キメラ参上 中
第二三話です。
剣が破壊され、目前の砂を前に、カムラは抵抗する術を失い、諦めを見せた。
(南無三…!)
だが、オーダがこれを諦める理由を持たなかった。何かが駆け、カムラを背負った。オーダである。オーダが去る後、カムラが背にしていた壁はキメラの獅子の頭から放たれる光とともに激しい熱を帯びて溶解した。
「なっ…!」
「諦めないでください!武器はこの際、武器屋から貰います、いいですね!」
「…わかった。長剣がいる、頼めるか」
だが、二人が動くまでもない。一人の冒険者がカムラの方へ剣を投げた。カムラはそれを手に取る。
「それを使え!予備で持ってきたやつだからな!この際壊れるのは仕方ねぇが、壊した弁償だし、使ったら返せよ!」
「…忝ねぇ!」
カムラは剣を取る。近づく砂、基キメラを前に、カムラは無意識にも後ろに下がっていた。
そんなキメラの後方を、冒険者らは到着し、狙い始めた。
「近接攻撃は効かん!だが足を止める事はできる!魔法だ、特に火炎魔法で封じ込めてくれ!」
「奴の攻撃を見たのか!」
「あぁ、見た!」
「私もです。確かに見ました。火炎魔法の効果は…あまり見られませんが」
「効かないのか!?」
カムラは言った手前、驚きを隠せなかった。
「他の魔法は未だ試していません。ただ全て試す価値はあります」
「理由はなんだ」
他の冒険者はオーダに聞く。
「ありません。やらないよりマシ。その程度。少なくとも私の攻撃手段では点の攻撃になってしまう。面の攻撃は効果があるかもしれません」
「お前ら!サキュバスの女はこう言ってる!風魔法は使うなよ!余計酷くなるぞ!」
そう言う男は真っ先に突貫し、斧を振り下ろした。だが、キメラはその獅子の頭から火を放った。更に、下半身の砂は周囲の金属を取り込んだ。手はその先をまるで銃に変化させると、その先から火が吹いた。明らかな銃声である。カムラらを間一髪、他の冒険者が防御魔法で防いでくれる。しかし、その銃らしきものは装填の様子を見せず、あろう事か連射したのである。止めどなく聞こえる発射音は異常そのもの。更に付け加えれば、銃口らしき穴からは火花が散っていた。連射速度は上がり、通常聞こえない、ヴヴヴという音を立てている。
その時、カムラの後方より、雷撃が放たれた。
「お待たせ!」
「来たかラリア!」
ラリアの雷撃と、火炎魔法を再び砂化して避けるキメラ。群体になると、数千の槍となって降り注ぐ。カムラは咄嗟にラリアを抱えて建物の影に避けた。キメラは砂から再びそのキメラ的姿を取り戻すと、ラリアの後方から来ていた冒険者らに目掛けて山羊の頭から黒い煙を撒いた。黒い煙を吸い込んだ冒険者らは忽ち血を凡ゆる穴から吹き出して倒れた。
「毒か!」
オーダはキメラをじっと睨む。魔力をその目に込めた。
「皆さん!私の後ろへ!!魅了魔法を、使います!!」
オーダが嫌うのは完全支配魔法。相手の意志を奪い、認識、最悪は記憶までもを書き換える高位魔法。その危険を察し、カムラは咄嗟に下がる。オーダが狙ったのはキメラ。頭にその神経と、魔力を集中させ、解き放った。が、然し。何も起きない。キメラの暴走は止まらない。オーダは寧ろ頭を抑え、倒れ込んだ。
「どうした!」
「な、無いんです…」
「何が!」
「意識が…見えません…!もしかしたらブロックされた…いえ、ですが魔力は…」
「…よくわからんが、下がれ、物理で止めるっきゃなかろうに!」
「「おう!!」」
冒険者達は魔術職の対毒魔法を付与された上で突貫する。然し黒い毒はその効能を失ったとて、無駄では無かった。
「視界が…!」
「さ、退がれ、退が…」
「おい、どうし…ダッ」
鈍い音が鳴る。煙から現れたキメラを魔術士らが魔法で仕留めようと画策するも、その獅子の頭部は盾の如く変身し、その雷撃と、火炎を逸らしていく。
「その頑丈になったところにぃ!!」
冒険者の男の一人が斧を振り上げるも、銃なった部分は盾に変身、これを防ぐと、蛇であった尾は単純な尾へと変化し、男を弾き飛ばした。硬化し、斧の様になったその尾を振り下ろす。男は斧の刃を斜めに傾け、これを弾くと、刃の腹を蹴って、離脱した。硬化していた故か、今度は直ぐに砂化せず。サポートする魔術士が次に砂化するキメラの一部からその前衛の男を守った。防がれたキメラの一部は、その外観を狼の頭部へと変化させ、口を開いた。前衛の男が魔術士の手を引く。光とともに足元が爆散した。
本体へカムラも攻撃をかけるが、触手へ変化したその下半身は、カムラの足首を掴むと、建物の壁面に無造作に叩き付けた。二度目を触手を斬って対応するも、ダメージたるや凄まじく、歩行は困難となる。
「カムラ!」
ラリアが回復魔法をかけるが、その間にもその砂となった一部は蠢き、カムラの喉を目掛けて槍に変身した。だが、他の魔術士がこれを風魔法にて、吹き飛ばした。
「砂っぽいなら、それこそ風魔法だよ!これなら少なくともコイツの動きを食い止められるんじゃないの!?」
「何ぃ!?」
「発想は逆、逆だったんだよ!」
キメラへ向けて他魔術士も風魔法を当てていく。切断面に向けられた局所的突風はキメラを構成する砂を弾き飛ばした。然しキメラも頭部形態を逆お椀型に変化させ、その脚部を地面にめり込ませると、自ら生んだ火と共に跳ね返した。火炎突風となって降りかかる火に、数名の魔術士は防御が遅れ、全身火達磨となって息を絶やした。だが、形態変化は明確に遅れていた。その触手は剥がれ、元の形態から姿を変える様子を見せない。あれ程不定形であった身体が固定された。
「いける…か!?」
だが、再び放たれた風魔法は全く効果を見せず、二名の魔術士はその腕に投げられ、猛禽類を思わせる爪に引き裂かれた。
「余裕がなくなってきたらしい…」
誰へ向けた言葉か。キメラか、冒険者らか。それとも両者か。神のみぞ知るか。
読んで頂きありがとうございます!
お昼投稿となりましたね。時間もそう余裕無いお昼時に見てくださってありがとうございます!次の投稿は今夜19時30分頃を予定しています!




