F38ホークネイル失踪事件 27-7
7.裏側にいる奴ら
「ライバル会社同士ですから、最後まで営業はしのぎを削ったんでしょうけれど、ミネルヴァですか……逆の方ならあり得たと考えるんですけれどね」
企業イメージとしてミネルヴァ財団は白、コングロマリット・アマデウスには黒というダークなイメージが付きまとう。
アマデウスも企業として良い製品や商品を世に送り出しているのだが、公然と銀河連邦政府に敵対する団体や不満を持つ太陽系国家に資金援助したりしてダークな印象を振り撒き過ぎなのである。
正義者面して行える胆力も凄いと思ってしまう
「ミネルヴァだって絶対に正攻法だけとは思わないけれど、アマデウスの方が何かしら裏で動いていると考えやすいもんな」
「そうですね。でもトワイニンがどちらにも話を持ち掛けていたとしたら?」
「アマデウス系列製だぞ、アマデウス側がその話に乗っかる意味が分からん」
「亡命先があったとして、その太陽系国家にアピールする為とか?」
「そんな無理矢理な手を使わなくてもアマデウスの力なら営業可能だろう?」
「ですよねぇ」レイストも苦笑している。「だったら最初からアマデウスを標的にしていた」
「トワイニンがアマデウスを押すことで得た賄賂なりの額以上の金を得ようとしていたってことか?」
「まだF38が導入確定じゃないんでしょう? そうしたら機体やエンジンに難癖付けて、その機体を回収させようとしていたとか? それならありそうじゃないですか?」
「致命的な問題があってそれに乗っかっているのがアマデウスだとしたら、トワイニンのバックアップに動くのも至極真っ当かもしれないな」
シンシマは少しだけ撮影していたF38の画像をモニターに映し出す。
耳だけでは分からない異常があるかを他の音声付映像と比べさせてAIに検証させていく。
数分で回答は来た。
それまでSNSに上げられていた動画と比べるとそれは疑ってかからなければ分からないくらい同時配備されていた他機と比べるとほんのわずかな細やかな異常であると言うことだった。
「ビンゴか」
シンシマの言葉にレイストは鼻高々だった。
「ロストした機体には最初から異常があった? ドングリの背比べだった競争に終止符を打ったのがトワイニンの発言であれば、これを元から狙っていた可能性が高いな」
シンシマは考え込んでいたようだ。
「でしょう。でもそれで金をせしめたとしたら、それで終わりでは?」
「機体ごと自分が消え去ることは無いように見えるが、もしかすると借金を踏み倒した上で別の星系で別な名と顔で生活を始めようって魂胆じゃないだろうな」
「ありそうですね」レイストは頷く。「整理しましょう。トラッティン宇宙軍パイロットマーク・トワイニン大尉は優秀なパイロットですが、重度なギャンブル依存症で借金を抱えていた。ギャンブルをやるのに事欠くほどに」
「そこへやって来たのは、次期宇宙軍SSTOの機種選抜試験。そのテストパイロットだったトワイニンは操縦した当初からアマデウス系列の機体に異常があることに気付いていたが、それを他のパイロットやメカニックが気付いていないことをいいことに、二重に金をせしめようと考えた」
「まずは袖の下をアマデウスに要求。機体決定寸前で今度はマシントラブルが見つかったと称してそれをもみ消すための金を請求した。これなら動機として筋は通りますよね」
「そうだなぁ。借金を全て踏み倒すために新しい顔まで要求したとしたら。トワイニンならやりそうだよな」シンシマは同意してくれた。「パイロットとしてそれに気付くんだから、本当に優秀だったんだろう」
「勿体ないですよね」もっと違う人生もあっただろう。
日陰者になり果ててどうするつもりなんだろうか?
「それを正す気もないときている。屑はどこまでいっても屑だ」
「ギャンブルってそれだけ楽しんでしょうかね?」
「勝ってもうけが出れば勝利した瞬間にアドレナリンは出まくりだそうだ。競馬でもカジノでも何でも連れて行くぞ。やってみるか?」
「シンシマは経験者?」
「嗜むのも流儀だろう。経験してなんぼのものだ」シンシマは真顔で言う。「あとはどこまで線引き出来るかだよ」
「その内でお願いします」
「了解」シンシマはニヤリと笑うのだった。「これで動機は何となくだけれど分かった」
「これで納得できないですかね?」
「納得出来るだろうけれど、別の回答が本人からあるかもしれない」
「愉快犯的な奴もいますからね」精神に異常をきたした人の中には。
「そういうこった。本人の口から話がない限り、俺たちの推測が絶対に正しいとは言えない」
「話をすることが出来ればいいですね」
「だよなぁ。本人としては絶対的なアドバンテージを持っていると思い込んでいても、交渉相手がまともでなかったとしたら、無事では済まないからな」
「金をせしめたとしても、軟禁生活だってあるだろうし、最悪人格すら危うい」
「まあトワイニンがそうならないように仕掛けを施していたとしてもおかしくないよな。保身のために」
「僕だったら絶対にやりますよ。自分の身を守るために、あらゆる手段を残しておきますね」
「自分が捕まっても、何時間かセイフティを入力しなければ、情報が世間に公開されるとかな」
「他の人に情報公開を託しているとか」
「トワイニンは友達がいない。それはないな」
「ですよね」レイストは苦笑する。「何らかの証拠を残していたとしても、それを話した時点で相手も対策は講じますよね」
「最初からそうすると分かっているから、対策なんて最初から出ているだろし、動向だって見張られているだろう。無意味にしか思えん」
「無事ですかね?」
「それを俺たちが気にする問題でもないだろう」屑のことなんか知ったこっちゃない。「自業自得だ」




