空中船に乗る事は
第三五話です。
一行はそうしてラントハーフェンに向かった。ラントハーフェンはハールダムとたった直線距離で3km程度しか無い街である。ラントハーフェンまでは鉄道馬車がある。またアイヴァースの通貨は使う事が出来ない。ラリアは事前に調べており、ハールダム行政所にてデナースを征州大陸側で多く使われるペルニヒに交換した。持っていた27アーレスはペルニヒにすると270000ペルニヒであった。
「なぁラリア」
「ん?」
「それで足りるのか?」
「ギリギリかもね。でもほら、バフォメトを狩って、その角売れば良いでしょう?」
「机上の空論って知ってるか?」
カムラはラリアにそれは難しいのでは、と言うものの、ラリアにとっては既に腹で決まった事である。案を出したのはカムラだが、船便を予想していた故に地味に不足するのではと考えたのである。
「取り敢えず行ってみようよ。そっから考えたらいいじゃない」
「…そうかぁ」
一行は結局そうしてラントハーフェンに向かった。時刻は十一時頃の進発であった為にそれまでは周辺の探索をしていった。建物はロンディニアの市街の建築物に似通っていたが、やはり文化が違うか屋根は三角屋根であった。また窓ガラスはより多く、服はガリアの文化もあるのか服は庶民向けの服さえも小綺麗である。寧ろ冒険者らしい格好に身を包む彼らの方が周囲に浮いて見えた。だが、これでも技術力だけでは圧倒的にアイヴァースの方が上である。これはアスチュート、その付近のサウスアスチュートに住む四人にとってこの事実は何よりも都市に対するアイヴァースとニーダーランデの違いを示していると言えた。
***
スカイキャラック。空中船の中の民間用船である。速度は最高速度でも時速30km程度である。然し高度の制約を持たない故に高い乍らもどの移動手段よりもドラゴンを除いて何よりも速く移動できた。十一時に一行は船に乗った。一行にとって空中船もまた初めて乗る体験であった。滅多に空中船自体乗れる事は無いものである。空中船というと高級な移動手段ある、が、オーダは乗ったことがあった。
「オーダはこれに乗るのは初めてなの!?」
「え、えぇ…まぁ…」
オーダはそう答え難そうに返す。ラリアは怪しそうに眼を細めた。
「なんか…」
「……」
オーダは後ろめたそうに顔を背け、そして一瞬静かになった。
「まぁ、いっか」
ラリアはあっけなく追及を止めてしまった。
「答えなくていいよ。言いたくないんだもんね。でもオーダならいつか答えてくれそう。どっかの誰かと違って」
「誰の事だ?」
「さぁね」
カムラに一瞬目を向けるがカムラは何も知らないとばかりに返した為にラリアはカムラの追求は無駄だと察してしまった。
「というか空中船って凄いな」
カムラはそう言う。船内は広く、自衛用のウォールガンや旋回砲が数基あるのみである。だがそれでも恐らくは十分すぎる兵装であろう。空賊の大半はグリフォン、大きな空賊ではドラゴンであるが、軍と異なりドラゴンの高速飛行を耐えるだけの装備が無い彼らはその強みの殆どを活かす事が出来ずそれ故に空中船は軽い装備でも充分であった。
船内は二段ベッドが基本であるようで、客室が七つあった。二段ベッドであっても、充分に立派な部屋である。殊海上船舶の乗り心地と比べれば、断然空中船の方が良い。無論、嵐にあった時は海上船舶よりも脆く、また脱出という手がない故、墜落はそれ即ち死を意味した。ただ、平時に限定するなら、格別であるのだ。ラリアには空を飛ぶ感覚が非常に新鮮であったが、同じ飛ぶでも性質は違うが、モンスターに弾かれる時の浮遊感よりも断然良かった。
「食事はどんな感じなんだ?」
「ここの夕食は十九時ですね。ただそんな豪勢なものではありませんよ?ワインとパン、ローストハムです」
「そか、ま、慣れたもんだが」
「そう?私は物足りないなぁ」
「村育ちもあっという間に気触れるのな」
「悪い?」
「わからんでもない」
「ほらぁ」
到着は明日七時であった。
***
翌朝、やや曇空の空から降下しスクブスに一隻の船が降下した。空中船の停泊地エーテルシュタットに降下し、乗客は降りていくが、そこに乗っていたのはラリアら一行である。
だが、オーダは不自然にもローブを纏い、フードを深く被っていた。
「なぁ、なんでオーダそんな格好してんの?」
「………」
オーダは答えない。どうも話しかけるな、と目で言っている。
「話かけないでおく?」
「うん」
「ねぇ、名前も無し?」
オーダは無言で頷く。
「仮名でも考えるか。そうだな、
うーんとだな」
カムラ手を叩いた。何かを思いついた様だ。
「エウロぺ。これからはそう呼ぶから」
オーダは頷いて了承する。
「何その名前。変な名前」
「気にするな。それっぽいだろ?」
検問所の兵士は皆角を持つ。黄色の目は皆々インキュバスであろう。
カムラのイメージとは違う、兵士は誰も銃を持ち、または槍を持つ。重武装だ。
「エウロペは後ろいててくれ。トルンガ、検問所を頼んだ」
一行はそうして検問所を通る。その先こそ、スクブス。サッカバス伯国。
読んで頂きありがとうございます!
今日で三話分投稿するなんて思ってませんでした。今日は筆がよく動きました、いやとても良かった。然も初めて一日100PV超えるなんて…。これがまぐれにならない様頑張ります!
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