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近衛騎士団の装備たるや

第二六話です


 キメラの一件から五日経ち、本格的な復旧作業が漸く始まった。そしてこれに際し、資源輸送として艦隊が停泊しに来たわけであるが、当然誰しも上空に目をやっていた。昼間だというにも関わらず暗い影を落としている。悪い予兆か、否。威光である。上空に駐留されるその巨躯はアイヴァース王立空中艦隊の主力艦、アドミラル級空中一等戦列艦であった。


「でっか…」

「主力艦ですからね。ただ…」

「ただ?」


オーダが言葉を一瞬止め、改めて口を開いた。


「艦尾楼を見ていました。見てください。紋章があるでしょう?三番艦デュークじゃないでしょうか。少し前に、と言ってもお二人が来る前ですけど、来たんですよ」


オーダはそう言う。然し二人はその威容に圧倒されてしまっていた。空中スループやフリゲートくらいなら見る事もあるが、全長70m超の艦影はそうお目にかかれるものではないのである。

外見は衝角が出っ張った艦首、帆の無い上部魚の鰭にも見える艦下部の6枚の揺らめくバインダー、して水上ガレオンの意匠を残す艦尾楼、その下部にある皿の様な四基の推進器。何より、外見から判別はし得ないまでも、噂に聞く内蔵された魔力(エーテル)炉。巨大艦の具現化そのものと言って過言ではない。

更にこの後は近衛騎士団によるサウスアスチュートへの激励という何とも言い難い催しも行われた。大多数の冒険者にとってみればそれよりも優先したかったのは復旧作業であるが、相当な大事件であったと中央は認識しているようであり、それ故に近衛騎士団もいた訳である。

騎士団の騎兵らが街を馬に跨って行くのをカムラは見る。一際目を引くのはその武装。ランスかとも思ったが、一般的に知られるランスとは明らかに形状の違う形をしていた。ランスに通常刃は無い。円錐形であり。刺突専用の兵装である。だが、近衛騎兵が持つランスらしきソレは寧ろ大剣であった。分厚く、刃幅は20㎝はあるだろうか。厚さは1㎝超えるかという程。刃渡りは150㎝か。であれば持ち手は70㎝近くにも見える。持ち手には僅かにカットラスのガードの様な装甲が付いている。無論カットラスとは違い、手元全ては覆っていない。縦8㎝程である。


「なんだあの武器」


カムラは異様な、威容の武器を見て思わず呟いた。騎士に聞こえたのだろう、寧ろ胸を張ってより見せつける様に持ち直した。そしてその言葉はオーダにも聞こえた。


「あれは剣騎槍と言います」

「剣騎槍?」

「騎兵様に作られた専用武器。とはいってもアイヴァース連合王国としての近衛騎士団しか運用していない特殊な武器です」

「なんであんな?」

「威力が出るからですよ。それに突撃の勢いを殺し難い。こっちの方が重視されていますね」


剣騎槍は騎槍に代わって作られた武器であった。通常騎槍では一度貫くと引き抜くか捨てねばならず、突撃の威力が低下する恐れがあった。そこでこの槍の部分を剣にする事で、刺し貫いた後、そのまま斬り裂いていく事で馬の勢いを殺さないようにという発想のもとに生まれた。刃の部分はかなり重く。刺突時に折れないように厚さも平均的な剣を遥かに上回る厚さとなる。肉厚な剣は本来斬れ味が低下するが刃そのものの質量で強引に鎧ごと破断させる事を可能にしている。


「冒険者には売らないのか?

いや、勿論わかってはいるさ、あんなのは振り回すには重いし、動きも遅くなるだろうし。だがな?モンスターども相手ともなれば別だろう?倒すという点に於いては直線的なあいつらを抑えるのに丁度いいし?どうなんだそこんとこは」

「いい疑問だと思いますが、理由にはまず一つに素材があるでしょう。アダマントミスラル合金ですから非常に高価となります。無論、鉄にすればともなりますが、そうであったとて重いです。また、そこまでやるならばツヴァイヘンダ―で充分という事になります。それでアダマントミスラル合金にすれば同じ性能出せますしね」

「ん?となると今度は何故ツヴァイヘンダーを使わないんだ?」

「突撃に向いていないからですね。ツヴァイヘンダーは白兵戦用です。あの大きさではありますが振り回して戦う事を意識されています。剣騎槍は違います。質量攻撃に近い。用途がかなり違うんです。何より、あの武器は軍用です。…色々理由を述べましたがこれが大きいですね。軍用なので我々が持つとなるとかなり厳しい審査が必要です」

「審査?聞いたことも無いぞ。武器を持つのに審査がいるのか!?」

「最近はそういう流れも多いんですよ」


その奥からも更に行進する一団が現れた。上半身と脛の装甲を着ており、銃を肩にかけて行進していく。バヨネットを着剣し、腰には火薬と弾を纏めている弾薬袋を幾つも下げ、腰には刃渡り40㎝程度の剣を帯剣し、近接戦などはなから考えていないという事をありありと示していた。


「あれが歩兵か…。槍を持った歩兵は廃れたってところか」

「そうですね…」


行進の列はある程度長く、途中で道を通してはもらえたが、その数が戦列として圧倒的な暴力になる事は想像に容易かった。

こんにちは!読んで頂きありがとうございます!

十万字を超えましたが、終わるという話はないでしょう!でも今回はかなり説明回になっちゃいましたね。ではまた今晩。

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