ロンディニア橋
第三一話です
ロンディニアの街を歩く一行の目に飛び込んで来たのはブリトン王宮である。ブリトン公の王宮ではあるが、ブリトン公はアイヴァース連合の王位に連なる爵位故に、アイヴァース王の宮殿でもあった。とはいえ、カムラやラリアにとってより驚く事はそんな宮殿の壁、その直ぐ側に民家が立ち並ぶ事であった。
だがそんな事など容易に超える程に衝撃的な光景が彼らを待っていた。
「これが…タメシシス川!?」
運河であった。複数の船舶が川へ入り、護岸の岸壁に停留している。その種類は数多に及ぶ。数多いのはガレーや、自力で進むカラベルであった。またボートも幾らか見える。だが下流にあるのはそれ以上。
ロンディニア橋であった。ロンディニア橋は確認される中では唯一の橋の上に建物がある橋である。タメシシス川を横断する橋であるが、人口増加するロンディニアに於いて、その民家の場所を増設するにあたり、より効率的な土地運用の為、橋の上に建造物が設置されたのである。それ故、水車式の自動昇降機までもが設置され、これが非常に画期的であった。計画は1532年からであり、その後数回の改築がされ、最後の改築は1752年となる。その際、改築に伴い昇降機なる装置も増築され、現在の威容に至る。突貫的な外観とはいえ、この為にロンディニア橋そのものも鉄製支柱を設けた他、赤や青色の煉瓦造りと斜傾屋根はその真実に似合わず豪華にも見える。
「入ってみます?狭いですけど」
「あぁ当然!気になるじゃないか!」
ロンディニア橋に近づくにつれて周囲はより一層騒がしさを増していく。皆橋に向かっていくのだ。無論橋に向かうのは対岸のロンディニアに向かう人々、ロンディニア橋そのものに用事がある者と様々である。河岸の道路を四人は進むが、そこでさえ、馬車は通る、馬も通る。タメシシス川そのものにも、小型船舶がロンディニア市街を通る為に数多く通行していた。ロンディニアの中心故に人も多く、逸れる様な事態もカムラは考えていた。
「ラリア、手ェ貸せ」
「え?」
カムラはラリアの手を取る。
「ここいらじゃ誘拐も多いに違いあるまい。…と、思っている。だから、逸れない様にせにゃいかん」
「い、いやいや、トルンガも背ひっくいじゃん」
トルンガが反応する。
「何!?言ってろ!ここぞとばかりにけなしやがって」
だが、カムラも端的な説明の為とはいえ、トルンガに追撃を与えてしまう。
「トルンガは男だし、ゴブリンだし、おっさんだから」
「この、言わせておけば!言ったな!」
「落ち着けトルンガ。男のお前なら払いのけるだろ?」
「…そういう事なら認めるが」
「オーダは?」
「背がでっかいからな。わかりやすい」
カムラはラリアの手を握ると、そのまま再び足を踏み出す。
「安心しろ、手を繋ぐのは今回っきりだ」
***
ロンディニア橋の内部へ入っていく。トンネルにも見える橋だが、向かいから吹き抜ける風が強く感じられた。ロンディニア橋の入り口左側方に、入り口はあった。どうも並んでいるらしく、右側方の入り口が空いていた為に、そこから中へと入っていった。待つこと大凡にして15分余。四人の番が回ってくる。昇降機がギアの停止機で止まる。昇降機の内部の停止機は昇降機に外装が無いからか、よく見る事が出来た。昇降機そのものもかなり大きく、人が詰めて十人は入りそうである。ある程度上がり、昇降機が止まる。1階を示している。その先が巨大な建物内であった。
「おぉ、これが、か」
商店街が如く店が立ち並ぶ。本屋、酒、魚介、香辛料、魔石、砂金、銀。凡ゆる物が一様に売られていた。そしてそれを見る客らも数多く、通路に人は犇いている。この光景に驚くカムラであるが、ラリアがカムラの手を引き、指を示す。
「宝石だよ!エメラルド!ダイヤ!」
「バカバカ、幾らすると思ってんだ。俺らなんかじゃ雲の上の存在だぞ」
「見るくらいだよ!」
「ん…まぁ、なら許そう」
「ほれ見ろ、カムラだって気になってんじゃん!」
カムラは反論しなかった。これはある意味で彼もまた気になるという点を否定しない事を暗に示していた。
「急ぐな急ぐな。そういや、宝石って武器には使わねぇよな」
「そうだな。宝石はなんの効果もねぇ。アンタに作ってやった装備が体現してるぜ?俺の店に宝石はあったか?」
「確かに。無かったな。装飾でも、か?」
「他の鍛冶はやってるかも知れねぇが、少なくとも俺の趣味じゃねぇ。それともアンタもそういう成金趣味か?」
「人聞きの悪い。タダの興味本位、それはダメか?」
「ダメじゃねぇさ。装飾ならオリハルコンだな。劣化し難く、腐らない」
「成程ねぇ。」
トルンガとそんな話をする間に、ラリアはその宝石らを見ていた。
「いつか欲しいなぁ」
「なら試していくかい?」
宝石屋の店主がそう言った。このままではラリアがとても動く気はしない。それ故にカムラもそれくらいならと、返そうとして、トルンガが止めた。
「いや結構だ。気にしないでくれ。ほらお前ら、行くぞ」
トルンガはそのまま三人をその店から引き離した。
「何すんだよ」
「知らんのか?知らんか。ああいうのはな、ああやって試させるが、それはとんでもなく脆かったりする。んで、壊したら、難癖付けて買わせるって手合いだぜ」
カムラは成程、と納得しかけ、ハッとする。
「どうしたのカムラ」
「もしかして、騙された?」
「…ほっとけ」
怖い、と二人は思った。このトルンガが騙されたのだ、自分たちもそうなる気がしてならなかったのである。
読んで頂きありがとうございます!
ロンディニア橋、良さそうですね。元ネタわかる人はいるかな?とはいえあれとはちょっと違いますし、発展してますけどね。もうちょっとだけ旅しますけれど、温かい目で見ていただけると嬉しいです。
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