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乱闘

第四五話です

「こんにちは」


 カムラは軽く会釈し、店内に入った。店内は夜とは異なり落ち着いていた。とはいえそれだけではない。やや店員と客の距離感が近い様に感じられた。すると奥から店長らしき男が現れる。


「シニッカですか?」


そういう男にカムラは頭を縦に振った。


「ヤスヒデ=カムラです」

「昨晩の方。こうして来てくれたなら良かった。シニッカが初めて会った人の指名を受けるのは珍しいんですよ?そもそも初めてですけど」

「は、はぁ」


店長らしき男はそう言う。いったい何の事か釈然としないカムラだが、一先ずも奥へと進んだ。階段を登り、二階へ。通路は狭く、酷くアロマの匂いがする。カムラの苦手とする香りであった。店長は部屋の一つを開けた。すると確かにそこにはシニッカがいた。


「あ、本当に来てくださったんですね」

「んまぁ」


店長らしき男はそのまま下がっていく。


「さて、因みに何でシニッカさんはここにいるんですか?」

「え?」

「え、じゃなくて。お昼ご飯食べに来たんすよ」


微妙な空気が流れる。カムラは本能的に不味い事を言ったと察した。


「わかってない…?」

「もしかして、指名ってそういう意味ですか?」

「あ、あー。いえ、その私も慣れないんでこういうの…」


シニッカは顔を赤らめる。水商売をするのに慣れないとは一体どういう意味なのか。カムラはあらゆる点が気になって仕様がなかった。では一体どのような腹積もりで仕事をしているのだろうか。


「結構キッパリ聞きますけど」

「は、はい…」


俯き気味のシニッカにカムラは意を決して聞いた。


「恥ずかしいなら何故にこの仕事を…」

「その…特に深い理由は無いんですけど…家が貧乏で…」

「大丈夫、それは深い理由にはなってるから」


***


 カムラは結局無難にバゲットとロースト肉、野菜、そして果実飲料を頼んで終わりにした。持ってきますね、と一言言って駆け出すが入り口の段差で躓きそうになる等、その姿は普段のラリアよりも子供っぽい。走る姿も腰がくねって安定性も無い。ラリアの走り方が野生児そのもの、男と見分けがつかない点から見ても、決してしっかりしているとも言えないであろう。

カムラがジッと二階で待っていると、下から声が上がった。慌ててカムラは下に降りる。すると男たちが客を追い出し、席に深く腰掛けているのが見えた。耳を立てる。


「今からこの人数で奥に通してもらいたい」

「い、いえ今日はもう一杯でして…」

「

(なんて定番の流れ!となるとここで颯爽と登場する英雄様がいるってわけだ!)


と考え、カムラは動かないでいるがどうも事態は動かない。其の上、店長はカムラに気が付いた。


「あ、カムラさん!」


男たちが一斉に階段を見る。


「カムラぁ?どっかで聞いたような名前だなぁ」


カムラは仕方なくその前に出た。今来たように振舞いつつ、流したかったのである。


「はい?」

「キメラを倒したってお前か?」

「一応らしいですね」


男達は冒険者であるらしい。カムラに何分謂いたい事がありそうである。その時、店奥から女性が現れた。


「あ、来た」


シニッカである。


「シニッカさんか、これは一体…」


だが男達はそんな細やかな助け船等意に介さない。寧ろより空気は悪くなる。


「お話があるなら先ず座らせてくれませんか。立って話すのもなんでしょう」


カムラの提案に男達はカムラを邪魔する足をどけた。だが今度はシニッカがどうもその気を持っていない様である。


「私もちょっと…」

「え、そ、そんな」

「カムラさんよ。逃げようって言うのかい?」

「逃げる?何に?あれか、どうやってキメラを倒したのか聞きたいんですか?」


この言葉がその冒険者らの堪忍袋にトドメを刺した。


「ここにいる大半が冒険者級何級か知ってるかい?」

「さ、さぁ」

「三級だぜ。だがな、サラマンダーを倒そうが、クガヌラー、ピュトンと戦ったところで小さな紙面に載るのがいいとこ、それも十数年やって、だ。お前はどうだ。違うよなぁ。キメラ一匹倒した程度でここに来るなんざ先輩への敬意が足りないんじゃないかって思うんだが、どうだ?」


これにはカムラも少し怒りが沸いた。


「嫉妬というのならそう言えばいいぞ。それとも何か?認められないか」

「え、えっと…その、喧嘩とかですか?」


だが一度沸き上がった対立は簡単には冷めやらぬ。


「今の言葉は喧嘩売ったと?」

「まだわからないさ」

「言い方ってのがあるだろう?」

「そっちはどうなんだよ」


カムラは踏み出そうとした足を一歩下げた。男の一人が立ち上がる。背は高い。カムラよりもガタイも良く見えた。


「言いたいことあるなら言ってくれよなぁ?」


男は無言だ。


「どうしろ、と?俺に何を求めるんだ。それを言わなきゃわからない」

「言わなきゃわからない?なぁに、ここから出て行けと言うんだ。何でテメェがVIP待遇なんだよ」


VIP待遇。確かにカムラに大男がそう言った。当然カムラはそんな事等全く知らなかった。カムラは思わずシニッカを見ようとするが、大男はカムラの頭を鷲掴みにすると、


「どこを見てるんだ」


と威嚇した。

これが、火蓋を切った瞬間だった。カムラは無言で男の眼球を殴った。傍にあったワイングラスを叩き割るとそれを突き刺そうとする。大男は体格差を利用してカムラに体当たりし、カムラの肉体を弾き飛ばす。店の外に身体が吹き飛び、姿勢を変えるが、それととも更に真正面から来た椅子を避けねばならない。これをカムラは避けるがその場所に大男はいた。大男はカムラに馬乗りになった。拳を振り上げたが。カムラが決死で太ももに割れたワイングラスを突き刺した。痛みに悶え、より怒るが、その正面から来た拳をカムラは避けられずに面と食らう。鼻から血は吹いた。だがここに店員が男は止めようとし、男のバランスがやや崩れた。その瞬間にカムラは抜け出すと、男の顔面に三度殴りこむと首に蹴りを入れた。砕けた椅子を手に持つ。大男も何とか立ち上がり、店員を突き飛ばすと、手元から武器を取り出す。その形状はスティレット。大男が突撃するのをカムラは頭頂部から椅子を投げ、更に腹部に蹴り、股関節に一撃。スティレットを奪い取ると太股に三度刺し、更に指にも一撃。左手首にも一刺しし、そして二度目にその頭部を蹴りこんだ。だが大男は止まらない。カムラを再度投げ飛ばすと、その拳を上げた。だが、その腕を止めたのはシニッカだった。


「やめて!」


二人の動きが止まる。


「どうして手を振り上げたの、貴方は何を目的にしたの!彼の功績は彼が望んだものじゃないとしたら!?それは考えた事があったの!カムラさんもです!店長が怪我したわ、反撃じゃなくて言葉を、どうしてもの時に反撃すべきだった!」


シニッカは大男を見る。だがその声は震えていた。


「店長さん、この人は出禁ですか?」

「……そうだね。お断りしよう」

「ですって。出ていって!今すぐに!」


カムラはそれを聞いてシニッカに頭を下げた。


「…すまなかった」


そうして立ち去ろうとしたが、その腕をシニッカは掴んだ。


「貴方には言ってない」


シニッカは震えていた余程怖かったのだろうとカムラは推測した。だが同時に啖呵を切れるだけ、心は強靭なれど身体は伴わずとも評していた。


「いや、だが…」


それには店長なる男が付け加えた。


「どちらにせよあの客は問題を起こした…よく見ればさ、いい機会だったんだよ」


カムラはシニッカに向き直った。


「意外にも気がお強い…」


カムラの本心であった。


読んで頂きありがとうございます!

カムラいっつも乱闘してるような気がしますね。トラブルメーカーでしょうこれは。カムラの性格を元に話を作るとどうもこういう展開が書き易い...。これからこのキャラでいきましょう...。

読んで頂いた方、是非評価、ブックマーク、感想のほどしていただけると励みになりますので、良かったらしていただけると嬉しいです!でも読んで頂いただけでも嬉しいので、また見かけたら読んでいってください!

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