ここからどうする?
第六十話です
久治郎の仲間が調達した馬車に四人は乗った。今回の遠征は結局バフォメトの革を一つのみ回収して終わらせる事になったが最低限カムラの手袋、胸部防具は作れるという。
「正直言えばもう少し欲しかったけどな」
「まったくだ。まさかこんな事になるとは」
トルンガはハッとし、カムラに知った事を伝えた。
「そうそう、あの傭兵だがな」
「ん、あぁ」
「ウリヤノフが雇った傭兵だった」
「…もしかして空賊もか」
カムラの質問にオーダが答える。
「そうでしょう。推測ですがこの近辺の傭兵は皆々買収されているやも知れません」
由々しき事態であった。これを解決しない限りはおちおち枕を高くしては寝る事はおろか安全に帰れる保証も難しい。だがカムラの性格的にそれに対する答えは決まっていた。
「なら解決すればいい」
「はい?」
「実力には実力で以て返す」
なんと端的で分かり易い事か。だがしかしそれは一般的な考え方で言えば困難を極める。そう易々と倒せるならばなんと楽な事か、そうでないから困難なのだ。ウリヤノフは人格はともかくとして五ヶ国語と多様な知識、戦闘能力によって第二級冒険者でありながら実力は第一級冒険者に相当するとされる。無論冒険者級等戦闘能力の比較には成り得ないものの、魔術士としても五等魔術士である彼は軍属の専門魔術士に勝るとも劣らぬ実力を持っていた。
「ウリヤノフは手練れの傭兵にして冒険者。私も一度として刃を交えた事はありません、ですがそう容易く倒せないのもまた確か。どうされるのですか」
『何を話されておられるのか?』
久治郎はカムラに聞いた。
『ウリヤノフって知ってるか?』
『ええ、耳にした事は』
久治郎も耳にだけはした事があった鬼神が如く強さを持ち乍ら、凶暴な浪者と久治郎は噛み砕いて理解していた。無論その実の人柄は露とも知らない。
『ダウリーダ要塞の攻略で、まぁ悪逆の限りを尽くしたんだと。んでな、俺は其奴の仲間に喧嘩を売ったらしい。仲間を襲ったのはその仲間という線が濃厚なのさ』
『何と。貴殿は斯様な悪逆外道に弓を引く気骨を持たれるか。某にその様な気骨は持たざれば。…これを何と恥じるものか』
久治郎は気色ない顔を見せた。酷く心を落とす表情もカムラは何やを問う気は微塵も無かった。
『んで、其奴が俺らの命を狙うならば、対応してやろうってな。でもただでは勝てないのは俺だって百も承知さ』
『然り。強者を相手にするならば策を講じて当たるに如かず。古今東西、名だたる将は然る様にきたものにござり申す』
『同感だ。だが、算段があるわけじゃないしなぁ』
カムラがそう、天を仰いだ。
『であればこの久治郎が一つ進言仕りとう存じまする』
『そんな畏まらずとも』
『同じ武人ならばこそ』
『んで提案というのは?』
『もし、かの者と戦を行い、そのものが多くの兵を集めておるのであれば、多数が勝つのはこれ必定。勝つには将を討ち取るに如かず』
『そう易々出てこないんじゃないか?』
『如何にも。なればこそ、策を講じる他無し。将が出る様に仕向けるべしと心得ます』
『手を、貸してくれるか?』
『それは今の主の言葉無くば難しゅうござる』
『そうか』
二人の会話を聞いていたオーダがカムラに聞いた。
「何か、思いつきましたか?」
「一つ、な。でも、希望的観測だ。これはな」
「話してください」
オーダはカムラを見据える。何かあるというならば是非とも聞いておきたかった。カムラがやるというのだ。確かにカムラの発想も一理あるかもしれなかった。
「空賊がもしウリヤノフなら、サッカバスにもこれに反抗する理由があるんじゃないか?」
「…なるほど?嗾けるんですね?」
「その通り!」
***
ポラーヴ公の邸宅に到着した頃には日の光が見え始めていた。
「オーダは寝た方がいいんじゃないか、寝れてないだろ」
「そうですが…」
やや足を引き摺り乍らもラリアが馬車を降りる。
「私はいいよ。でもオーダは疲れてるでしょ?」
「ラリアは歩くな。ほら、背負ってやるから」
「どうもどうも〜。毎度ありがとうね〜」
「にゃろぅ」
カムラはやや顔を顰めながらもラリアを背負った。久治郎は一度兵屋に馬を戻すという。先に一行はポラーヴ公の邸宅に入る事になったのである。本来であればこうはならないが、オーダの立場故に入る事を許された。
「ベリアシュ様にお会いしたい」
「話は通っております。ささ、こちらへ」
直ぐに門は通された。カムラは足早に歩いていく。
「カムラ、もうちょっと遅くお願いだよ、右っ腹の中身がぐちゃぐちゃな感じがするんだー」
「わかったわかった」
カムラはラリアを宥めた。すると奥から昨日に会ったヤンが一向を出迎える。拙い回復魔法が故に跡の残った腹部が映った。
「お怪我をされましたか」
「はい、そうです!」
「専属の医師がおります。診せましょう」
「お願いします」
カムラは頭を下げてヤンに頼んだ。
「オーダ令嬢もお怪我をされておられるご様子」
「診てもらえるか」
カムラはそう聞いた。ヤンは微笑んで頭を縦に振った。オーダは息を吐く。
「それはありがとうございます。それから…是非とも休む場所も欲しく思います」
「心得ました。準備させましょう」
カムラはラリアをその部屋に案内されるまま連れて行った。
遂に戦闘も終えましたね!自分もなんとか、投稿できましたが、三話続けてはなかなか…かなり荒い作りにもなってしまいましたし。なので毎度ながら、温かい目で読んで頂きますよう、お願いします!
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