カラキドンとの戦闘
第15話です。
遅れてすいません。こんな夜に投稿する事になるとは。
セーフ洞窟空間を後にしたカムラ達は第三層へ、大きく迂回をして向かう事になった。第四層をなるべく把握する為にも、すぐに踵を返すような真似は憚られたのである。
然しその日の一行には昨日ほどの浮かれた空気は流れていなかった。無論昨晩は浮かれた空気を持っていたが、カムラの激昂たるや、凄まじく、出発直前の周辺の冒険者のカムラを見る目は冷ややかにして、怯えを伴い、更にオーダもカムラに接し難くなっていた。無論感謝はあった。オーダは助けられた身であった。然し余りに過剰と、否、間違いなく過剰な対応は冒険者よりも、カムラへの、接し難さを生んでしまったのだ。更にはカムラ自身にその自覚が薄い様にラリアには感じられた。
「ねぇ、カムラ」
「ん?」
手帳へのメモを止める事のないカムラの姿はラリアに、敢えて気付いていないフリをしているのか、それとも、本当にわかっていないのか、判断し難かった。
「昨日、まぁ、その、助かったと思うよ。オーダは」
「あぁ。そうだな。そりゃ良かった。…お礼か?ならいらんぞ?」
ラリアはカムラの頭を杖で叩いた。
「馬鹿っ!違うよ!」
「いて、いてて…。な、何が?」
「その、えーと、謝らないと!」
「は?」
「オーダとカムラ、口数少ないじゃない?カムラがあの男をあんなに脅したからだよ」
「は、はぁ」
「謝る、じゃないけど!なんか弁明しないと!」
「は?いや、俺は…」
「口答えしないっ!ほら!オーダのところに行った行った!」
ラリアはカムラの背中を押し、オーダの下に行かせる。カムラは乗り気では無い様であったが、この仮パーティーが今後とも続く様にする為にはこれが必要があった。
「か、カムラさん…」
オーダは肩を振るわせた。後ろめたさもあるのだろうか。ラリアにはそこまでを察する力はない。然し、根拠のない確信がラリアにあった。
「その、オーダ。昨日はな、向こうに…やり過ぎた、とも思うんだ。ただ、お前を脅すわけじゃ…な?」
「そ、それはわかっているのですが…。怒った時あれほどとは私もわからなかったので…」
(こうするべきじゃない様な気も…するけど。まぁいいか)
オーダとカムラ少ない乍らも両者ともに和解の基調を見せ始めた。ラリアは一先ずは落ち着いたと判断し、二人に歩みを進めるよう促した。
***
暗闇の中、バグがその胴を潰される。明らかな強さを見せる怪物が二頭。カラキドンであった。ソルジャーバグ、クリーチャーインセクターが悉くを殺し尽くす。ソルジャーバグは腹部の付け根から高圧のガスを発射するが、巨躯に見合わぬ俊敏さによって避けられ、当てれば所詮ガスである発射体はその体躯の大半を占める脂肪の弾性に無力化される。あまりにもバグらは無力であった。一体は気が付けば背後に回られ、頭ごと齧られた。尾によって背後から迫るバグは吹き飛ばされ、クリーチャーインセクターはカラキドンに地中に引き摺りこまれる。バグらはそそくさと逃げていくが、カラキドンもまた、五体を屠ったところで追うのをやめた。これは正に自然界そのもの。異常な第六層と第七層を除けばカラキドンはこの洞窟の食物連鎖の頂点であった。無論最強ではない。然しその体表は熱を通さず、毒さえ分解する。サラマンダーとは縄張りを重ねない事で生き残ってきた。
また、冒険者にとってもカラキドンは脅威であった。斬撃が効果的なカラキドンだが、脂肪分によってその身体機能の核心にまで刃が届かぬのも去る事乍ら、加えて一頭から三頭の範囲、多くは二頭で活動するカラキドンは単体なら兎も角、容易く殺す事は難しいのが実情である。その上カラキドンは食用としても不味く、素材の耐熱性はカラキドンの汗腺であり、これは確かに耐熱性のあるコーティング素材にはなるものの、オリハルコンの耐熱性の方が高く、生産量も多い為に好き好んで戦闘するモンスターですらなかった。
その姿を除く三つの影があった。カムラ達である。
「か、カムラぁ…ど、どうする?」
「ラリアの魔法は通用するだろうから…」
ラリアが踏み出そうとしたところでオーダが止めに入った。
「待ってください」
「え?」
「カラキドンに何の魔法を使うおつもりですか?」
「ボリーデだよ」
「ならダメです」
「カラキドンに火は効きません。耐熱性があるのです」
カムラはオーダに聞く。
「んじゃどうする?」
「カムラさんは前衛を。私も前に出ます。相手は二体ですが、ミスラルの短剣ならば皮膚を裂く程度は」
「容易いが」
「でしたら。皮膚が開くなら、そこにラリアさんがサンダーを。私はクロスボウに電撃の魔法をしますから、これで動きを止めたところを、カムラさんの剣で。どうでしょう?」
「いやまて、一体だけとなるとそれはそれで…」
その時。三人の前に地響きがなった。恐ろしく大きな地響きに思わず顔を上げる。そこにいたのは、カラキドンであった。
「全員散開っ!」
カムラの声に二人が反応した。カラキドンの一撃をカムラは既の所で避けた。地面が抉れる。
(カラキドンは地中を潜るんだよな?って事は…下がったここも危険か!)
カムラはカラキドンの懐に潜ると剣でその腹を裂いた。脂肪分の体液が飛び散るが、カラキドンに怯みはない。神経が通っていないのだと直ぐに気がつく事もまた容易だった。
ラリアはカムラに強化魔法を施す。カラキドンを抑え込むならばパワー勝負が最善手であった。カムラはカラキドンの前脚を掴む。然し水かきが邪魔し、掴み難い。
「カムラ!ちょっと下がって!撃つ!」
カムラは直ぐに組み合いを解き、下がった。
「サンダーっ!!」
雷撃がカラキドンの傷口目掛け飛んでいく。炸裂音が洞窟内に響いた。
然し。
「効いてない…か?」
ラリアは咄嗟に水魔法で斬撃をする。高圧の水は腹部では弾かれるも、掠った瞬間、皮膚は避けた。
然し、ラリアも目の前の爆発で吹き飛んだ。
「熱っ!」
熱湯の水。咄嗟の魔法で魔力のコントロールを誤ったか。
「大丈夫か!?」
「な、何とか…目の前のちっちゃい爆発だもん…」
「それよりカムラ!もう一回お願い!オーダ!」
オーダも戦闘中であった。もう一頭をカムラから引き離し、矢を放っていたが、矢を避けられ、限りある矢を何としても当てる必要もあった故か、撃つという判断に踏み切れずにいたのである。そんな時に呼ばれたオーダは咄嗟の反応が危険になると悟り、カラキドンを背にラリアの元へ一目散に駆け出した。カラキドンはその巨体故に走る事そのものができず、高速移動もまた然り、できない。カラキドンが高速移動するのは後ろ足と尾によって跳躍するからである。強く地面を叩き跳躍するカラキドン。オーダは咄嗟に方向を変えるが、既に先行行く道は塞がれていた。
「しまった!」
口を開けるカラキドン。食べようとオーダに口を近づける。オーダは矢を放つ。電撃はカラキドンの防御されていない内部に直接放たれた。一時の急激な筋肉の動きによって、カラキドンは自分の意思とは関係なく、身体を捻った。オーダはその隙を逃さず、全力で駆け抜ける。悶えるカラキドンだが、頭を下げたのが悪かったのか、ラリアが放ったサンダーが口内に再度直撃し、倒れてしまった。
然しまだ、解決はしていない。こうして眼前にいるカラキドンは倒せていない。カラキドンはラリアに向けて腕を振るう。強化魔法を付けたカムラは一か八かと、迫る爪を防いだ。響く音は甲高く、剣は折れんとばかりにしなりを見せた。
「折れ…ない!」
カムラは身体を後ろに下げる。カラキドンは口を開かない。急所に当てられないか、とカムラはラリアを見るが、ラリアにとってそれは厳しかった。口を開かなくては意味がない。
カラキドンは再び突進の構えを見せる。その瞬間、ラリアに発想が湧いた。
「カムラ退いて!」
魔力を杖にこめる。然し、込めたとて、なるべく、不安定に、火魔法を扱う気持ちも合わせて、である。
「ウォーターっ!」
放たれた水は吹き飛んだ。放たれるのは高圧ガスとはいえ、性質の違うそれは、大ダメージとなり得る。
それはラリアとて例外ではなかったが。
カムラはラリアを抱き止めた。口は開く。狭い隙間であったが、オーダはそこへ火矢を放った。守る術のないカラキドンはそれを面と受けてしまった。
「やった…!」
「オーダ」
「はい」
「ラリアを頼む。早く行け、俺はアレを倒してからだ」
「いや、ですが…」
「残るはトドメだけだろ、タイムロスなんかしてみろ、泡吹いた奴まで復活して全員ここでお陀仏だ。
ほら行った!」
カムラはオーダの背を思い切り叩いた。オーダはカムラに急かされ、ラリアを背に背負う。カムラはオーダの荷物を代わりに背負い、後をオーダに託した。オーダとて、重くないわけではないが、その為にこそ、彼女の装備は強化装備なのである。
カムラは駆け出し、オーダも駆け出す。カラキドンはオーダに反応し、そちらを向くが、カムラは近くにあった石を持つとラリアから施されたブーツの魔力を使い、飛び上がるとミスラルの短剣を構え、更にその手元の石を振り上げ、頭蓋を割って、短剣をカラキドンの頭部に突き立てようとした。カラキドンも頭を下げ、これを躱す。カムラは剣をカラキドンの背に突き刺し、ブレーキ代わりにと、スピードを落とすと、そのまま後ろ脚の関節を斬りつけ、一目散に逃げた。脚にダメージを負うカラキドンに魔力強化込みのカムラを追う事は最早敵わなかった。
***
この後、カムラ達はバグらとも戦闘するも、別パーティーと偶然合流。彼等が持っていた余りの矢をオーダは受け取った。ラリアは腕を軽く火傷し、また脚を捻挫したものの、大きな怪我はなかった。ただ、杖が折れてしまっていた。カムラは彼自身気が付かなかったが、カムラの回収した石はバグが巣の材料に回収した魔石であった。
「助けていただきありがとうございます」
「いや、いいんですよ。初心者なんて」
そのパーティーは珍しくもダーダルスやオーク、獣人で構成されるパーティーだった。
「アンタ達と人種は違っても、まぁそんな心は違わないのさ」
「自分からするとオークの方は強そうでいい。偏見ですけどね。でもどうも事実の様だ。腕の筋肉が自分とは違う」
「ん?でも人間もそうなるさ。何しろ、アンタらも負けず劣らずの男は多いじゃないか」
カムラはそれもそうだ、と笑って見せた。
カムラ達はその場を後にした。収益は310デナースなかなかな好調なスタートを切った。また怪我も想定よりも少なく、カムラ達にとっては、実によい探索とも言えた。
読んで頂きありがとうございます
遅れてすいません。次回は時間は20時に間に合わせます。ただ、何とか二日で仕上げましたね。いや、よかったよかった




