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ランチの約束

第四三話です。

 オーダがカムラ達の元に帰ってきた。カムラはそれを快く迎え入れた。それは仲間への思い入れだけではなく、母親と妹の、(無論これは善意ではあるが)とはいえど結果的な茶番に付き合わされたオーダを思えばの事であったのは言うまでもない。尚そんな事は露にも思わないオーダには不自然にも寄り添うカムラとラリアに違和感を禁じ得なかったが。


「おかえりオーダ」

「ありがとうございます。お母様がからの許しを得ました。これでまた皆さんと肩を並べて戦えます」

「いや、自分としてもオーダ無しにはこのパーティーは回らないと思ってるのさ。だからありがとうな。この二人、まだまだ未熟だからさ」

「いえいえ、お二人の手助けになれば幸いと私も思っています」


カムラの取り繕った素直ではない建前にもオーダは優しく返答してみせる。これはこれで彼等らしいやり取りなのかも知れない。


「なぁ、オーダ」

「はい?」

「もう会ってから一ヶ月近くになるだろう?だからさ呼び捨てで呼んでくれないか?」


オーダは少し照れ臭そうにしながらもカムラを呼び捨てにした。


「か、カムラ…」

「ラリアも、トルンガもだ」

「ラリア、トルンガ」

「そうだ」

「少し照れ臭いですね」


***


 翌日、カムラは先に起きて街を探索していた。実を言うと昨晩行けなかった店に申し訳が無いと考えていた。故にカムラは店を閉めている途中であろう昨晩の店に立ち寄ったのだ。正直店舗の名前など憶えていない、もっと言えばそもそも聞いてさえいなかったが位置だけは記憶にあったのである。そうして歩いているとその店が見えてきた。


「 Lebensborn(生命の泉)、か」


レーベンスボルンと訳された娼館。飲食店も兼ねると聞くがどの程度なのか。近づくと声が聞こえた。若そうな声である。カムラは頭だけを角から出すとそれは白い肌の奴隷ではない、金髪に青い目のノーマルなエルフであった。


「こんに…いや、おはようございます」


エルフはカムラに気づくと手に持った籠を持ったまま会釈した。


「おはようございます。いかがされました?」

「あ、いや昨晩来れなかったもので。申し訳が立たず。今晩こそ来ようと謝罪しに」

「店長をお呼びしましょうか?」

「あ、別にその方に約束した訳ではないんですよ」

「…取り敢えず、中に入られますか?」


カムラはこれには少し驚いた。閉店の準備とばかりに思っていたからだ」


「閉店なのに、いいですよ」

「いえいえ、ランチもやってるんですよ」

「そうなんですか。そりゃ便利だ」


エルフはカムラの姿を嘗め回すように見ると、一転、怪訝な顔をする。


「冒険者の方ですか?」

「はい?え、えぇまぁ」

「付き纏いとかしてます?」

「な、なんでです?」

「いや冒険者の方ってそういう方多いから…」


何という事だろうか。どうやら冒険者にはストーカーが多いという。聞いたことも無い。だがよく考えてみればそのような話は度々聞く。カムラ自身は他人事だと切り捨てていたがなんと冒険者は身勝手な者が多いのだろうか。これは許されざる事に違いない。


(まぁ俺も冒険者だし。似た事をした事が無いと言えばそんな事はないから一概には言えないが)


等と自分に言い聞かせるカムラだが、彼自身に自覚はないが、実際にはカムラにも似た事をする節が無いとは言えない。とは言ってもその対象は悉く男であるが。


「まぁお客さんだし…。お名前は?」

「ヤスヒデ=カムラです」

「私はシニッカ=アイラクシネンです。よろしく」

「お、東エルフ出身ですか」

「なんでわかったんですかもしかしてストーカーですか申し訳ないですけど」

「待て待て。違いますから」


シニッカは笑みをこぼした。


「冗談ですよ。わかりやすいですよね」

「怖かった~。冗談でもやめてくださいね」

「ごめんなさい。んじゃ、来てもらったら私の名前を出して貰ったら店長が通してくれますよ」

「通し…?まぁいいや。わかりました。それじゃまた昼に会いましょう」

「はい」


カムラは一応店長がいないか聞いたものの既に帰ってしまっていた。昼は後退らしく、シニッカは日中の担当であるらしい事を教えて貰った。値段も過度に高くなく。平均して30デナース、3000ペルニヒ程度であった。何よりピゲットがないのが驚きであった。聞けばピゲットはサッカバスでは飲まれないのだと言う。


(中々面白い事を聞いた...)


カムラは帰路につく。時刻は既に七時を回っていた。このままではオーダ、並びに門番の兵士達が黙っていないに違いあるまい。足早に帰るが、周囲では既に幾人かの人が店仕舞いも終えて帰っている。昨日のスクブスと同じ姿を見るとは少しとて想定しなかったが、それでもレーベンスボルンの様な店があるのだから自分が思っているよりも日中は店が開いているのかも知れない。もう少しいれば良さもわかるがしかしスクブスの本質にはカムラの性が全く合わないのも亦事実であった。

読んで頂きありがとうございます!

新しいネームドですね。どうも文化は違いそう。どんなキャラなんでしょう?

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