満を持して冒険 中
第十二話です。
第二層に降りていく。前回こそ、バグが発生していたが、この日はそのバグの姿はそこまで多くあるものではなかった。
だが、多くあるものでなくとも、バグがいる事は間違いない。
「バグ…ですね」
「どうする?」
「なるべく資金も欲しいですし、7〜8体はなるべく倒しておきたいところですが」
ラリアへ振り返るとラリアはにこやかに頷き、杖を振る素振りを見せていた。
「答えはそれか」
カムラは再び剣を抜き、構える。バグも彼等に気付いたか、何体か更に姿を現した。しかしその数は多く。
「20はいそう?」
「えぇ。ですがここはホール(洞窟空間)です。決して不利にはなりません」
カムラは構える。バグはそんなカムラへ突貫していった。前脚の鎌を振り上げる。カムラはそれを避けるも、側方からもバグ。短剣を引き抜くと関節を斬り、直撃コースであった右前脚の攻撃を奪い、肘で首元への一撃、体当たりし、そのまま更に後ろに下がった。一体目のバグと距離を取りつつ、片手の短剣を二体目の方向に構える。カムラの後方より足音。三体目のバグであった。カムラには恐らくという曖昧な感覚の元にしかその事実はわからなかったが、その方向には右の剣を構える。ほぼ五体満足の正面バグも警戒しつつ、左の先程前脚を斬り落としたバグへ突進する。短剣で斬りかかるも、受け止められ、更に右のバグの斬撃もあって、右の剣で咄嗟に受け止めた。
(鋼を混ぜたとて、ミスラル、ここで下手に打ち合えば折れるのはこっちだっての!)
右を力いっぱい弾き、打ち合う短剣を下げる。先程まで打ち合っていたバグの腹部を蹴り、接近するバグの頭部目掛け、剣を投げた。運良くも、刃先がその頭部に突き刺さる。然しカムラはそれを見る前に向き直り、蹴ったバグへ右の拳で顎を打った。更に左で中脚の基節を殴打、再び右で顎であろう部位を打ち、短剣を右に持ち替えると、動きを鈍らせるべく触覚を斬り落とし、腹柄節を横から回し蹴りし、胸部に短剣を刺した。
オーダも周りのバグと応戦していた。矢を装填し、火の魔法を上乗せし、放つ。後方からくるバグの斬撃を回避し、胸を蹴ると、胸部へ撃ち、接近する三体目は腹部を斬り、更に電撃を纏わせた短剣でその腹部に追撃。電撃によって、動きを止めたバグの胸に短剣を突き刺すと、三射目の矢は斜めに移動するバグの進路に向けて放ち、これを倒した。
ラリアには更に次々とバグが接近していた。
「なーんか…二人とも強くなぁい…?魔法使いってもっと後ろから撃つ役割だと思うんだけど…」
杖を構えるラリア。火を纏わせ、炎の壁を作る。
「燃焼材はエーテルよ!喰らえ!合わせ技っ!」
風魔法によって火は風に乗って広がり、四体のバグを纏めて燃やし尽くす。
「やりぃ!魔法はやっぱり圧倒的ね!」
然し後背からのバグに気が付かず、鎌を振り下ろされる。カムラはラリアに気付き、声を上げた。
「ラリアっ!後!」
ラリアは後ろに向け、火炎魔法を放った。焼けるバグ。風魔法を再び使い、吹き飛ばした。両側からもくるバグにそこで気がついた。
「ウォーターカッターっ!」
両断されるバグ。更に左からのバグには杖を構える。
「ファィエルっ!」
火球は燃やす、どころかバグの身体を貫徹し、バグは地面に倒れ伏した。
「カムラ!ありがとう!」
「気をつけろよ!」
残るバグは後ろに下がり、カムラらを尻目に逃げていくように見えた。
ラリアは足を踏み出す。
「深追いするな」
カムラがラリアを制した。
「腐っても、自然界で生き残った俺たちと同じ生き物。あぁして逃げたように見えたところで。どうせ追えば待ち伏せがいいところだろ」
「そうですね。同意見です。こうして倒したバグですから。カケラを取っていきましょう」
「傍に寄せる?」
「えぇ。そうしま…あ、そうです。バグといえば」
何を思い出したかオーダはバグの腹を裂き、その腹にある何かを抉り出す。白い塊は、粘性のある液体のようにも見えた。そして、それが漏れる袋があった。
「…げぇ。なぁにそれ」
「ゴムの素、のようなものです」
「ゴムの木なら取り扱った事あるぞ」
「であれば、どんな特徴があるかわかりますね?」
「いや、ゴムの素が出る」
「…まぁいいです。そして、このバグからもゴムそのものではないにしろ、加工次第で接着剤やゴムになります」
「何に使うんだそれ」
「昨今は銃器や建物もより複雑化してきましたから。こういった素材が必要になります。ゴムの木では足りないんです。
このバクらは兵隊ではなく巣の餌を回収する為のバグ達。卵を守る繭にこの粘液は使うとされるそうです。詳しい事はギルドに行けば教えてくれるでしょう」
オーダはラリアにもバグの内臓を回収する様勧めた。然しラリアは首何度も横に振る、嫌だ、とでも言わんばかりに拒否する。あまりにも気色の悪い光景なのだ。虫の内臓等まともに触れるものか。ラリアは心底思ったが、カムラの方を見れば、内臓等お構いなしに粘液の入った袋を引き摺り出していた。
「げっ」
「?げっ、とはなんだ。げっ、とは。金になるんだろ?内臓に触れたとて死ぬわけじゃあるまいが」
「そうじゃないと思うんだけど…。躊躇とかないわけ?」
「無いね」
「信じらんない」
「安心しろ。目の前にある事実だぞ」
「じゃあ最悪よ!」
カムラは頭を掻いた。
「そうかなぁ?んじゃ俺持つよ」
「…それはそれでなんか嫌。私によこして」
「天邪鬼だなぁ」
「いいから!」
カムラとオーダはラリアの背嚢にバグの袋を入れた。
「これだけでは足りませんから、より倒すと更に買えます」
「…つーか。ラリアは蜘蛛の内臓触ってなかったか?」
「触ってない。触ったのはカムラ」
「あー、そうだったかもな」
「あの、そろそろ?」
「ん?あぁ。すまない」
最後まで読んで頂きありがとうございます。
話が上手く纏まらない為、区切りがどうも悪いですが一旦ここで終わりとし、明日、もう一話投稿します。よろしくお願いします。




