助っ人
第五九話です
騎士と斬り合う中で騎士は止まった。カムラも止まり、両者は止まる。側から見れば如何なるのをしているか全く予測もつかないが、数分の後に二人は離れ、再度構えあった。
そんな姿を見たのが久治郎であった。時に彼はポラーヴ公が雇う傭兵であり、森の警戒任務にあたっていた。
「如何された後藤殿」
「気付かれぬか、影二つ、重なっている」
「…そういう事をするものも…」
「否、アレは死合いとお見受けするが」
「何!?それは本当ですか!?」
久治郎は槍を構えると、二つのピストルを腰に下げた。
「短筒をお借りする!」
「待て、後藤殿!冒険者同士の諍いという線もある!」
「否、アレは賊や諍いの類に非ずや、御免!」
そう言い捨てるや否や久治郎は駆け出した。
「そこの者!何をしておるか!」
カムラを狙っていた筈の騎士はその声を聞くと、直様撤退し、盾を回収、高い跳躍と共にその場から消え去った。
「そこの者もか!」
久治郎が問い詰めると共にいた男は向き直った。
「NO,NO me」
だが久治郎にはブリトン語はわからなかった。
「その言葉はわからぬ、何を申しているか」
だがそれを聞いた男は何か目を大きく開けた。
「そうか、通じるんだな!?」
久治郎は驚かざるえなかった。和語を話す者がいるとは思わなかったのだ。
「これは驚き。まさかこの言葉を話せる者がいようとは。
だが、それとこれとは別儀なり。何をしていたか洗い浚い話すがいい。先ず貴殿の名は!」
「そっちからじゃないのか」
「問うておるのはこの久治郎である!」
久治郎の剣幕に押され、男は渋々と名を名乗り始めた。
「ヤスヒデ=カムラ、あいや、カムラヤスヒデ」
「カムラか、そうか。俺は後藤久治郎と申す」
「成程。で、先ず聞いてくれないか」
「何を」
「俺はアイツに殺されかけたんだ、防戦一方だった!」
するとカムラは話の途中で姿勢を変えた。唐突に真逆の方向に向き始めた。
「どうした」
「仲間が奴の仲間だろう奴らに襲われてるんだ、助けなきゃいけん」
「そう嘯いては留まり候わずや?」
「言っとけ、こっちは何が何でも!」
久治郎は未だカムラを信用ならず、故に提案をした。否定すれば斬捨てるつもりだった。
「であれば付いて行こう。助太刀致す」
だが久治郎の想定は外れた。カムラはこれを聞いて久治郎へ振り返った。
「是非頼む!」
「失礼仕った。この久治郎、貴殿を疑った」
「付いてきてくれ、この先なんだ」
***
「という流れなんだよ」
カムラは三人に事の次第を話した。
「ありがとうございますヒサジロウさん」
オーダは久治郎に頭を下げて礼を言った。
『彼女はなんと?」
『ありがとう、と言ったんだ。ここはサンクって言えばいいから』
『成程、忝い』
久治郎はオーダに向き直ると頭を下げた。
「Thank」
「どうも」
トルンガはカムラに近づく。
「お前和語分かるんだな」
「なんとなくな」
「にしては流暢じゃねぇか」
「俺にはこのブリトン語の方が大変だよ」
この返答にはトルンガは違和感を覚えずにはいられない。
「お前は東洋出身なのか?」
「かもな。あんま聞くな。オーダは別だ、偶々分かった、だろ?」
「だから俺から話す必要はない、と?」
「そうだ」
トルンガは小賢しいと言いたくなったが、皆まで言うのは憚った。簡単な話ではないのも事実だった。曰く東洋では聖教は禁止されているらしく、もしかしたらその系譜にカムラはいるかもしれなかった。だがカムラに信仰心があるとも思えず、それは更にトルンガに不自然さを覚えさせてはいたが。
「つーか、バフォメトの革は?」
カムラがそう言った。忘れてはいけない、そもそもそれを目的にしていたのだ。辺りを見渡すと倒れた革がそこにはあった。
「お、あったあった」
オーダは久治郎からの礼も話したが、腕の痛みが今になって響き始めてきた。じわじわと強まる痛みが、オーダの足を止めた。ラリアも残る痛みが動きを制限している。カムラはラリアを背中に背負った。ラリアはオーダに回復魔法をかけ、応急処置を施すとオーダは立ち上がって歩き始めた。
「行きましょうか。先ずは移動しなければ」
***
下にはポラーヴ公の部隊が久治郎を追ってきていた。
『久治郎か』
『この者らを救いましたる由、扶き願いたる由にござります』
『わかった、わかったぞ。ならばであるな?』
その兵士は片言なれど久治郎と会話している。
「何言ってるかカムラはわかるか?」
「俺たちを保護してくれるってさ」
「そりゃあいい!」
カムラは兵士に聞いた。
「兵士さんよ」
「なんだ」
「お、通じるのなら話は早い。是非とも医者もくれないか」
「回復魔法を使えるものは?」
「初心者ばっかりでさ」
「…仕方あるまい。ついてこい、いいな!?」
一行はその返答に助かったと安堵の息を漏らした。
読んで頂きありがとうございます!
和風キャラもいていいと思いまして。前回の最後に出てきたキャラでしたけどね。ではまた!




