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サラリーマン、銀河を行く ~底辺から花形部署へ成り上がれ  作者: 無海 シロー


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F38ホークネイル失踪事件 27-3

 3.思い付きで議論



「じゃあ、パイロットが機体を持ち逃げしたという線は?」レイストは思い付いたように言ってみた。

「その線も考えた。しかし、それだったらロストしたというのが分からないし、パイロット単体ではなく複数の協力者がいなければ機体の回収は難しいだろう?」

「地上のどこかに着陸して自力解体してパーツごとに持ち出す。とか」

「言っていて無理があると思わないか?」シンシマは呆れる。

「途方もなく時間が掛かると思いますし、その知識が無いと難しいですが、これだったら一人で出来るのでは?」

「誰か協力者がいた方が楽だろう」

「監視衛星のひとつが乗っ取られた。という説の方が具体性がありますね」

「ハッキング能力がないと難しいから、それの複数犯がいる前提になる」

「シンシマなら出来るのでは?」レイストは何気に突っ込んでみた。「ハッキング能力も解体能力もあるし、シンシマなら一人で可能でしょう」

「出来ないことは無いが、一人でやろうとは思わないな」

「時間との勝負になることはありますからね」

「衛星の中にでも宇宙船を隠して後は逃げ出すってか? これが言いたかったからお前、単独犯の話を出したんじゃないだろうな?」

「良いアイディアでしょう?」

「ネタ出しご苦労さん。俺がやる理由はないな」

「ただの愉快犯」面白がっているようにも見えたから、こうした話題提供の線はあるかもしれないと考えてしまったのである。

「そんな暇ねぇよ。フィオーレに気付かれたらどやされるわ」

「ですよねぇ。身内の方が怖い」

「今のところ事故なのか犯罪なのかは分からないからな」

「発表を見る限りそうですね」レイストは頷く。「いくらブースターを備えていても戦闘機です。F38単体では宇宙空間の壁は越えられません。単独犯はあり得ませんね」

「それにF38にステルス機能はあったか?」

「高高度迎撃機でスピードを求められていますが、全面的とはいかなくてもステルス機能は多少あったと思いますよ。塗装と機体の流線型で」

「まあその辺りは日進月歩の化かし合いだからな」

「ただそうなると協力者の宇宙船なり輸送船もステルス機能を備えていないといけませんね」

「協力者がどこに潜んでいたか、か?」

「ロスト場所が秘匿されているのは、その簒奪者がまだ太陽系に潜伏している可能性があると言うことでしょうかね?」

「そう言う見解もあるな」シンシマはクスリと笑う。

 彼の中では答えがあるようにも見えてしまう。

 その謎解きにしっかり答えてくれるのか、レイストは試されているのかもしれない。

「ただ持ち逃げにせよ。強奪するにせよ。その理由が分からいなんだよな」

「そこまで知る必要がありますか?」

「事件には表面に見えることだけでなく、裏の裏があるからねぇ」

 腕組みしてシンシマは面白そうに頷いている。

「ドロドロしたのだけは勘弁して下さいよ」

「どうなんだろうな」シンシマは他人事だった。「愉快犯にだって理由はある。恨み辛みがあって相手の顔に泥を塗りたいとか」

「それに自分の経歴を汚すなんて、力の無駄遣いですよ。力を遣うのなら人の迷惑のかからないところでやって欲しい」

「そういうやつもいるんだよ。周りが見えなくなってな」

「まあ僕らはトラッティン人じゃないし、解決するのは彼らですからね」

「そういうこったな。それにここ一週間の間にトラッティンの周回軌道での宇宙船舶の航行状況はビーコン波でチェックされていて、その中に運航状況で怪しい動きをしている宇宙艦船は無かったな」

「そこまでもう調べているんですか?」

「そういったデータは公表されているから、すぐにチェックできるだろう?」

「それはそうですが早すぎです」事前に用意していたのではと思ってしまう程だった。「監視網がずっと働いていたら、怪しい動きをしている船があったとしたらすぐにバレてしまうでしょうし、最初から誘導波や位置情報は包囲網に悟られないように切っているはずですよ」

「そんな宇宙船籍があったたら監視網に絶対に引っかかっているよ」

「うっ」レイストは呻く。「どんなステルス艦でもそれは無理ですね」

 どんな艦であれ熱や通信波を発している。

 どうあがいてもエネルギー波を発しなければそれは幽霊船だと言ってもいいし、そんなステルス艦は存在していない。

 完全にレーダー網から消え失せるのは難しい。何らかの音波や電磁波、エネルギー波が高熱源とともにあるので、センサーから逃れる術はない。

 これは兵器に課せられた至上命題でもあった。

「張り巡らされたレーダー網を潜り抜けるのは難しいことだと分かるだろう?」

「そうですよねぇ。色々と謎は残りすぎています」

「これは続報が楽しみになってくる」

 シンシマは破顔一笑するのだった。

 レイストは深いため息しか出てこなかった。



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