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初戦闘

第五話です。何とか間に合わせる事が出来ました。


早朝、二人は朝食を済ませギルドに来ていた。書類の受け取りである。

「えーでは。お二人のアイヴァースギルドへの登録を済ませた旨の書類を2点、お二人分ここに用意しました。お名前、またご質問無ければこのまま受け取りとなります。ご確認ください」

二人は書類に目を通していき、確認事項を読み終える。

「読み終わりました」

「ありがとうございます。ではこれにて各種手続き終了となります。ご質問は?」

「稼ぎ方ですね。勝手に洞窟に入っていいのか、依頼料で稼ぐのか、とか」

「モンスターの討伐数ですね。例えば無数に湧き出るクリーチャーバグ等を定期的に討伐していただくのが基本となります。クリーチャーバグは特に大型ですし、昨今は入り込んだと思われるバグを起点に洞窟でバグが繁殖してしまっていますから、是非討伐をお願いします。洞窟へ入るのは規制されるものでもないのでご自由にどうぞ。では」

と、各種説明をおおまかに二人は聞いた。いくつか昨日のオーダが言わなかった点もあったが、それは言うまでもない、とこういう訳である事は容易に察せられた。

「さて、行くか?」

「勿論!」

彼等はこうして、洞窟へと足を運んでいった。

***

そして、時は再び頭に戻る。

彼等は眼前の敵と対峙していた。

「はぁああっ!」

一撃の下にトカゲを斬り裂く。

彼等がこの目に遭ったのは、カラキドン洞窟の第一層第三区、ハルマー洞窟鍾乳洞である。道の様に整備されたこの場所であるが、二人は意気揚々と侵入したはいいものの、早速と敵に囲まれた訳である。それも、バグですらないモンスターに、であった。

「ラリア!魔力はあんのか!」

「潤沢!」

ラリアはカムラの側方より来るオオクログモを見る。杖に火の魔法(エンチャント)を纏わせ、下に回り込むと、胸に一撃を与える。オオクログモはのたうち回るも、腹を向けて動かなくなった。その奥から来る蜘蛛には

「天の怒りは我が肉体とともに汝の血肉に一撃を与えんっ!」

詠唱とともに炸裂する雷は地に落ちる雷を、まるで横に飛ばすが如く飛翔し、蜘蛛に直撃した。空気の炸裂音とともに蜘蛛は爆発四散する。

「うわぁ…」

ラリアは思わず言葉が漏れる。一方のカムラはスペライノサウルスに突貫した。スペライノサウルスは前足を広げ、カムラへ覆い被る様に襲いかかるもカムラはこれを横に避け、横腹を斬り裂く。深く斬り裂く事は叶わず、スペライノサウルスは何とか抵抗せんと、尾を振り回した。これを剣で受け止めるも、流石に分が悪いか、カムラは吹き飛ばされてしまった。スペライノサウルスはその間に体勢を立て直さんと逃げていった。

「カムラっ!」

「いたた…大丈夫だ。受け身も取った。重傷を負った訳で無し、安心しろ」

擦り傷だ、とでも言う様に脚を払う。

「回復魔法は…」

「水魔法あったな?あれくれ。汚れだけでも落としたい」

カムラは水魔法から出された水で擦り傷を洗った。

「水魔法が飲み水になったらいいんだけどなぁ」

「飲み物のためだけに水魔法使う訳ないでしょ。魔力が勿体無いもん」

「それもそうか」

汚れを落とし、再びカムラは立ち上がる。

「もういいの?」

「あぁ。さて、奥へ行くか」

「えっ」

「中心部にさえ行かなきゃ危なくは無いのだろ?なら一層だけでも目を通しておきたいし。というかこの蜘蛛の…出糸線とか、スペライノの歯とかが貴重なんだろう?まぁ回収しようか。これでとんでもないのが出てきたら怖いもんだがな」

「確かに」

ラリアはカムラの言葉に頷く。

残骸となる蜘蛛から出糸線を見つけ出した。袋で包むと背嚢にしまった。

「これでよし、と。どうする?まだ続ける?」

「うーん。怖いなぁ、ピュトンとか出てきたら一溜りもないし…」

「魔法は?」

「前衛がどうしようもないと…」

カムラは一瞬顔を顰めた。

「…事実そうではあるが、そうハッキリ言われると少々腹が立つな」

然しラリアは気にせず続ける。

「だから、今回はこれで撤退ね。手に入れた奴は回収して、売っぱらって終わり!」

カムラはわかった、と頭を縦に振ると了承した。そのまま地図に沿って第二区へと足を進める。

洞窟内は光があった。コウリョウゴケと呼ばれる苔が自ら発光しており、また洞窟内は細かな鉱石が土と入り混じり、コウリョウゴケの光を反射し合い、穏やかな明るさを洞窟の殆どに広げていた。コウリョウゴケは洞窟内で環境によって見られる事が多く、マナ濃度が高い場所では特に多く見られる。カラキドン洞窟もその例外を漏れない。魔石鉱山や一部の自然洞窟でもよく見られ、カリヨン村でもよく見る事が出来た。

カムラは周囲を観察し乍らもこれらコウリョウゴケを松明代わりにならないものかと雑念を持ち乍ら帰路を歩いていた。ラリアは無心で地図を睨み、初めてとなる地を一歩一歩進んでいた。

「ねね、この地層は第二区かな?」

「これは白亜だな。だから…いや、堆積岩が下にある…。おい、第二区の地層は?」

「え?えーっと、チョークと…泥炭だよ」

「燧石もだろうが!俺ら迷ってるんじゃないのか!?」

「えっ…あっ、あー!?」

ラリアの声は周囲に木霊した。

「五月蝿いっ!困ったな、どうすんだ」

「いやそんな事言っても…メモにはちゃんと書いてあるのに…」

「くそ、俺も見ておけば良かった、俺は俺で失敗したな」

カムラはそう吐き捨て、ラリアから地図を受け取ると、ラリアのメモとともに地図を照らし合わせる。

曰く、メモでは第一層が六区に分かれており。下層に続くルートを持つのは二区。第四区と、第一区。入り口を第一区に、時計回りに二区三区と続く構造となり、第一区と真反対なのが第四区。そして彼等は今第三区と第四区の間にいる、というのが大方彼に読み取れた。

然し、未だ理解しえぬ所はあった。それこそ、その場所。ハルマー鍾乳洞を抜けても白亜は第二区と第三区、第三区と第四区の間に位置した。より深くなるのは第四区となるが、ルートは二つ。第四区側と第三区側では一方通行となるルートが存在し、また、第二区と酷似した地形もあった。ポーラー洞窟回廊は特にその象徴であった。白亜で構成された洞窟であり、8000万年前に出来た地層であった。が、3000万年前にも新しい白亜質の石灰の地層が存在し、それが第二区と第三区を繋ぐチョーク洞窟回廊であった。つまり彼等はルートを間違えた結果、チョーク洞窟回廊をポーラー洞窟回廊と誤認してしまった訳である。無論年代が違う地質であるのだが、カムラはそこまでを知らなかったのである。それ故に彼自身も指摘し得なかったのだ。

「今から行って…近いのは…」

「このまま真っ直ぐ行けば第五区、第六区、そして第一区に戻れるんじゃ?」

ラリアはそう推測するが、直ぐ訂正する。

「あ、でもバグの生息域と重なっちゃうのかな」

「二層に降りて、別冒険者に護衛を頼む手もあるが」

「んー。取り合ってくれるかな」

「猫の手も借りたそうな人を頼るんだよ」

「成程ね、その手もアリ」

「いや待て、そう簡単に決めるな。俺も今のは適当に言ったまでの事だ」

「でも、多分この状況だとそれくらいしか、無いんじゃない?」

「成程」

結局、二人は二層へ降りていく事となった。四区から続くキットフィール洞窟縦道を降りていく。

キットフィール洞窟縦道は准接続回廊であり、カラキドン洞窟に存在する一五の准接続回廊の一つとなる。これこそ、カラキドン洞窟及びこれら遺跡洞窟と称される洞窟群の特徴であった。遺跡を中央に洞窟が形成され、何段にもなって積み重なる構造はこの洞窟群ならではの構造であった。自然形成にしては不自然な点も多いこれらは遺跡洞窟と称されるに相応しい謎を孕む、「ダンジョン」とも称するに不足ない構造であったのだ。

二人は二層へ降りたが、鍾乳洞から打って変わった洞窟構造となっていた。

「ここは…また広いな…」

「ここはえーと、あ、そうそう。ナーフ洞窟空間と言うらしいよ」

「ナーフ、ね」

ナーフ洞窟空間は二層の第五区に当たる空間であり、周囲にはやはりコウリョウゴケが多く見えた。

そして、当然彼等を待つのは洞窟の自然な景色に止まらなかった。不規則な足音。硬いモノが地面を突く様な硬い音。

カムラは剣を引き抜き、音の先を睨む。

「ラリア、戦闘準備。人じゃないぞ」

そう言った矢先、眼前にその姿を見せたのは硬い外骨格が見えている。大きさは青年期の男性程の全高。脚は六つ。しかし前脚はカマキリの様な鎌になっていた。目は六つの複眼。しかし蜘蛛ではない。鋭い眼差しは寧ろ蜘蛛というより

「甲虫みたいな…」

カムラに向けて振り下ろされる前脚をカムラは何とか避ける。そして避けた後方から火炎が飛ぶ。ラリアの魔法によって焼かれたその虫、バグは動かなくなった。

「コイツらがクリーチャーバグ!」

「どうするラリア!」

「何怖気てんのよ!超好都合!絶賛賞金持ちのバグなのよ!倒せるだけ倒して、やれるなら巣まで突き止めて根絶やしにしてやるわ!」

「準備が終わってないのにか!?」

カムラはそう言うも制止の意を孕んだその言葉を聞いて尚彼女は駆け出した。カムラは慌てそれを追う。

「っ!」

ラリアは足を止めると杖を掲げる。

「神よ、我に預言者の力を、神の名の元に地を操る力を!」

呪文と共に杖の結晶は輝き、下の地面は盛り上がる。バグらはその前に動きを一瞬、止めざるを得なかった。そして、その瞬きの間こそ、バグらにとって致命的であった。上から唐竹割りを狙って振り下ろされた一撃は、バグの頭蓋を斬った。細やかな抵抗として振られる鎌はカムラの身体を掠める事はなく、関節を斬られ、そして裏側の胸を突かれる。仲間を救わんともう一体のバグはカムラを狙うも、真横から雷撃。然し、表層が灼けるのみ。致命打であっても、一撃ではない。

「あっれ〜!?き、効いてないの!?」

「いや効いてはいるが…」

絶縁質か。いや、まさか、あり得まい。カムラは混乱した。しかし、相手は野生動物の中で脅威と区分されるモンスター。ただの野生動物とは違う、あり得ない話ではない。

「ふ、ファィエルっ!」

火炎は虫の息のバグを焼き尽くした。

「よし、こういう事もある!」

カムラに向かって飛び上がり、鎌を振り下ろす三体目のバグ。更には四体目も現れ、向かってくる。二つの鎌を受け止め、腰に差すミスラルの短剣をバグの首元に突き刺した。音を立てて崩れるバグ。四体目はラリアの水魔法、ウォーターカッターによって二つに分断された。

「最初からウォーターカッター使えば良かったわ」

「何で使わないんだよ」

「射程短いし、覚えたてのファィエル使いたいし、サンダー使いたいし」

「成程…戦闘の時には頭が良くなる、と」

「自己紹介なら今さらだけど」

「そ、それは中々、言うじゃないか」

カムラは斬り捨てたバグを剣で割くと、外骨格を剥いでいく。

「つーかこれをどうすんだ、運ぶのか?」

カムラは一体の外骨格を剥いで見せるが、ラリアは外骨格ではなく前脚を持ち上げる。

「欲しいのはこっち」

「ほう」

「バグそのものはそんなに欲しがられるものじゃないんだって。寧ろこっちの方が求められるの」

「あと、このバグはどうすんだ?」

「片付け専用のパーティーもいるし、何とかしてくれるでしょ」

「他力本願とは…正にこの事、か」

その時、更にその奥で激しい音が聞こえた。その先は第二層第四区である。コウリョウゴケの少ない、その先。暗い洞窟回廊の、先。

カムラは徐に立ち上がった。

「カムラ?」

「行くぞ」

「え?」

ラリアは一瞬、考え、カムラの考えを読み取った。

「もしかして…」

「他の冒険者だろうに、この中で戦闘しているに違いあるまい。

ここで助ければ恩を売れる、カラキドン洞窟のカラキドン洞穴へのルートまでの護衛の理由を作れる」

「もしかたら、私達負けちゃうかもなのに?今日初心者だよ?」

「わかばマークだろうと何だろうと関係あるまい、年数で場数を踏んだところで筋力は変わらん」

ラリアはそれを聞いて立ち上がるとカムラに頷く。

「わかった行こう」

二人はその声の先へ、駆け出した。

ここまで読んで頂きありがとうございます。やっと初戦闘に漕ぎ着けました。第六話もまだ手を付けていないので、次は四日後かその辺りの更新となると思います。

読んで頂いた方、ありがとうございました。もし良ければ感想、評価等もお願いします。

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