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東洋の武具

第六二話です

 カムラは久治郎に頼み、武具の蔵に入った。そこはポラーヴ公の雇う傭兵用の倉庫であったが、様々な武具がそこに備わっていた。久治郎の防具と武器もそこにはあった。


『某がここに来し時に持て来つる物にござる』

『成程』


カムラは周辺を見る。一際目を惹いたのは立てかけられた曲剣。久治郎曰く、刀なる武器。サーベルとひどく似ている。運用思想も恐らくは同じなのであろう事はトルンガにも容易に察せられた。


『応急処置のみしておりますが、それも不完全。この地域には某の刀を直す者がおりませぬ』

『使えなくなるだろう?』

『さぁべるなるものを造る刀工がおりますればそこに打たせておりますが、やがていつかは、等とは重々承知』


そう語る久治郎の表情はどことなく、否、間違いなく暗くなった。幾つか物申したいのだろう。だが場所が場所故にそれは難しいものであった。

カムラは刀を手に取った。全長は90㎝超であろうか。鞘を抜けばよりその外観は目新しく、更に言えば柄は20㎝、刃渡りは70㎝。片刃であるが、それ故にカムラには扱いやすそうに見えた。刀は他に二振りある様で、一つは柄は短く、刃渡りはより長い。


『これは?』

『太刀と言い申す。馬上刀。いえまぁ、拙者恥ずかしくも使った事無く、曰くは昔も昔に我の地域より齎されたと耳に入れました』

『成程、こちらの方が自分は好みだな』

『これはしたり!であればお渡し致す!この太刀は拙者の物に非ず。この屋敷でも何でも余り使われず煙たがれた由、拙者より主にお伝え致せば譲渡されましょうぞ』


そんな久治郎の言葉にカムラも流石に驚いた。カムラは手に取ってみるも確かに造りは古くこれは扱い難いと評せざるを得ない。だがそれにもまして気になる点があった。


「トルンガ」


カムラはトルンガを呼んだ。トルンガは鎧を見ていたが、カムラに呼ばれ、顔を向けた。カムラの気になった事には専門家の意見が欲しかったのだ。


「これは太刀という武器だ。んで、刀身を見てくれ」

「わかった」


トルンガは刀身に目を通す。刀身はやや重く、其の上少し煌めいている。この特徴に合致するのはアダマントミスラル合金である。


「初期のアダマントミスラル合金だ」

「わかるか」

「アダマントの含有率が少ないのが特徴だ。現代のはより精度が高いものを造れるようになっているから煌めきはもっと少ない」

「成程、んで、どう見る」

「相当な業物だ。それから東洋でアダマントの生産は大陸でしか出来なかった筈だ」


カムラにはそれを聞いて中々と関心を持った。


『久治郎』

『は?』

『これはアダマントミスラル合金だ。だからもしかしたらお前の刀を直せるんじゃないか』

『まことか!?』

『多分だけどな』

『これは驚き!良い話に候わずや』


久治郎はひどく喜んでいる。カムラもこれにはやや同感だった。


「ってか、これ貰えるらしい」


カムラはトルンガに言われたことを打ち明けた。それを聞いたトルンガはより驚いてしまった。


「ほ、ほ、ホントか!?凄いな!」

「どうもかなり前のものらしいんだ」


トルンガは驚きつつも頭を冷静にした。流石にここで大きな声を出すには憚られた。


「ドワーフか、ゴブリンか」

「もしかしたら東洋の工匠がここにも」

「あり得る」

「なら当人は…」

「死んでるかもしれんなぁ。エルフは東洋にはいないし」

「魔法ならまるまる作れるんだろうか」

「それは特等だけ。一般魔術士にゃ無理、あまつさえ俺らには」

「無理、だな」


二人は結論を付けて話を終わらせた。

他の武具もあったが、トルンガの目を惹いたのは甲冑であった。


「この鎧かなり軽いな…」


蛇腹で構成され、鉄で誂えられた甲冑は、征州の甲冑とは異なり、動きやすいだろうという印象があった、とはいえ、防御性能は圧倒的に征州の方が上であるとも察せられた。兜もしかり。東洋の甲冑は他にもいくつか目を通したことがあれども、皆一様に蛇腹である。唯一異なるならば、この曰く西洋具足なる甲冑。蛇腹造りではなく、一体型構造であった。更にトルンガの興味を惹いたのは額当て。軽く、合理的。次防具を作るならばこの形状を是非真似したいと感じるのはおかしな事では無い筈である。



「カムラ」

「ん?」

「これどうだ」

「新しく、か?なら是非欲しいかもな」


そうか、とトルンガは言い、その額当てをしまった。新しく作るには丁度いい。


***


 三人が戻ると、ラリアが既に部屋に案内されていた。


「あ、二人ともどこ行ってたの?」

「気分転換だよ」

「私も行きたい!」

「魔術道具とかじゃないけど」


そう言われた瞬間にラリアの興味は一瞬で薄れて消え去った。


「あ、そ。じゃあいいや」

「身勝手だなぁ。んで、身体の調子は」

「回復魔法が上手くいってたみたいだからそんな心配はいらないって。オーダもそんな感じみたい。だから私はすぐ帰されちゃった」

「そりゃ良かった」


一行にやっと心が落ち着く時間が出来たのであった。

読んで頂きありがとうございます!

大分無理な展開な様な気も…でもここは刀を出したかったんです!許して…

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