F38ホークネイル失踪事件 27-6
6.答え合わせ~防衛網について
「さて次に行こうか?」シンシマは軽い感じで言う。
「犯人はトワイニンでいいんですか?」
「主犯かどうかは分からないが、F38の持ち出しに絡んでいるのはこいつで間違いないだろうな」
「理由は?」
「全容も犯行理由も掴めていないが、借金の担保にF38をバックにいた奴らに売り渡したと見るべきだろうな」
「そうなりますか? バックにいる奴らを今度は洗い出すと?」
「そうでなければ解決には至らないし、誰も納得できないだろう?」
「そうですよねぇ……」レイストはため息をつく。
このままトワイニン説をぶち上げたとしても誰も納得してくれない。
「惑星トラッティンの防衛で、衛星軌道上から成層圏に至る前は絶対に防衛しなければならない最終ラインになる」
「そこを突破されれば、侵略を許してしまったことになりますからね」
「そういうことだ」シンシマはレイストに頷く。「サテライトステーションや衛星監視網が機能していたとしてもそれを防衛するものに穴があったとしたら守るものも守れなくなってしまう」
「宇宙艦隊だけではすべてを監視できるものではありませんからね」
「どこの太陽系であってもそううだ。艦隊運用が重要になってくるが、どこかに穴があってもおかしくないというのが、現状だよな。広い太陽系を常に監視し続けるには艦隊数が足りなさすぎる」
「防衛費を増やさない限り、防衛艦は不足します。経年劣化から常に退役しなければならない艦が出てきますので、建造が急がれますが追いつくことはありませんよね。退役を延期したとしてもそれは付け焼刃にしかすぎません」
「そういうこった。宇宙空間の方が船の劣化は激しい時もあるからな」
「磁場や宇宙嵐ですよね」
「まあ、予算は俺らが考えることではないが、防衛にかんして現場には負担は大きいはずだ」
「その穴を埋めるのが、SSTOですものね」
「地上直行型とはよく言ったもんだ」シンシマは肩を竦めている。「ブースターを使って短時間で成層圏を突破して衛星軌道上の侵入物を迎撃するんだからな」
「それだけの機動力と火力が求められます」
「宇宙戦艦だけでなく隕石にまで対応するんだから当然だろう」
「最大火力と速度。本来は宇宙艦隊が対応すべきところではありますが、彼らが最終防衛ラインになります」
「単機に盛り込みすぎたよな」要求が要求であれど、それは難問だ。
機動性を求めるのならエンジンは肥大化し重量を増す。搭載する兵器も同じだ。破壊力が増すにつれてこれも重量が増すことになる。それらの問題を解決しつつ機動性を維持するのは大変なことなのだ。
「最大の謎は水を漏らさぬ防衛網があったとして、そこに穴があったことだよな」
「ロストしたと言うことは、そうなりますよね」
「何か思いついたことはあるかい?」シンシマはレイストに訊ねる。
それは先生と生徒の間柄にも見えてしまうのだった。
「宇宙軍の動向って追えますか?」
逆にレイストは訊ね返してくる。
「出来るよ」
「え~っ、そんなサイトありますか?」
「蛇の道は蛇、ってな」シンシマは微笑む。「そう言うのを逐一調べている監視団体もいるんだよ」
「なるほど」レイストはそれだけで分かったようだ。「平和監視団か、軍拡反対派ですね」
「そういうこと」シンシマはレイストの理解力が嬉しいようだ。「そういった奴らは不要な行為があったとしたら拡散させたがるし、資金の無駄遣いだと吠えている」
「まあ平和主義は良いことですけれど、昨今の銀河系の情勢を考えると、綺麗ごとばかりはいっていられませんからねぇ。軍が解散したとして、そこから侵攻されたとしたら、彼らはどういうんでしょうね」
「侵略者の手先かな。そう言われてもおかしくないやな」
「あとはプライドの問題ですかね」
「それこそ面倒くさい。銀河連邦政府でさえあてに出来ないというか、動けないケースもあるからな」
「自分のことは自分で守らなければならないということになりますよね。トラッティンであれば辺境に近いし、友好国からも遠かったりすると、なおさら自国で守らなければならないというふうになりますよね」
「それが自国の経済成長を阻害していると考えている人もいるし、平和主義を貫くのなら軍拡は必要ないと主張する人もいるわな」
「そう簡単には行かないですけれどね」
「彼らの考え方はシンプルなのさ。これは永遠の議論だからな」シンシマは肩を竦める。「非暴力主義もあれば、力こそが正義という考えもある。力が抑止力になるとか、平和主義っていうのは難しいバランスに立っている」
「僕らでは解決できることではありませんね」
「そういうこった。政治的やり取りは本当に面倒くさい」
「そこいらは関係していますかね?」
「ないな」シンシマは鼻で笑う。「どう見たって私利私欲しかないだろう」
「個人的なものなら楽なんですけれどね」
「俺らとしてはだろ?」
「そうなりますかね」
「政治であれ、企業倫理であれどこかで何らかの事情は絡んでくる。そう簡単には終わらないのが、現状だよな」
「本当に面倒ですよね」
「広い太陽系をくまなくフォローするのは難しいよな」
「艦隊が足りません」
「艦隊運用だけではとごかしらに穴がある。それをカバーするのが衛星監視網だが、それに対抗する手段も考えられ続けている」
「こういうのって鼬ゴッコですよね」
「どちらも疲弊するまで、永遠に走り続けなければならないのさ」
「何、格好良い事を言っているんですか?」
「言いたくもなるだろう。それが若さであったとしてもな」
「青春ですねぇ」
「何、枯れてんだよ」
「そうなりたくもなってきますよ。シンシマだってそうでしょう?」
「そうか? 俺は楽しんでいるよ」シンシマは笑っていた。「それにそのためにSSTOが必要になってくるのが分かるだろう?」
「防衛ラインを整えておくのが常ですからね」
「模範回答ありがとう」
「その評価担当が、マーク・トワイニン大尉なんですよね」
「そういうこったな。分かりやすい構図だよな」
「意外ですよね。人間性からしたら」
「それだけテストパイロトってしては優秀で、発言力もあったんだろうな」
「なるほど頼られていたと」レイストは頷く。「そうなると金の無心から軍需産業から絶対に賄賂もらっていますよね」
「発言力が強ければそう言う話も持って行ける。直接、間接かは分からないが、関係性はあるよな。問題はどことだが?」
「導入に関して対抗機種はあったんですよね」
「アマデウス系列とミネルヴァ系列だよ」
「うわぁ~。ありがちな構図」
「どうやら、トワイニンがアマデウス系列を押したらしい」
「思いっ切り意見が反映したと?」
「裏サイトの過去ログを探ってみると、そういう話が読み解けるな」
「犯人確定ですね」
「状況証拠しかないが、俺としても確定とみていいだろう。あとはそれに呼応した企業があって、それに乗っかった理由だな」
「なるほど。そこが分からないと、何らかのしこりが残りますね」
「銀河保安局だって無能じゃない。ここくらいまでなら辿り着いているだろう」
「僕らでも調べられていますからね」レイストは納得する。
「ここからどこまで深掘りできるかだ」




