラリアもこれに頷いた。


「んじゃ、支度を整えて明日出よう」



***


 四人は千姫の身柄をアイヴァース政府に引き渡し、ギルドに引き渡すという条件の上、彼女を連れ帰った。これに同意したのは結局カムラと千姫が問題を持ってきた手前、ポラールから出ていくのが安全保障としても最適であった為である。一方でアイヴァースギルドからすると他のギルドとの抗争は避ける理由もなく、寧ろ長期的な視点を踏まえるとこれを利用してユカルギルドの力を削る戦略が立てられた。でなければカムラの居場所をとうに教えていたに違いない。問題が起こる前からカムラを探していたという事はそれほどに大事な事であった。手紙が書かれたのは一週間前、事態把握、手紙の発想を含めれば一週間半前が妥当とラリアは推測したのである。

四人は空中船に乗り込み、これからの予定を話し合っていた。


「帰りくらい安全がいいんだがなぁ」

「それはみんな思ってるし」

「ウリヤノフを撤退させましたし、当分は来ないと思いますがね」

「そうだといいんだが」


カムラは窓の外を見る。久々の平和な空が広がるが、雲はなく、下の丘陵地帯が見えた。


「こう見ると平坦だな」

「中征は平坦ですからね、農地が多いんですよ」

「あそこにあるのは?」


カムラは指を指す。遥か先にアスチュートの様な市街があった。中央は城壁で囲まれている。


「テクニークマルクですね。元々はベルリという名前でしたが200年程前に戦争に於いて鍛冶師を集める都市として再開発されたのです。現在ではブランデンベルク大公兼プルーセン王の都市であったと思います」

「ならトルンガの目指す先か?」

「なんでぇ、俺はカルタノだよ」

「確かに、工業都市ならあそこの方が有名かもしれません。殊武具鍛冶にとってはですが」

「そうとも」


カムラは相槌を打っていた。窓は更に後ろの景色も映し出す。そう、オストシュヴァルツヴァルトである。


「あそこが俺たちのいたとこか」

「もったいなかったなぁ…」


トルンガはさぞかし口惜しそうに見つめる。カムラは深く、なんども相槌を打った。


***


 エーテルシュタットに到着した船を迎えたのは驚きも驚き、アデリンデであった。


「お姉さま!」

「アデリンデ!どうしてここへ!?」


オーダは胸に来たアデリンデを受け止め、その背中を撫でた。


「これが姉妹愛、か」

「そうなの?」

「いや知らん、適当」

「だと思った。でもいたことありそう。いないけど」

「いたかも知れんぞ?」

「妄想?おかしいよそれ」

「冗談だって」


二人はそう言い合い乍ら降りてくる。トルンガは未だに縄を解かれぬ千姫を船から降ろした。


「あれがお姉さまを傷付けた仇ですの?」

「いいえ、どうも魅了を使われた様です」

「まぁ!?」

「同胞の仕業と確認できました。これを」


無論オーダははなから会う気でいた。それはこの絵を渡す為であった。


「この男が?」

「ええ。記憶から辿りましたから。ですが」

「改竄の可能性も無きにしろあらずですわ。ですがお母さまもお調べくださるに違いなくってよ」

「お願いしますねアデリンデ。私たちはウリヤノフの仲間をアスチュートに探さねばなりません」

「そこにも?」


オーダは頷いた。無論、違う可能性も捨てきれない。だが、危惧自体は持たねばならなかった。

読んで頂きありがとうございます! 

話が進んだ様な、進んでない様な。そんな感じですね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。