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空賊

第四八話です

 船が出港してから少し経ち、雲を足元に見下ろす程に高度が上がった頃である。一行はやっと一段落し本来の目的が遂行できるものだと安心感の下にあった。カムラは船体中央の客室で過ごし、何もない空を見晴らしていた。席は柔らかな羊毛と革で出来ており座り心地は上々であった。余りにも退屈だとも感じていたが。


「カムラ~」


ラリアの声が聞こえた。丁度良いとカムラはその方に身体を向ける。ラリアはどこから持ってきたのか五目の板とそれぞれ形作られた駒を持ってきた。


「…何それ」

「わかんない」


するとオーダが丁度二人の前を通りがかった。


「オーダ」

「はい?」

「何これ?」


カムラがその道具を差し出して聞いた。


「あぁ。チェスですよ」

「…?」

「卓上遊戯と言う奴の一つです。それぞれの駒には役職があって、ターン制。駒を動かして」


オーダが駒を取った。二つ。どちらも王冠の様な意匠を持っていた。だが黒白と色は分かれている。


「この王の駒が倒されれば勝ちです」

「…難しそうだな」

「実際難しいですよ」


オーダは駒をそっと机に戻した。ラリアは徐に駒を一つ手に取る。


「なんかの魔道具かとばかり」

「なわけないじゃないですか」

「オーダはやった事あるのか?」


カムラは聞いた。だがオーダはこれには首を振る。


「まぁ、やった事は。でもカムラさんは強いかどうかを聞きたいのでしょう?」


カムラは無言で頷いた。


「なら私は弱いです。ルールそのものが複雑ですし、上手くいかない事の方が多い。母によく苦戦していました」

「オーダはこういうのこそ得意だとばかり」

「私は寧ろ動き回る方が好きでした。嗚呼、だからかもしれませんね。令嬢と言う立場は私にはどうにも合わない」


ラリアはこれは納得と顔で示した。カムラは少し苦笑する。


「ならやはりオーダは強い。運動神経もいいってんだから」


汎用性は伊達じゃない、最初の自己紹介、それも冒険者としての自己紹介に嘘はないのだ。

一方、ラリアは窓向こうを見ていた。じっと目を凝らす。何か違和感を覚えていた。空の向こうに本来見えざるものがあるような気がしたのである。


「ねぇオーダ」


ラリアはオーダに何気なく質問した。


「はい?」

「この辺りって野生の空飛ぶ動物っている?」

「あんまり聞かないですね。この辺りでは。ドラゴンはまぁいるにはいますが」


これにカムラも聞く。


「野生のが?」

「えぇ。ですがそうはいませんよ。ラリアさんはどうしてそんな質問を?」

「だって向こうにドラゴンがいるから」

「え?」


その時である。船は突如として急旋回を始めた。光芒がその向こう側から飛翔し、船体を捉えんとしていた。表面に命中せども射程限界かオリハルコンの対魔力装甲に減衰させられた。だが衝撃は船体を駆け巡る。


「わわっ!な、なんだぁっ!?」


カムラが驚いているとトルンガが入ってきた。


「なんか来たぞ!」


カムラは窓に今一度目を向ける。そこにはフル装備の竜騎兵。だが家紋はない。寧ろ装備はバラバラであった。そして火炎、更には氷柱が飛翔し、船体の側方をやや掠った。


「空賊…!」


空賊。スクブスに立ち寄る少し前、空賊の為の武装の話をしていたかもしれない。その空賊。


「装甲は受け止めきれた!?」


すると艦内からは次々に銃を放つ音が聞こえた。ウォールガンである。然したかだか八挺のウォールガンでは竜騎兵を捉える事は困難であった。船は降下していく。その速度は凄まじい。竜騎兵の乗るドラゴンらは足に樽を掴んでいた。もう一頭は袋に七つもの樽を入れている。一行の乗るスループが降下するのに合わせ、次々に投下していった。雲海に突入するスループだが、嵐の中、その樽は次々に爆発した。


「今度はなんだ!?」


船体には次々に音が鳴った。


「空中爆弾だと思います!空中艦用の…武器で!破片で被害を与える事を目的にしているんです!」


一転、船体は浮き上がった。雲海の上に上がる。すると付近で炸裂した爆弾が、雲の上を弾き散らし、まるで海の様に雲は散った。速度を上げるが、竜騎兵の方が遥かに速く。船員たちがバタバタと動き出していた。口にパイプを咥え、明らかに大きなタンクを背負う。

ラリアは聞きたくなってしまった。


「何するの?」

「戦うんだよ!ここにいな、いいね!」


艦上部のカロネード砲を使う気でいたのだ。船体上部の敵にはカロネード砲しか対処法は無かったのである。船員が甲板に出ようとするなか、操縦につく船員が彼らを止めた。


「このまま艦を横倒しにして射角を作る!艦中央の砲は葡萄砲にしてくれ!だから甲板は使わない!いいな!」

「横倒しの状態で装填すんのか!?」

「違う!だから今やるんだ!」

「何分だ!」

「3分以内!」


船はそのまま進んでいく。敵との距離のどんどんと近づき、カムラ達のいる部屋の傍を竜騎兵が飛んだ。だが銃声と共に落ちていく。船員の放つウォールガンであった。


読んで頂きありがとうございます!

やりたかった展開その弐ですよ!やった嬉しい!というか大体此奴らが何者かわかるような…わからない?なら次回も読みにいらしてくださいね!その他、是非評価、ブックマーク、感想のほどしていただけると励みになりますので、良かったらしていただけたら!ではまた!

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