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黒い騎士

第五八話です


 更にカムラを斬撃が襲う。カムラは一度下がって、騎士から距離を取らんと後退した。


(最悪は森に火を放って止めてやる!歴史のいかんせんが関係あるか!こっちは生き死にがかかってんだ!)


だが、騎士の方がやや早く。雷撃魔法と組み合わせカムラの進行を阻む。更に接近した騎士の剣はカムラの傍の木に食い込む。その隙にカムラは騎士の兜に両足でのドロップキックを放った。甲高い金属音を伴い、初めて騎士は仰け反った。だがそれも直ぐに修正する。カムラは足で騎士の右手を三度蹴るとその手を無理矢理放させた。手元より解かれた剣を確認し、短剣を引き抜こうと構える。兜の隙間を突き刺さんと突貫したが、騎士は剣を手放すと、カムラの襟を掴み、足をかけて投げ飛ばした。地面に転がるカムラを更に蹴り飛ばし、間合いを取ると木に食い込んだ剣を引き抜いた。その剣は真上から振り下ろされ、カムラは鍔でこれを捕まえ、動きの拘束を狙った。騎士の動きが止まる。鎧の奥にある目はカムラ自身を見据える様である。


「さっきからずっと狙いやがって!テメェ誰だ!」


***


 ラリアの負傷によって戦力は激減。だがオーダ一人でも戦闘を熟さねばならなかった。


「私達を狙う理由を答えろ!」


オーダは強く言う。それになんと傭兵は答えた。


「カムラとかってガキ、ウリヤノフに喧嘩売ったらしいなぁ?」


ウリヤノフ。カムラがレーベンスボルンで乱闘を起こした際に一緒であったらしい冒険者である。そしてオーダはそれによって合点がいった。空賊も、この傭兵も。


「八つ当たりですか?成程、かの悪魔と謳われたウリヤノフはこの程度で八つ当たりをする程器量の小さい男と見えます」

「悪魔なんて二つ名を持つ奴だぞ?強姦略奪皆殺しする奴に器量がある訳ねぇだろうが」


言い終わるが早く発砲音が響き、オーダの頬を掠る。


(この距離で…!?当ててきた…!)


オーダは頬の血を拭い取る。この程度の出血は彼女を動揺させるものではないが、相手が銃を持つというのは充分に警戒に値した。再び矢を装填し、そのままゆっくりと後退した。やや傾斜したその地面は姿勢さえ下げれば射線を隠す事が出来た。無論相手もこの間に場所を変えるのはオーダにとってもわかっていたがラリアの負傷に意識が向いていた。トルンガはオーダの動きに気が付くと、ラリアを担ぎ、斜面を下った。オーダはラリアの様子を見る。光は姿の露見を齎す故に暗い中で見る必要があった。


「痛いですか?」

「血は止めたから…」

「答えになっていませんよ。…戻りましょうか、川に」

「な、危険ではないのか!?」

「先ずは汚れを。応急処置的な回復魔法は外的には血が止まりますがその内部までもが治っているわけではありません。人体構造への理解が浅いなら尚更」


トルンガはラリアを背負って地面を下がり、オーダは後方警戒を伴い乍らそれを追った。だが川に降りるも再び銃撃が行われた。あの傭兵は確実に追ってきていたのである。オーダはラリアの体を岩陰に隠すが、次発はオーダの右腕を捉えていた。まさかオーダが被弾するか。方向は上流側。傭兵が既に降りていた。


「早かった…」

「オーダ!」


傭兵は堂々立ち上がって再装填する。ピストルも堂々と立って装填しながら近づいていく。


「手負いの魔法使いと足枷のゴブリンの爺、自身さえ手負い。いい感じに追い詰められたな。あ、そうだ。カムラはどこだ」


傭兵はその様な事を聞いた。想像にも無かった言葉であった。


「中世の騎士気取りと戦闘してどっかいったが、まさかそんなに敵を増やしていたとはな」

「待ってください。アレは貴方の仲間なのでしょう?」

「は?知るか」


その時、ラリアを呼ぶ声が後ろから聞こえた。傭兵はそれに反応する。発砲音が響き、傭兵のローブを貫通した。一瞬怯んだ傭兵の隙を突きラリアは雷撃魔法を放った。傭兵が反応して銃を放つが雷撃は銃の火薬を暴発させ、照準が間に合う前に発砲させた。傭兵は銃のバヨネットで仕留めようと突貫する。だがカムラ間一髪間に合い、そのバヨネットを刺す腕を抑え込んだ。ラリアを助けるのに間に合ったのである。


「何撃ってんだ…」


カムラは短剣を抜くと斬りつける。傭兵はローブで受け止め、手元の短剣で応戦するが、カムラは身体を捻って傭兵の腹部を蹴った。その瞬間にラリアはカムラの靴に風魔法を付与した。その蹴りは突風と共に傭兵を吹き飛ばした。だがカムラは追撃をしない。傭兵はそのまま下がっていったのである。


「か、カムラ、あの騎士を倒したのですか?」

「いや、追い払った。んで、その手伝いをしてくれたのがあの人」『有難うございます!』


そう言うとそこにいた男は頭を下げた。


『滅相もござらん。拙者は成すべき事したまでの事』


見た事もない鎧を身に纏い、サーベルの様な曲剣を腰から下げた男が立っていた。


『あ、申し訳ない。申し遅れながら、拙者、後藤久治郎にござる。カムラ殿の窮地を微力ながら助太刀致した。お仲間のお命、助けられにしかば良かりきなれば』


オーダもラリアも、トルンガもその言語は全くわからなかった。

読んで頂きありがとうございます!

ボス戦並みの長さになってしまいましたが、でも戦闘これにて一件落着でしょうか?

明日はやや忙しく、投稿が僅かに遅れるやも知れませんが何とぞご容赦頂きますようお願いします。

読んで頂いた方、是非評価、ブックマーク、感想のほどしていただけると励みになりますので、良かったらしていただけると嬉しいです!でも読んで頂いただけでも嬉しいので、また見かけたら読んでいってください!

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