夜の森Ⅱ
第五六話です
結局オーダは意地を張って長い事警戒を続けていたが、やはり気がかりな事は気がかりな物であった。一体何がいるのだろう、と。
そんなオーダに幸か不幸か答えはやってきた。乾いた炸裂音と共に石が割れたのである。カムラも直様これに気が付いた。
「敵か…!」
再びの銃声は焚火に命中した。
「こんな高精度で撃てるのか!?」
「わかりません!施条があるのかも…?」
オーダは疑問形で話す。だがカムラにとってはそれは困るものである。
「はぁ?そんなあやふやで…」
再びの銃声。今度は川向うからである。カムラは状況の異常に早々に気が付いた。発射速度が異常である。
「なんだこの速度!?」
カムラは未だに寝入るラリアとトルンガを叩き起こすと、ラリアに閃光魔法を頼んだ。その閃光によって敵の姿は露見された。骨が立っていたのである。
「こ、こりゃなんだ!?」
「高位錬金術の一つ、ゴーレム!」
「ゴーレム!?」
「教会が禁止する魔法の一つか!」
「それは魅了魔法も一つなので触れないでいただけると…」
オーダはそう呟いた。ゴーレムは骨と魔力が常時必要とされる魔法であり、錬金術。骨は人間の骨が最も使い勝手が良い事で知られ、最もやりやすいのは死体である。無論非常に高難易度な魔法であり、軍用化には程遠く、それぞれ一体一体には意思はなく、それ故に行使者がそれぞれを操作する必要があった。
「使ってるのは初めて見ました…」
「魔力効率的には無駄が多い魔法なのですが…」
だが少なくともゴーレムが三体はいた。光は消えた。闇に包まれた周囲とその奥から来たのは足音。ガラガラと崩れるゴーレムと、新たに現れた騎士。
「同じ冒険者…?」
盾に備えられた剣を黒い騎士は引き抜く。
「違うらしい…」
その初撃はカムラへであった。外見に似合わず、素早く動く騎士はカムラにその剣を振り下ろした。ラリアは騎士の動きを止めようとし、雷撃を放つも盾に防がれる。カムラは駆け出し体当たりをここ見るも重量は遥かに騎士の方が重い。カムラの蹴りにも騎士は動じず、盾でカムラの腹部を殴打すると、剣を横薙ぎに振るおうとし、オーダが援護でクロスボウを放った。矢は斜めった盾に弾かれ、カムラは盾を向けた体当たりを受け弾かれてしまった。
「あれもゴーレムか!?」
トルンガが聞くがオーダは否定した。
「あれから出る魔力は間違いなく人です!」
「オーダの魅了魔法は効かないの?」
「頭に入り込めません!間違いなく対処されている…」
騎士は頑なにカムラを狙う動きを見せていた。カムラに向かおうとする騎士。ラリアはこれを防ごうと火炎魔法も使うが、これも防がれた。更に水撃魔法も与えようとするも一気に接近、オーダがクストースによって斬りかかるも左の盾で防ぎ、ラリアに振りかざす。既所でカムラが間に合い、これを防いだ。よく見ればその剣は僅かに色が鈍い。アダマントの色であった。
「アダマント…!?」
ラリアは急ぎ下がる。騎士はオーダを蹴り飛ばすとカムラにめがけ逆袈裟斬りを与えた。カムラは何とか防ぎ、騎士の横腹に蹴りを与えた。だが、当たった脚撃はその装甲を前に何らの有効打を示せない。
「森の中に逃げるか!?」
「いえ、そんな、逃げられるはずはありません!」
騎士の攻撃は単調であったが、キメラ戦時と同様効かないというのは非常に大事であった。だが、その時とは異なり仲間は少ない。鎧の利点を生かしてくる相手に取れる手立ても少ないのが事実であった。だが騎士はカムラを掴むとそのままほおり投げた、その勢いたるや凄まじくカムラの身体は遥かに上へと持ち上がってしまった。身体強化魔法の一種であろうか。だが騎士はそれに合わせて地を蹴り上げカムラに急行した。オーダもラリアも、トルンガも。一瞬の光景を前に呆気にとられるが対応せんと動き出す。だが明らかに自身の動きは遅い。オーダはその背に目掛けクロスボウを構えるが、その直前に銃声。森の奥からである。数秒の静寂の後、再びの銃声が鳴り響いた。同じ方向からである。何より銃口からの火が見えたのである。だが一瞬見えた火はすぐさま同じ場所から姿を現した。無論カムラを助けに行かなくてはならなかったが三人の前に見えない狙撃手という敵が立ちはだかっていたのである。
(というより、発射速度が速すぎる!先ほどのゴーレムは三体、私たちを三方向から攻撃していたのでしょうが…)
再びの銃声。オーダの帽子に一発が命中し、オーダは二人と共に川の岩に身を潜めた。その間にも銃声は鳴り響く。
(発射間隔は八秒でしょうか。やはり速い。銃はこれ程のテンポでは撃てません…、複数挺持ってきた、いえそれも…)
「ラリア、聞いてください」
「あ、うん!」
オーダは心の落ち着つかせ、ラリアに伝える。
「敵は複数います。間違いありません。同じ方向から攻撃する事で一人しかいないと思わせる事が目的と考えられます」
「ま、待てよ。そいつは何の意味があるってんだい」
トルンガはオーダに言う。
「わかりませんが、推測ならば。単一目標だと思わせて一人を追わせ、後方から攻撃を行う、という線も考えられます」
「カムラはどうするの!?」
「カムラは生き残る腕もあります。これだけは信用できる。過保護ではなく、今できる最善を模索しましょう!」
オーダの声に二人は頷いた。だがラリアにはやはり引っかかっていた。暗視魔法にはたった一人の影しか映らなかったのである。
読んで頂きありがとうございます!
話も進みましたね、序盤の内容は眠さと風邪気味の中でやっていたので許してください…。でも後半は今日書いたので多分大丈夫だと思います。




