封鎖、そして…
第二一話です。
その日、朝を起きて仕事を探すカムラ、ラリア、オーダは向かった先のギルドで職員らが慌ただしく動く様を見た。冒険者らも何があったか、あちらこちらで言葉が絶えない。
「…何の騒ぎじゃこりゃ」
すると、冒険者の一人がカムラらに近づいた。
「アンタら随分と冷静だな!?」
「え?えぇ、まぁ。何があったんですか?」
「昨晩の轟音の正体さ!」
冒険者は言うが、三人は心当たりがない。昨晩何があったというのか。
「何分かんないような…〇時くらいにあったろ!?デカい音が!」
やはりわからない。三人共々その時間は寝ていたのである。
「一体何があったか、教えてもらえますか?」
オーダは冒険者に聞いた。するとその男はゆっくりと語り始めた。
「昨日の〇時くらいさ。空の向こうで、ピカッと光ったかと思えばだ、空中船が火ぃ吹いて落ちてきたんだぜ。知らないのか!?今日はアスチュート行きの路線は全部ダメになっちまったらしいし、何だが騎士どもがアスチュート迄の道を封鎖するとかで!」
「…実質的に…陸の孤島、か!」
「そうだ!」
カムラはそこで漸く事態を把握した。ラリアもである。未定とも言える封鎖解除はさることながら、アスチュート方面のルートが無いとなれば、サウスアスチュートから馬車でラドローまで向かわねばならず、また東部のバゲット、カリヨンへのルートはアスチュートを通らねばならない為に帰れない。ラドローも路線があるわけではない為に、幾多の町を中継せねば路線のある港町カーディフに到着出来ない。相当の時間を要求される事は容易に想像し得た。更に付け加えるならば、これだけのルートを使わねば、毎月運ばれてきたサウスアスチュートの食糧を届き得ないのである。陸路でもアスチュート方面の道さえ開ければ解決は充分考え得るのであるが、騎士団が掌握するとなると、一筋縄での解決は想定し難い。この様な状況下にあって、サウスアスチュートの市内は大混乱と化した、と、こういう由であった。
「こりゃ混乱する筈だ、訳だ…」
カムラが納得していると、ギルド職員が通常の受付前をカーテンで閉じた。
「皆様、冒険者の皆様!」
ギルド嬢の声にその場にいた冒険者らが反応する。
「先ほどグリフォンの定期便で洞窟への入洞に際し、方針が決まりました!
通常の探索での資金源について、調達が困難である事から、政府の判断が得られるまでの間、ギルドは無期限の閉鎖を致します!」
遺跡洞窟への入洞は元来自由であり、ギルドの管理するものでもない故、引き続き自由なのであるが、今後無期限的には冒険者の収益が立てられないというのである。あまりにも衝撃的な決断に、先程までは落下した空中船の墜落の原因で話が持ちきりだった冒険者らは一転しその決定に怒り沸いた。ただでさえ、食糧が枯渇するかもしれやぬ、等と話題があったのだ。そもそもの食糧関係が得難いともなれば、昂らん各々の感情は明確な理由を持つ目標に投げられたのである。
「そ、そんなぁ!?折角お金貰える様になったっていうのに!カムラも取り下げてもらおうよ!」
カムラを揺らすラリア。ねぇねぇねぇ、とひたすらに言うが、ラリアは首を横にふる。
「取り下げる権限は向こうにないんだからさぁ」
「ならどこに言うのさ」
「…騎士団、とか?」
その言葉にラリアは動きを止めてしまった。余りにも突飛な考え方ではなかろうか。更に言うならば、無理な発想でもある。だが。ここに一人のみ、賛成するものがいた。
「それいいですね」
オーダである。
「え?ど、どこが?」
「話し合う席だけでも設けましょう」
「その、俺が言うのもなんだが、どうやるんだ?」
カムラはオーダに近づくと耳を貸せ、とジェスチャーし、耳に口を近づける。
「魅了でも使うか?」
「まさか。ツテはあります」
「教えてくれなきゃ信用ならんぞ」
「信頼してください。それに騎士団なら対魅了用装備付けてますから。私の魅了は意味ないですし」
オーダはそういうとギルド支部を離れ、サウスアスチュートの行政所に向かっていった。ラリアとカムラはあっけらかんとそれを見ていたのみである。
***
こうして、オーダは行政所に向かっていた。街は人が少なく、人影が感じられない。だが、その理由はすぐに気が付いた。行政所のある北区に近づけば近づくほどに再び声は大きくなる。オーダと同じ思考回路の冒険者は少なくなかったようである。
「アンタは…オーダか!」
そこにいたのはトルンガであった。彼も今回の件には腹を立て、行政所に向かい、抗議していたのだ。
「オーダも抗議しに来たのか!今回ばかりはサピエンスに賛成さ、こんな締め出しは理由もない!」
(この上ギルドは無期限閉鎖、なんて事をここで言ったら武力を使いかねませんね…)
その時である。上から風を伴って何かが降りてきた。場は静かになり、誰しもが上を見た。グリフォンがそこにいたのだ。グリフォンらしき影が。
オーダの額に汗が流れる。まるで己が洞窟内にいるかのような緊張感が感じられた。
何人かの冒険者は手持ちのナイフや、剣、杖を構えた。何年も洞窟で戦い続けた冒険者らには何か、違うものだと察するにさして迷いはいらない。不確実にして、空気の異なるそれを誰しもが警戒した。冒険者の一人が叫んだ。
「今から冒険者じゃねぇ奴は逃げろ!モンスターが来るぞ!」
然しそれは余りに無力な声であった。
読んで頂きありがとうございます!
今回は実験的に普段の半分くらいの文量になります。分割投稿とやらを試しにやってみようかと思いました。21時頃にもう一話分投稿されます。是非見ていってください!




