↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/71

そこは戦場

第六六話です

 カムラ達が市街に降りれば火の手は轟々と上がり、破壊の限りとなっていた。兵士らは色めき立ち、判断は覚束ない状態に近かった。ヤンは部隊を纏め上げると、戦闘の準備を始めていた。想定されるその総数は800を超える兵力であった。戦争では些か心許ない数なれど、この時期に来る戦力と想定すればそれは膨大な数と言えた。


「これは…凄いね」


ラリアは直感的に感じた事が言葉に洩れた。


「そうだな。戦場というのはこういう事か、とわかる。だが怖気づくもまた間違い」

「うん」


ラリアはやや手が震えていた。人を殺すという事実に彼女は耐えられない事はカムラには察せられた。モンスター退治と殺人では覚悟すべき心構えは全く違う。


「ラリアは火災を何とかすればいい」

「火災を…?」


ラリアは不安げな目でカムラを見る。カムラの目には恐らくは己にあるだろう殺しへの恐怖は露程も無い。羨ましいと心底思った。

カムラはラリアの手を仕方なく握った。


「落ち着け、いいか、落ち着くんだ。殺さなくていいから。見なくていい。だから目の前の事だけに集中しろ。いいな?」

「う、うん、うん…」


ラリアはいつもの性格はどこへやら、怯えた声と共に返事をした。


***


「各部隊、集結!」


 ヤンの号令一下、総勢300程度の宮殿直衛の部隊集結し、更には生き残った市民らにも武器を持たせ、最終的には総数1400の兵力になった。ポラールは腐ってもポラーヴ公の膝元であり、その人口も万は優に超していた。また状況が状況、銃器ではなく、ハルバードや弓でもっての戦闘になった。これには当然理由があった。敵が集中した戦力を展開している筈がないという算段である。ここまで大規模な略奪は個々の傭兵が別々行動でなければ起こり得ず、その為に敵は一元統制下ではなく、乱雑な行動の下にあるのではないかと考えたからである。よしんばこれが演技であったとしても、そうなるともっと偽り故の規則性が生まれるが、それも無い。それがヤンに傭兵はバラバラであるとの確信を強める理由であった。

兵士らの戦闘が始まると、この予想はものの見事に当たった。敵は悉くバラバラであり、また銃兵が多い故に長い装填が弓の前では仇となっていた。


「見つけたぞ!」

「ポラーヴの犬か!」


放った弾は当たらず、だがその傭兵には二本の矢が命中した。


「がっ…」


その肉体は地上に倒れ伏し、二度と息はない。

だがそんな彼等兵士とも次第に連絡が途絶えつつあった。ベリアシュの傭兵らも交戦を開始したがもう一つの問題は敵の分散であり、想像以上に分散した敵はそもそもとして接敵自体が困難となっていた。その中でポラーヴ公の部隊は連絡を取り合っていたが奇襲を幾度か受けていた。カムラも戦闘に参加していたが、その姿を見る事となる。


「な、なんだ、今の姿」


目の前で兵士が一人斬り殺される。首は宙を舞い、地面に落ちた。カムラは剣を構えるが、既に目の前にはおらず。カムラは背後に剣を振った。

金属音と共にその姿が目に入った。赤い東洋甲冑、だが胸部甲冑は西洋。そんな鎧に身を包み、刀をその手に、振うのは、女性であった。


『東洋の人か』


カムラは鍔迫り合いの中で聞くも、返答はなく。顔は面頬にて不完全だが、その目と、体つきと髪の一束に纏められようによってそれが女性である、それも若い、とわかった。


(出身等で手が鈍ってどうする、殺しに来たのだ、殺せばいい!)


カムラは体格差で押し切ろうとするもその女武者はすぐに下がる。目の前にいたのはリチャードであった。


「おはよう、もう…お目覚めか…?」


カムラの冗談は耳に入らぬと言わんばかりの面妖。神話に登場する悪魔が如き面妖であった。怒りに打ち震えている。その巨大な戦斧がカムラに振り下ろされ、さしものカムラも冗談は言えない。斧を避け、その横腹に剣を振う。素肌がやや見える程に薄い服は容易に斬り裂かれ、皮膚をも斬られるが、リチャードは知った事かと服を破り捨てた。その信じがたい筋肉は鋼鉄。


「同郷の誼は…ないか」


次なる動きをカムラは狙うが、首を掴まれ、馬乗りになる。だが今度のカムラには武器あり、ミスラルの短剣でその片方の手首の腱目掛けて斬った。火炎魔法を放つも一瞬で距離を取られ、側方からの斧が振われる。避けるカムラ。その刃は建物の柱に食い込んだ。女武者はカムラ目掛けて袈裟斬りを狙うがカムラも短剣でこれを逸らし、右の剣で首を斬りつける。首を護る鎧に阻まれ、刃は通らず。二刀流のカムラに二人が立ちはだかった。


***


オーダは邸宅にて騒動の時にも休養していたが、流石にいてもたってもいられない。己のクロスボウを手に出ようとした。だがトルンガがこれを止めた。


「そんな腕で何ができる」

「片腕が残ります」

「片腕だけで何ができる。防具鍛冶にとっては戦いで何が大事かくらいはわかる。五体全てだ。一つでも使えない奴には何も意味がない」

「ではどうしろと」

「これを持って行って欲しいのさ。もうすぐ出来る。だから待ってくれないか」


読んで頂きありがとうございます!

読んで頂いた方、是非評価、ブックマーク、感想のほどしていただけると励みになりますので、良かったらしていただけると嬉しいです!でも読んで頂いただけでも嬉しいので、また見かけたら読んでいってください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。