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バフォメト

第五三話です

 こうして森林帯を抜けていく中で野太い犬の鳴き声の様なものが聞こえた。カムラは手元の剣を構える。


「敵か?」

「モンスター、ですね。熊の可能性があります」

「ヒグマか」

「その辺りでしょう。カムラ、強化魔法を。距離はそう遠くありません。向こうから来る可能性はほぼ間違いありません」


ラリアもそれに頷いた。熊はこちらを見た故に反応し、声を上げたのだ。幾度となく聞いた。故に容易く想像できた。


「この辺りは狭いな、戦い難いが」

「やらざるを得ないと思いますが」


茂みから足音。かなり速い。


「来た!」


オーダは頭部に目掛けて矢を放った。電撃魔法で覆った矢は熊の眼球に命中。その後熊の頭部に高圧の電流が流れ込み、そのまま熊は動かなくなった。


「死んだ…?」

「どうでしょう?」


オーダはクストースを引き抜き、近づく。若干であるが動いている。


「生きて…ますね」


オーダは熊の首元にクストースで突き刺した。それだけでは足りないと、少し抉り、引き抜いた。熊の動きは完全に止まった。


「なんだ俺の出番無かったな。熊の毛皮いるか?」


カムラはトルンガに聞いたが、トルンガは首を振る。


「いや、いらないさ。熊はこっちにも出るからな」

「それもそうか」


カムラは更にもう一つの事に気が付いた。


「そういやバグはここにはいないんだな」


洞窟内にはあれほどいたバグである。様々な場所に繁殖するとカムラは聞いていた。確かにブリトン島とは距離が離れているとはいえ、征州に跨って繁殖しているとばかり考えていた。


「ここは熊やハイウルフ、バフォメトが多いですからね。根本的にはさして強くないバグは食い荒らされてしまいます。無論いない事は無いですが、殺すのは避けておきましょう」

「わかった」


日も出れば中々周囲の景色もハッキリする。緑に覆われた森林はカリヨン森林帯とは違って乱雑、されど自然的な景色を与えた。カムラにとっては二度目の様な景色であるが、カムラは道を切り開くときは大鎌で村民と共に一気に伐採していた。これは毎月行われ、死神の鎌かという大きな鎌は低木の伐採を効率化していた。そんな事もあって、カムラは低木をただの剣で斬るのには慣れていなかったが、オーダから教唆されたコツを掴めば楽に出来る様になっていた。


「というか中央のベイドゴベスまでは?」

「この辺りの筈だけど?」

「先ほどの熊の死骸でバフォメトが近づけば好いのですが」

「バフォメトって肉食うのか?」

「知らなかったんですか?バフォメトは雑食ですよ」

「バグみたいな、か?」

「いえ、あそこまでなんでもではありませんね。新芽を好む事で知られています。ですが時に肉も食べます。バフォメトが何故忌避されたかしってますか?」


カムラは少し考えたが全くわからない。


「肉を食べるからですよ。山羊なのに鋭い犬歯を持ち、上下に歯を揃え、肉を捕食するバフォメトは悪魔に映ったんです」

「って事は異形だと思われたわけだ」

「そういう事ですね」


知らなかった豆知識であるがそれと同時に歯形が人間の様だという事も示していた。確かにそれは気持ちが悪いと彼は思った。


「俺たちにとっては自然信仰として異形で、神様は皆々理由があるんだからって気にしなかった。別にバフォメトであおろうと関係なかったのさ」

「元々は悪魔の名前だからな」


と四人が話していると一際身体の大きな山羊が現れた。目は正面を向き、角はより鋭く、何よりも口元から牙が見えている。慌てて四人は隠れ、様子を伺った。


「トルンガ、あれがバフォメトで間違いないか?」

「あぁ!」

「よし、ならどうする!」

「ここで仕留めよう!革と角だけ回収してあとは放置!」

「よし、任された!」


カムラは手元に魔力を込めた。火炎魔法を放ち、牽制するが、あろう事かバフォメトは風魔法でこれを無効化すると、雷撃を返した。ラリアはバフォメトに雷撃をあたえ、防いだところに火炎魔法、更には水撃魔法を加えた。バフォメトはこれを避けたが、カムラは逃すまいと突貫する。ラリアからの魔力援護も受け、更に加速していった。カムラが狙うのはただ一つ、バフォメトの首。バフォメトの正面に火炎を放ち、進路を妨害。胴に剣を突き刺すと腰から短剣を抜き、首に一撃をあたえた。だがバフォメトも死ぬわけにはいかない。自然治癒魔法をかけつつ、なんとか生き残ろうと模索する。カムラは胴に突き刺さった剣を抜き、足を斬り落とした。更にはその鳴いた瞬間にその歯を掴むと力を込め、折ってしまった。痛みに悶えるバフォメトは倒れ込み、カムラは角の回収の為に心臓があるであろう場所に目掛けて何度も突き刺した。四度目で血は大きく吹き出し、それによって魔力も見る見る失われ、バフォメトは息を絶えた。


「角と革は守れた…か?」


だが、横からの足音にカムラはその身を構え直した。


「敵か!」


運がなんと悪い事か。ハイウルフの群れが目の前にいたのである。

読んで頂きありがとうございます!

運が悪いですね…。という話を書いていたらまさか今日リアルでとんでもない事態も発覚したという…こんな事あるものですね。

読んで頂いた方、是非評価、ブックマーク、感想のほどしていただけると励みになりますので、良かったらしていただけると嬉しいです!でも読んで頂いただけでも嬉しいので、また見かけたら読んでいってください!

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