三人は語って
第四一話です。
カムラ、ラリア、トルンガの三人はサッカバス邸に泊まる事になったのだが、屋敷は見れば見るほど広く、武具庫や、宮中の業務のエリアに入る事だけは禁じられた。無論そこには今も尚、仕事をする者達が多く、邪魔をしない為にもカムラもそこに入る気は更々無かった。備え付けられたベッドはイニシュラのそれと比べてもかなり良く、東洋から取り寄せた綿製の掛布団に、柔らかなベッドであった。
「凄い、けど。なんか身体が宙に浮いてるみたいで落ち着かない」
ラリアがそう零したが、カムラもこれには同感であった。
「気持ちいいけどな。落ち着かん」
「それに部屋に一つ水道があるんだって。これも不思議」
「それについてだがな。トルンガ曰くはトルンガの地元もそうだったらしいぞ。どうもうちの国には水が少ないらしい」
「あ、そうなんだ」
「しかも村でも水は豊富なんだそうで。だから割と俺たちの村と大陸側じゃ違うのかもしれん」
「つまり?」
「一概に断じるのは時期尚早という事さ」
ラリアはカムラの言葉になんども相槌を打った。
「そういえばオーダは?」
「オーダなら其の内…」
その時、ドアが開いた。現れたのはオーダ一世の様な踊り子にも似た、しかし黒を基調とする格好に身を包んだオーダであった。
「何その格好」
「民族衣装です...。何も、何も言わないでください」
オーダの並々ならぬ表情に二人は
「「お、おう…」」
と返す他無かった。その格好はフェイスベールこそ無いものの、オーダの色白な肌を外に見せ、下着等存在しないとまで言える恰好、オーダの肉体の線をはっきり見せてしまう。カムラはオーダの肉付きの良い身体をそう見る事は無いと感心するも、同時に動きやすさや伝承に近い見た目はこれか、とも納得した。オーダは顔を赤らめ、もう見ないでくれ、とも言いたそうであるが、そういう訳にもいかない。
「サキュバスというのは伝承通りの格好をするというのが定めなのです...。殊私の家、アマデウス家はスクブス民族の部族長でもありますから。ですが…あまりにも…」
「露出が多いって事?」
「言わないでくださいと言ったでしょうに!」
ラリアはそんなオーダをまぁまぁ、と声をかけ、更にカムラにも聞いた。
「カムラはどう思う?」
「俺に聞くな。それとも答えが聞きたいか?」
「いえ…結構です…」
「えー!聞かないの?」
ラリアが不満気に言うがカムラはこれには呆れて返す。溜息一つ吐き、腕を組んだまま口を開いた。
「意気地なしで結構だがな。正直なんとなく想像はしていたから」
「男なのに?」
「そういうお前は男みたいな感性だなおい」
「悪い?」
「いや話しやすいから別に」
「そりゃよかった」
こうして話すラリアとカムラにオーダはか細く声を出した。
「あの、二人の世界から帰ってきて貰えると」
「おっと失礼。んで、オーダはいつまでその格好なんだ」
「私も好きでこの格好してるわけじゃないんですよ」
そうするとその背後からもう一人が現れた。
「お姉様!」
先程の少女、基アデリンデ嬢である。彼女もその民族衣装とやらに身を包んで登場した。短い髪にその見た目、だがこう見ると確かに女性である。
「どうでしょう?お姉様もお母様に褒められまして?」
「アデリンデ…。ん?アデリンデ、後ろの裾が仕舞えていませんよ。直しなさい。その様子じゃお母様に見せていないでしょう?」
「久しぶりに帰ってきたと思いましたのに。お姉様は厳しいですわ。でも流石です。完璧に出来てしまわれるなんて」
「お世辞は結構。急ぎなさい」
そう言って部屋からアデリンデを出ていかせるオーダ。カムラはここで一つ気になる点が出てきた。
「その格好、なんで着替えたんだ」
「私は、もう少し貴方達といたいのです。ラリアさんへの恩、カムラさんへの恩。返せていません。ですからその話を、と思っていたのですがお母様がこの格好を見せてきなさい、と」
オーダは暫く出ますと言い、部屋を後にした。一体なんだ、と二人は考えていたが数分後にはオーダは二人の部屋に戻ってきた。その姿は一転変わってロングドレス。
貴族らしい姿である。
「皆さんとはこの姿で過ごしましょうか」
オーダは二人の部屋のソファに腰掛け、カムラとラリアもそこに座らせた。
そして開口一番、謝罪をした。
「すいませんでした」
「きゅ、急にどうしたんだ?」
カムラは思わず聞く。先程までその様な空気ではなかったないか。
「さ、さっきはあまりそういう空気ではありませんでしたし、着替えたのはこうしてきちんと謝罪したかったからです」
「……」
「私のせいで皆さんにご迷惑をかけている…これは私が原因です。自分がもっと出自を…」
「その謝罪はした筈。別に求めてない」
ラリアはキッパリと言った。
「だから、オーダは私達と一緒にもう少し羽、伸ばしたいんでしょ?」
「……」
「ならそう言えばいい。許してくれそうじゃない?オーダのお母さんならさ。だから言ってみようよ。それでダメなら、また手伝うから。どう?」
オーダは俯き、そして顔を上げた。
「やってみます」
その返事にカムラはサムズアップを返した。
読んで頂きありがとうございます!
サキュバスらしいのか、なんなのか…。でも生真面目というのもそれはそれですよね。ラリアの台詞は最近どっかで聞いた事もあるような。
読んで頂いた方、是非評価、ブックマーク、感想のほどしていただけると励みになりますので、良かったらしていただけると嬉しいです!でも読んで頂いただけでも嬉しいので、また見かけたら読んでいってください!




