満を持して冒険 上
11話です。遅れて申し訳ございません。
パーティー、とはいえ仮であったが、組んだカムラ、ラリア、オーダは初の三人での本格探索をする事となった。
「いやー!三人で探索できるなんてね!」
ラリアは軽快なステップを踏み、進んでいく。
「前行き過ぎるなよ?」
「三人で探索は決して初めてでは…」
「お、それは違うと思う。前回はイレギュラー。正式に、それも気楽にやれるのは今回が初めてだ。な?ラリア」
ラリアは振り返るとカムラに反論した。
「カムラの案だったら間違いなく、キツかったからね!オーダの案にしてよかったよ」
カムラは呻き声をあげる。ラリアの言葉に反論できなかったのだ。無論カムラも薄々自覚はしていたのだが。
三人は前日にどんな探索にするかを話し合っていた。
カムラは当初、第七層までの探索を計画していた。この案は洞窟遺跡全体の大凡の把握は、本探索以降に於ける円滑な探索の一助であると考察していたからであった。一方でオーダは、自身らでは第七層への探索は目に見える成果を得る事が非常に困難であると考え、第四層の特徴の把握を企図した探索にすべきだと具申した。カムラはオーダの案の意味するところを実力不足という一点への判断であるかとも考えたが、第六層自体面積26㎢である事実の前にはこれを認めざるを得ず、また、第六層自体が中心部に接近するような構造の為、フォージキメラとの接敵が予想されるだけでなく、その場合の対応が困難である可能性が高い事もあった。その為、カムラもこれには否定意見を出しにくく、最終的にはラリアにその判断を託す事となった。ラリアはオーダ案に賛成し、第四層までの探索、基い調査が今回彼等の目的となった。
「第七層は攻略は私達の様な…というより、はっきりと申し上げればです。あ、そのお二人の実力や志の程を疑うわけではありませんからその点は是非わかって欲しいのですが…」
「前置きはいいから。で、まぁ、何となくわかるが、何が言いたい?」
「…実力はまだ、未熟と言わざるを得ないでしょう。冒険者なら少なくともこのカラキドン洞窟を一つ一つ明確に知覚しておく。これはやっておくべき、いえ、最低限の基準となります」
「あれか、それが出来てやっと評価の基準に能う、そんな訳か」
「えぇ」
「んじゃ第一層から知っておくべきって事ね?」
「えぇ…」
オーダはそこで足を止める。しゃがみ込み、地面の石を手に取った。光を伴う石は、コウリョウゴケの生えた石にも見えたが、目を凝らすと石そのものが光を伴っている。
「…綺麗」
「エーテル鉱石です」
「エーテル鉱石?」
「魔石、というのはあくまで俗称、エーテル鉱石が本来の名称となります。…それは本題にはありませんが、大事なのはこの魔石は第一層にある事。地上に近い第一層にある事は珍しいです。そうするとこの辺りは地表の地質とその下の地層の境目にある、とわかります」
カムラは唸り、首を傾げた。
「何でだ?」
「これは覚え方として合っているか、それはやや判断しかねますが、地層の境は、その地層ができる時代に強い圧力がかかります。特にアスチュート周辺には現在こそ死火山ですが、カノーネ山は嘗て火山であったとされます」
「そうなんだ」
ラリアの相槌にオーダも頭を縦に振る。
「堆積層と言ってもその中は多様です。ですが魔石は強い圧力によっても生成される事があります。この場合比較的新しい地層で見つかる事は珍しい事ではありません。そしてその場合、ただの堆積層では強い圧力は生まれ難いですから、密度の高い火成岩がこの場所にあると考えるのが妥当です。ここは第二区と、考えられます。そして堆積層もあるとなれば付近には白亜質の堆積層がある。
あ、あとこれは覚えておいて下さい。第三区、第四区の境も似た地形がありますが、そこには火成岩、また魔石がありませんから」
その話は一昨日のカムラとラリアが知っていたかった話であった。それを知らない故に、道に迷ったのだから。だが、ラリアにしてみればそれを知らなかったからこそ、オーダと再会し、その上心強い仲間となった訳であり、不幸中の幸い、否、「不幸故の幸い」等と称するに値した。
「それは聞いておきたかった…」
カムラは反省するが、オーダは違った。
「反省するもいいですが、それを糧に次に活かす方が健全です。私達は全員生き残ったのです。それだけでも奇跡。であれば後腐れなく、次に活かせるというもの」
「成程、それもそうだな」
彼等の目線の先から鳴き声。洞窟回廊を隔てた先、暗い回廊から声は聞こえた。
「噂をすれば。私は後方から。ラリアさんは魔力を貯め、カムラさんに支援を。カムラさんは…」
「前衛にあって、これに応戦だな。どうせ威嚇から。怖気るか。気合い充分!」
剣を抜く。研がれた剣は再びその鋭利さを取り戻していた。
闇から段々とその怪物のシルエットは顕になる。スペライノサウルスであった。然しその外見、腹部の傷は見覚えのある斬り傷であった。
「ほほう、待ってやがった…」
「いえ、これは囲まれた、という感じですかね」
オーダは手元のクロスボウの矢を抜く。多めに、三本ほど。腰の剣に触れ、場所を確認した。彼女の剣は刃渡り40cm程度の短剣「クストース」。幅広にして、肉厚。合金製を捨て、鋼によって作られた。単純、然して無駄の無い合理の刃。クロスボウを操る彼女にとって、短過ぎる事による間合いの不足と、長過ぎる事での欠点となる携行性を解決していた。
「Zaaooooooo!!」
甲高い咆哮と共に、次々とスペライノサウルスは姿を見せ、そして、突撃した。オーダは右から来るスペライノサウルスの一頭の頭部に矢を当てた。間に合わないと察し、背に戻しつつ、側方からの一頭に矢を突き刺し、剣を抜いた。そのまま胸部を突き、右手で引き抜き、首を斬る。
一方でカムラも、迫り来る怪物と相対していた。飛び上がり、カムラの頭を食い破らんとくる一頭。カムラは後退してこれを避け、着地する瞬間を狙ってその頭に斬撃を与えた。後方からのもう一頭には顎部への膝蹴り、三頭目の振り回す尾を避け、勢いを失ったところで斬り落とす。
「前に吹き飛ばしてくれたお返しだ」
そのスペライノサウルスの頭部に蹴りを入れる。然し、スペライノサウルスは後方から接近し、カムラに馬乗りになった。反応に遅れたカムラは拘束される。口を開き、幾度とカムラを食い破らんと噛み付くが、カムラは首を動かし、これを避ける。自由となる足を、尾の付け根に何度も蹴り込み、スペライノサウルスがこれに反応した隙を付き、剣を握る右手でスペライノサウルスの首を殴った。更に左も拘束が解けた為に左拳も叩き込み、頭上からくるスペライノサウルスに馬乗りになっている個体を投げ、衝突させた。
「カムラ、避けてっ!」
カムラは寸前で身体を横に逸らした。直ぐ後に、雷撃が体勢を立て直さんとする一頭に直撃し、破裂音と共にその身体は焼け焦げた。
残る一頭となったのは一昨日カムラに攻撃を与えたスペライノサウルス。然し、カムラがまたもその個体を逃す理由はなかった。剣を脇に構え、突進する。スペライノサウルスもカムラへ突進していった。然し、ラリアはカムラに強化魔法を与える。スペライノサウルスに対し、拮抗するだけの力を与えられたカムラは柄をスペライノサウルスの首に叩きつけ、袈裟斬り、そして、刃先を切返しそのまま胸部を突き刺した。今度こそ、完全にトドメをさされ、動きを止めた。
「やったー!」
「さて、んでこれを倒して何か得られるものは?」
「今はスペライノサウルス系統は高値で取引されませんから。数多く生息しているとはいえ、見つけられない事も昨今は多いものです。なるべくバグの討伐をする方が報酬は得られると思います」
「え、そうなの?」
「えぇ。こうして次々とスペライノサウルスの絶対的な個体数の減少があるでしょうし。食用として考えたとしても、やはり高値では難しいものがあります。
あ、それから、倒したモンスターの死骸はなるべく傍に。死骸は他モンスターを時として呼び寄せます。カラキドン等が寄ってくれば後続の冒険者にとっても危険があります」
「その言いぐさだと洞窟遺跡で利益を出すのは難しそうだな」
「えぇ。無論本質が解き明かされたわけではありませんが、第六層と第五層の難易度は冒険者になったばかりの人らがまともに戦えるモンスターはごく僅かとなります」
「サラマンダーとか、フォージキメラとか」
「カラキドン、トロヌラー、とか?」
「まぁ、その辺りですね。しかしアレらは巨大な分、成り立ての冒険者の心を折ってきましたから。憧れ、そして挑戦した初心冒険者は悉く屠られ、冷たくなって帰ってくるのが常です」
読んで頂きありがとうございました
遅れて申し訳ございません。また、文量が少ないのですが、あまりにも話が長いので分割する事にしました。明日にも投稿します。




