秘書面接 26-12
12.君去りて
「彼女、TDFに来てくれるかしら?」
ライリィの乗ったエアタクシーを本棟玄関先で見送りながらクリスは呟いた。
「不安ですか?」
「私の進退にも関わることですから、当然ですよ」軽い笑みを向けてくる。
どんなことはでも大らかに応えるクリスらしい。
「これがダメだったとすると次の応募はいつになるのか分かりませんからね」パーンも知ってか知らずか話に合わせてくる。
「自分の秘書のことなのに、なんでパーンはそこまで達観できるのかしら?」
「僕は秘書の必要性を感じていないからかもしれません。だからなる様にしかならないからでしょうか」
「他人事のように」大らかなクリスでも呆れてしまう。「心配になりますよ」
「まあ決まっているようにもみえましたよ」
「すぐに連絡くれますかね?」
「くれるとは思いますけれど、結果はどうなるか」
「そうですよね~」
「僕たちは説明責任を果たし過ぎたからね」
「そうですね。凄く突っ込みがありました。私も明け透けでしたが、フェリウスはかなり不満をため込んでいたのでしょうね」
「あそこまでとは思いませんでした」パーンは気にしていない。
「パーンのことですよ」クリスは呆れていた。「私はハラハラしながらライリィさんを見ていました」
「クリスの印象はどうでした?」
「同年代なのに大人びて見えました」
「向こうもそう思っていますよ」
「そうだといいですね」
そんな話出ていただろうか?
「方言も出ていませんでしたし」
「それはパーンが大人しくしてくれていたからでは?」
「そうかもしれません。クリスも大人になりましたね」
「なっているのでしょうかね」大らかなクリスだった。「あと、パーンに似ていたような気がします」
「僕とですか?」
「髪の色も似ていましたし、雰囲気もかな。姉弟みたいな感じがしています」クリスは考えながら言う。「それに目力があったし、そのためきつい印象もありましたね」
「僕はそんな印象?」
「ライリィさんからそう感じただけですよ」
「成程気を付けましょう」
「何をか分かりませんが、あくまで私がそう感じただけですからね?」
「分かっていますよ。クリスですから」
パーンは笑っていた。
「来てくれるといいなぁ」クリスは伸びをしながら言う。
「オガワさんは採用だと言っていましたよ」
「そうなのですね。パーンも問題なさそう?」
「そう感じました」
どの辺りがとクリスが訊ねても、答えは無い。
「でもこれは彼女の意思確認のためのものですよね」
「強制ではありませんからね」
「私の時もオガワさんには猶予をもらいましたし、こちらが大丈夫でも彼女が拒否したらご破算ですよ?」
「フェリウスもドキドキしていたのでしょうか?」
「最初の顔合わせで来てくれると思ったと言われました」
「そうでしたか」
「パーンは不安にならないんですか?」
「ちゃんと考えてくれていると思いますよ。だから大丈夫です」
パーンは淡々とした口調で、仕事へと戻っていく。
「そう言うことにしますね」気にすることは止めた。
クリスも残してある仕事に向かうことになるし、明日にはトラッティンに戻らなければならなかった。
慌ただしすぎた。




