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事件の後

第二五話です

 キメラであった砂らしきそれらは後日に軍が回収した。それが何であるかというその真実の仔細はカムラ含め冒険者一同各位にはその一切が公表される事は終ぞ無かった。一方でこの対応に不満がない冒険者らではないが、軍と冒険者らでは、戦闘のプロフェッショナルとアマチュアで天地の差があった。キメラと比すれば無論キメラの方が遥かに強いといえ、結局のところ実力で軍、殊に騎士団の戦闘力、及びその技術で卓越する実力に大きく劣り、最終的な敗北を期する点で、詮無き事と知っていた。それ故に冒険者らは軍の行動に何一つと文句は付けられなかった。更に付け加えるならば、キメラによって北区と東区は大きく損害を被っており、これの復旧の方が優先されるべきであった点もある。カムラは今回の戦闘でキメラを倒した事で、国王が授ける剣付赤竜勲章と、1500アーレスと80デナースが支払われた。カムラとしてはそもそも、キメラは一人でに崩れた様にしか見えなかったのであり、その上この大金であったが、口封じであろう事は容易に想像が付いた。冒険者各位にもそれぞれに100アーレスずつ支払われた。これにはカムラも含まれていた。カムラはそれもあってか受け取る気になれず、今回参加した50名の冒険者で5500アーレス、110アーレスで山分けし、さらに個々は50アーレスを出してギルド復旧に当てようという話にもなった。が、サウスアスチュートの復旧をアルゲンタヴィア公直々に執り行うとの決定が下され、更にギルド本部にも32000アーレスの保証金が支払われていた。つまり、冒険者やサウスアスチュートの住民、ギルドは瓦礫の撤去にさえ立ち会えなかったのである。ギルド本部のギルド本部長は直々にサウスアスチュートを視察し、事態の把握を試みるも、それらは軍によって一蹴され、アスチュートの証券取引所はアイヴァースギルドの来季決算を前例の無い不明と示した。

一方のカムラはアスチュートの医師に腕の状態を見られていた。カムラは先ず、その千切れかけた腕を処置せねばならなかった。当然、受勲式には代理人としてオーダが向かった。痛みを堪え、医師を呼び、応急処置として回復魔法をかけた回復薬と、代替骨にて応急処置し、破断した骨は同様の方法で骨を補強、補強材がカムラの骨と融合するのを待つとの事であった。


「痛いですか?」

「痛いです…ね、かなり。まぁ、慣れるとは思います」

「最初の補強だと拒否反応で痛みやすいです。一週間経ってこの様でしたら仰ってください。鎮痛剤も出しますが」

「いえ結構です。副作用がかなりあると聞きましたので。それに腐っても冒険者ですから」


カムラはそう言ったが、その医者は呆れて返す。


「冒険者の方は皆さんそういう反応されますね。ですが最近の医学的にはあまり良い状態とは言えないんですよ?」


カムラにとっては身に覚えのないよくわからない話であったが、医者はカムラへのある一種の八つ当たりが如く言う。


「は、はぁ」


カムラはそう、当たり障りのない返事を返す事しか出来なかった。


「この際一応出しておきます。お代は結構です。今から出すのはアヘンを溶かした鎮痛薬です。腫れを引くのはエーテル溶液です。手術痕に塗って貰えば、痛みが出ますが、より皮膚の再結合が早まるので必ず使ってください。このエーテル溶液に関しては回復魔法と同じ役割なので、かなり痛みますが、使わないと膿んだり、再結合が不完全となり、後遺症の可能性もあります。またエーテル溶液を使用する際はアヘンは服用しないでください。エーテル溶液の効果が薄まります」


医者にそう言われ、渡された薬であったがその薬を飲む気にはなれなかった。アスチュートで借りた宿に帰る。二人はアスチュートに宿を借りていた。帰ってきたラリアはカムラの元に駆け寄った。


「カムラ大丈夫だった?」

「まぁな」

「オーダから手紙来たよ。カムラには正式に受勲があるって」

「恐れ多いなぁ。…やっぱりそういう話じゃないとも思うけど。だろ」


カムラは部屋でそう愚痴を零した。ラリアもそれには納得していた。パーティー代表として100アーレスを受け取ったものの、ラリアはこれを単純に飲み込む事は出来なかったのである。

その時、誰かが二人の部屋を訪ねてきた。ドアを叩いた向こうの人にカムラは鍵を開けた。向こうにいたのは宿屋の店主であった。青い顔をする店主が階段の下に目をやる。カムラが警戒しつつも扉の向こうに出た。そこにいたのはアスチュート憲兵団であった。ラリアもちらりと目をやる。カムラの背中越しにアスチュート憲兵団と見た事もない姿の者達が見えた。カムラの顔は見えないが、残された左拳が握りしめられていた。憲兵の一人が階段を登り、カムラに話しかける。


「ヤスヒデ=カムラ君はどこかな?」


わかっていてか、敢えて憲兵はそう言った。


「自分です」


カムラはそう言った。その声は怒りを押し殺し、何とか絞り出した様な声である。だが、憲兵が付いて来いとばかりに言ったのをカムラは頭を縦に振った。


「え、えーと」

「ラリア」

「はい」


突然呼び止められ、無意識に敬語になってしまう。


「多分今日中には帰ってくるから」

「わ、わかった…」


従順、というには今にも手も足も出る、様な拳の握り方をしている。珍しく、何も向こうがしていないにも関わらず全身で不快感を見せているもので、ラリアは何も言えなくなってしまった。


***


 カムラが出て行ってしまった為に、万が一を考え、ラリアはもう一泊分を店主に支払うと、ふと出かけようと思い立った。思い立ったが吉日とはよく言ったもの。混乱する心を収める為にも丁度良いと考えたのだ。

少しばかり歩いていくと、大きな建物をラリアは見つけた。オーダの言う、アスチュート産業奨励館である。ついこの間はここで殺人事件もあった。犯人逮捕の話は未だ彼女の耳に届かず、その予兆すら無いが、だが確かにあった。今も捕まっていないのであろうし、十中八九アスチュート内にいるのであろうが、してそれは、彼女を寒からしめる理由には足りなかった。


「おっきい…オーダの話がわかんないけど、でも綺麗な建物ってのは何となくわかる。…うん、昔話で見る宮殿みたいな、そんな感じするなぁ」


ラリアの言葉は的を得ていた。古式建築的な風貌を見せている故であった。とはいえどこの建造物は、前時代的な建築物よりも古い建物を元にしてデザインされている。他の建物は四角い煉瓦のブロックの様な単純なデザインが大きく見受けられる分、産業奨励館のデザインはより一層際立って見える点も考慮に入れるべきではある。

初めてアスチュートに来た日、初めて見たのが鉄道馬車であったが、ラリアは乗って見る事にした。誰しもが座っている中で、ラリアは立ち上がり、窓から見える景色に食い付いていた。さぞかし田舎者に見えたに違いない。その上その偏見は紛う事なき真実であった。その点、寧ろ周囲の目は偏見というより、赤を赤と認識する事と変わらないほどに明らかに分かる事実を見ただけとも言えよう。一方のラリアの心境は初めて見るその景色を見つつも、やはりカムラの身を案じて止まなかった。彼女になんら情報がない点を含め、その景色を完全に楽しめずにいたのである。それは周囲の人間は当然感知し得ぬ事であった。

その晩である。カムラは唐突に帰ってきた。無傷で、である。


「か、カムラ!?だ、だ、大丈夫だったの!?」

「精神的には不快そのもの。イライラする」


大丈夫か、というのはどうも身体だけであった様であった。その顔からは自分は不愉快だ、と全身で表現するかのような表情を見せる。


「俺は寝るぞ!もぅ~やだ!クソッタレの要員ども!」


何をされたか知らないが、相当頭にきているようだった。ラリアは何をされたかとは聞く気にはなれなかった。ただ、夕食を食べていない様ではあった。然しカムラに何があったと聞くのも余計に彼を逆撫でするのは容易に気付ける事でもある。それ故、カムラがベッドに入った後、そこに掛布団をかけてやるのが彼女が最大限できる心遣いであったのだ。


「ありがとうな」


カムラは小さくそう感謝するので、ラリアは気を良くして、


「良いって事よ!」


とバンバンとカムラを叩いた。その一撃は治療中のカムラの右腕に会心の一撃を与えた。


「ぃいった!!何しやがんだ!」

「ちょ、ごめ、ごめんて!」


カムラが枕を投げ、ラリアが避ける。ドタバタと暴れる二人を、宿屋の店主は厳しく注意されてしまった。


***


 翌日、馬車に乗って二人は再びサウスアスチュートに帰還した。路線は前回の損壊から直っておらず、当分は鉄道での都市間移動は困難となるであろう。ブレミンゲハムを超える事も目標にあったアスチュート都市計画だが、今回の事件を踏まえ、都市開発は先送りとなる見通しになるであろう。


「おかえりなさい。カムラさん、ラリアさん」

「ただいまオーダ。んで、俺が貰えるとかいうその勲章は?」

「すいません。其の事についてなのですが、私では代理にならず。あの方」


そこには白髪の老人が一人。紳士服を着ており、貴族然とした印象をカムラに与えた。


「ラード爵。アルゲンタヴィア公の側近、ジョン=ラード男爵様です。ここではアルゲンタヴィア公の名代としていらっしゃいますから、ゆめゆめ、無礼のない様お願い致しますね?」

「きゅ、急にそんな事言われてもだなぁ」


するとそのラードがカムラに近づいてきた。その後ろには何人かの騎士がいる。


「貴公がヤスヒデか?」

「え、えぇ、確かに」


オーダがすかさず後ろから声を出す。


「カムラさん!頭が、頭が高い!」


だが、ラードはそれを気に留めなかった。


「いや、よい。この者は此度の事件を解決した勇者であろう。武人として同格に遇するのが礼儀である」

「あ、有難う御座います」


ラードは家臣に持たせたその勲章を手に取るとカムラに渡す。


「名誉である。陛下直々のものである事をゆめ忘れ無き様に。では失礼する。

馬引け、私は行くぞ」


ラードは馬にまたがるとそのまま駆けていってしまった。

読んで頂きありがとうございます!

この話で遂に十万字!やりました!大凡二ヶ月かけてやっと十万字。他の方はもっと書けてるというのに、己がどれほど文に弱いのかを痛感するばかり、ではいられませんね。頑張るべきです。

読んでくださった方、ありがとうございます!もし良ければです。評価等していただけましたら自分のこれからのモチベーションとなります!こんな拙い文を見てくださっただけでもありがたいです!ありがとうございます!

明後日の19時頃に投稿すると思うので、もし良かったらまた読みにいらしてください!

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