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夜の森Ⅰ

第五五話です

 完全に日が落ち、夜空には星が見えている。ぱちぱちと音を立てて火が燃え盛っていた。カバンから取り出した硬いパンと更に取ってきた木の実が彼らの今晩の食事である。


「なぁ、この木の実は大丈夫なんだろうな」

「わかんない」


カムラはその実に口を付けるのを嫌がったがオーダはそんなカムラの為に食べてみせた。


「このベリーなら食べられますよ。ほら」

「食ってみるか…」


カムラも口に入れてみる。


「…味は無いが、毒ではない?」

「毒ならキノコの方が多いです。まぁ毒の木の実もあるにはありますがそう沢山はありません」

「そういえば食虫植物は大丈夫なのか」

「ああいったモンスターはそもそも征州にはいませんよ。東洋の東南諸島に多いと聞きます。ジャングルが生い茂るそうですがなんでも人食い花がいるとか」

「そりゃおっかないな」


ラリアは水魔法を使うとその水を飲んだ。


「魔法で作った水飲んだのか?」

「うん。いやね、なんか川の水を元に魔法で水を作ると純粋な水に近くなるんだって」

「高度な魔法で作られた水は通常の水と変わりません。宮廷魔術士は貴族の為に稀にですが水を作ります」

「オーダも飲んだ事が?」


カムラはそこで聞くが首を振られた。どうも違うらしかった。


「まさか。スクブスには純粋な水が豊富だったでしょう?事実として問題なかったとしても好き好んで飲む人はそうはいませんよ」


オーダはそう言いつつもラリアからから渡された水を飲む。問題ないとカムラに言い、そのまま飲み干してしまった。本当に問題が無いようであり、カムラも疑いながら口に含む。


(確かに普通だ…。まぁ好意も無下にはできんか)


カムラはそのまま飲み干し、ラリアに返した。その後はトルンガはそのまま寝入り、三人は交代で周囲を見張る事になった。最初にオーダがやる事になり、カムラは二番目になった。

オーダは二人が寝入ったのを見て、周囲の見張りを始めた。川は様々な動物が降りてきては水を飲む場所でもあり。常に警戒が必要だった。いつ何が起こるかわからない故にその警戒は更に緊張感が漂うものとなっていた。夜の森と言うのは恐ろしいもので、西のシュヴァルツヴァルトは様々な伝説がある事を思い出した。森の中に魔女がいて、子供達を食い殺してしまうとか、将又、トロールがいて攫ってしまうとか。昔はそんな昔話に恐れていたオーダも冒険者になってからは何があっても殺せる自信があった。この森にも昔話はある。悪魔がやってきて子供を攫う、騎士団を苦しめた、淫魔が男を殺してしまう…等々であった。幾つかは魔王国の話が混ざり、とんだ風評被害を感じる事もあるが、彼等にとってもこの森は恐ろしく、首なしの幽霊が女子供を斬り殺す、十字軍の亡霊が少年らを連れ去る、煮て食ってしまう。とあるオークがこの森に入ると漆黒の騎士が3フィートの剣と大きな盾を片手に待っており、騎士はオークを殺すと吊り下げて見せしめにした、等々。今を思えば中々にサピエンスやエルフ、ドワーフに共通している。だがこの日に限って、どうもその騎士の話が気がかりになりつつあった。よく考えれば御伽噺、こんな事ありえない。事実であれば敗残兵か殺人鬼、亡霊であろう筈がない。デュラハン等持っての外だと言い聞かせていた。

その時である。下流に影が見えた、一瞬だが何かが動いた。狼、にしては高い。一瞬見えたという事は熊であろうかとも思えた。だがあまりに一瞬故に判断しきれない。オーダは矢を装填するとクロスボウを構えた。万が一の為に左手には三本分の予備を持った。脳裏には先ほど想像していた騎士の姿が浮かんだ。


(いいえ御伽噺は御伽噺、もし本当に騎士の姿なら傭兵か冒険者に違いありません!だから、もし人なら先ずは話しかけるところからなんです!)


だが、そう思った矢先、背後で更に足音がした。恐怖で頭が支配された彼女はクロスボウを向けたがそこにいたのは鹿であった。ホッと息を撫で下ろすが、その更に森の向こうでも音がした。顔を向けるも誰も無く。だが、何かが落ちた。熊の声も聞こえる。だが余りに遠く、熊は少なくとも付近にいない事が確信できた。一体何があったのか。だが下流の先に再び影。間違いなかった。その影は間違いなく人型。だが異様に細い。オーダの警戒感は亡霊への恐怖心から未知への警戒に変わった。二人を起こす。


「カムラさん、ラリアさん」

「な、何…?」

「敵か?」


カムラはすぐさま、ラリアはゆっくりと起き上がる。カムラはラリアと異なり、座った状態での睡眠であり、眠りも浅く、熊の声で若干起きてしまっていた。


「聞いてください」

「何?」


オーダは火を消すと、事情を二人に話した。だが、寧ろそれによって二人の心配は無くなってしまった。


「なんだ、オーダもかわいいじゃないか。怖いものが幽霊なんてな」

「そうじゃないんですよ!確かにあそこに何かが!」


だがカムラは全く取り合わない。


「もう変わろうか?大丈夫それはオーダが幽霊の事を思い浮かべたから見えたように感じたんだよ。寧ろ熊の方が大事だ。そっちの方が警戒しなきゃな」


全く取り合わないカムラにオーダは頭を抱えるほか無かった。

読んで頂きありがとうございます!

オーダの苦手なものは幽霊だったんですねぇ…。というか御伽噺はどれもプロパガンダ臭いものばかり。どっちも嫌い合ってたんですな。

読んで頂いた方、是非評価、ブックマーク、感想のほどしていただけると励みになりますので、良かったらしていただけると嬉しいです!でも読んで頂いただけでも嬉しいので、また見かけたら読んでいってください!

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