キメラ参上 上
第二二話です
魔法使いが杖を構える。
「レイっ!!」
光線魔法が放たれた。伸びる光線は羽を狙う。グリフォン擬きへの直撃コース。橙色の光線はグリフォン擬きの羽を当然の如く貫いた。あっけなく、戦闘が終わるのか。然し、誰も終わる感覚を得られなかった。不快感が脈を伝って全身を巡る。アレは普通でないと、頭が何度も注意するが、本能的な恐怖を既に抑える術を身に着けた冒険者達はどうしようもなく、戦いを選んだ。
貫かれた翼からは本来飛び散る羽根は飛び散らなかった。銀の鈍色が見えた。化けの皮が剝がれたのである。瞬間、砂の様なものが周囲に飛散した。撃破ではない、自ら飛び散ったのだ。砂は冒険者らを飲み込んでいく。密度が上がり、槍が如く鋭く形成され直したソレは短剣を持つ冒険者の一人を刺し穿ち、体内に入ると、内側から破壊した。そして再構成される砂。獅子の頭部に上半、前脚。山羊の下半、鷲の後脚。背から生える山羊の頭に蝙蝠の翼。蛇の頭を持つ尾。
「き、キメラぁ?」
「伝説のバケモン、眉唾の話とばかりに思っていたが…、本当にいるなんざ聞いた事もねぇ!」
山羊の頭が口を開く。周囲に黒い煙を撒いた。
「魔術士!!」
「もうやってるよ!」
その時、キメラは再び砂に戻ると、その場にいた冒険者7名を砂で覆った。
「な、なん…」
途切れた。一瞬である。見ていたオーダも流石の危険を察し、強化魔法と共に駆け出した。砂は今度は蝙蝠と豹に変身すると、二つに分かれて、接近してくる。蝙蝠も、頭部が梟を形成し、異形を見せる。豹は蛇の尾を生やし、足は6本もある。その姿も一瞬一瞬で変化し続け、まるで夢に出る怪物が如くその姿は安定しない。
「…っく、こうなれば…」
手をかざすオーダはキメラの速度に翻弄されその魔力を抑える。走りながら魔力を込める。
「天よ、知を我に、力を我に、原罪を我に。禁忌を赦し、人に汝が力を分け与えよ」
脚を踏みしめ、踵を返す。
「ファィエルっ!!」
炎がキメラを襲うが、空中のキメラは砂に戻り、オーダの攻撃するキメラに再度取り込まれると、再び砂へと変身し、無差別に周囲を破壊し尽くした。
一つが蛇の頭を形成した。口を開く蛇。何かを察し、オーダは咄嗟に口の向く先から避けた。口内が一瞬、輝いた。避けた背後で、浴場が光と共に吹き飛び、劈く様な爆音が鳴った。何を発したか等わからないが、兎も角、蛇の口が光るのと同時に爆発は起こった。そして後から音はなった様に聞こえたのだ。
この戦闘の音はギルド支部にも届いていた。建物の崩壊する音と、人々の悲鳴である。
「な、なんだ?」
「外で…け、煙だ!行政所の方!」
それに騒つく冒険者達。当然カムラ、ラリアもそれを無視できない。オーダがいる方向ではないか、と。
カムラは咄嗟に腰に手をやる。運良くもアムールの剣があった。ロックは外れている。本来ならば、諸邦都違反もいいところであるが、今は都合の良い話であった。然し、服裏の短剣は無い。
「ラリア、イニシュラに戻れ」
「つ、杖ね!わかってるわ!」
「あと俺の短剣を置いてきちまってるからそれもだ!頼んだぞ!」
カムラは北区へ駆け出す。それに応じてギルド支部内に預けていた武器を冒険者の一部が取ると、カムラの後を追いかけていった。
***
「カムラとかって言うらしいな!」
「だからなんだ!」
「私たちを置いていくなんて!初心者は後ろにいるのが鉄則なのよ!」
「あぁそうかい!こちとら仲間を守らにゃならんでね!」
女の、エルフであろうか。冒険者はカムラにそう言った。カムラからして、それに応じている暇は無いのだが、冒険者達の言葉は止まらない。
「俺たちだって変わらねぇ!おいカムラ!だからテメェも協力しやがれ!こっちは回り込むからな!」
「そうかよ!んじゃ宜しく!」
冒険者達は二手に分かれた。大通りを進み、その先に向かう。カムラはひたすらに走り続けていた。その時である。カムラの上方から落下したのは荷車であった。音を立てて荷車は粉々になった。そしてその向こうから見えるナニカ。最初こそ煙かとも考えど、そこには不自然に揺らめく、明らかな煙ではないものがあったのである。
カムラの走る速度はより上がる。焦りと、好奇心が入り混じる。だが、そんな彼の心を打ち砕くが如く、空から次に降ったのは下半身のない、死体、いや最早原型はとどめない肉塊であった。
「はぁ!?腕もねぇって…一体何がいるんだぁ?」
物言わぬ肉塊を横目に足を止めない。益々高まる好奇心と、オーダの生存が彼の動力である。狭い路地を通って近道を行く。大通りに出ると、轟音のなる宛ら市街戦の様相を見せる北区であった。そして、眼前の建物が崩落したかと思えば、オーダが受け身を取りつつ、姿を見せた。
「オーダっ!!」
然し、オーダはカムラを制止する。空の煙にカムラは気が付いた。然し、煙ではない。
「砂?いや、違うか!」
砂は再び姿を作る。その姿はキメラ。先ほどのキメラである。高い跳躍に、空中での静止、そして、カムラにその爪を突き立てんとし、突貫した。カムラはこれを間一髪で防ぐものの、突如翼は人の腕となり、カムラを弾き飛ばした。更に片足は触手となってカムラを襲う。カムラは触手を斬るも、斬れたかに思えた触手は砂となって、カムラを弾き飛ばした。
「化け物…モンスターは此奴の方が似合ってるじゃねぇか…」
受け身を取るも、防いだ剣は、崩れ落ちた。
読んで頂きありがとうございます!
試しに連続投稿しました。これで読む人増えたらいいな、なんて打算的ですが。もしこういう機会があればやってみたいですが、不評であればやめます。感想等で教えてください。
もし、良ければ、評価等いただけるとモチベーションになります!でも読んでくださっただけでも嬉しいです!もし見かけてくださったらその時も読んで頂ければ幸いに存じます!




