秘書面接 26-6
6.葛藤?
ライリィは内心頭を抱えながら、もう一度秘書の募集要項を見る。
良識が邪魔してしまう。本当にTDFは理解しがたい。
ただ部長秘書の話を聞いていると、そんなこと書いてあったかと思ってしまう。
『主な仕事は部長のスケジュール管理と他との調整』
簡潔な言葉で書かれている。
言葉通りとるなら、それは秘書として仕事に思えたが、これは深く考えれば部長だけでなくそれに関する調整を一任されていると見えてしまう。
重責すぎる。
明け透けな秘書官の言葉にライリィはどうしたものかと少し困惑している。少しだ。
「激務すぎ」
『慣れれば問題ありませんよ』大らかに秘書は言う。『私の前任はもっと苦労していたと思うのですから』
私は秘書になったとして、やっていけるのだろうか?
「問題ありませんよ」パーンはそういうと自分の端末を見る。
『私も問題ないので大丈夫だと思いますよ。パーン、何かありましたか?』
「フェリウスが来てくれました」
その言葉とともにパーンの左隣に美女が現れた。
『フェリウス・アーク・アウゼンです』フワフワとした黄金色の髪を揺らしながらライリィに微笑む。『私はなぜ呼ばれたのかしら?』
彼女は隣のパーンを睨む。
休憩中に呼び出されたのだろう。コンパニオン服のままの姿でライリィの前に姿を現している。
「僕の実態を語ってもらいたいためですよ」
『良いの? 容赦はしないわよ?』
育ちの良さそうな人だった。
「赤裸々に語って下さい」
『ではそうしますね』彼女は上機嫌で微笑んでいた。
ティーマとトラッティンにいる現秘書と元秘書が姿を現す。リアルな映像だとライリィはその瞬間思っていた。
二人は実体験を詳細に語ってくれている。本当に明け透けに。
後任の採用のことなど関係なという感じで、内に秘めていたことを思いっ切り吐き出している。
きっと理解した上で仕事を受けてもらいたいのだろうという圧もあった。
『何度泣かされたことか、終いには泣き虫とまで言われてしまいました。それも今ではいい思い出ですが当時は本当に辛かったです』
「こめんなさい」
『殊勝に見えますが、フリですから誤解しないように』フェリウスはライリィに言う。
「そのようですね」
『私は前任の引継ぎもなく苦労しました。それがあったので後任にはきちんと引き継ぎをしています。もし貴女が秘書になるのであれば私とクリスが全面的に引き継ぎの面倒をみたいと思っています』
その決意にも似た言葉にライリィは感謝するしかなかった。
元秘書課の話は憎悪が混じっているように思えてくる。
面談や会議だけでなく会席があっても、平気で重要なスケジュールから逃げようとする姿がすぐに見えてくる。
この少年は平然としているが、図太いというよりは自分と同じで繊細に感じられた。ストレスに弱いのだろうか。心臓には毛が生えているよう気がするが。
思考の過程が分からないが、思いっきりがいいのか?
必要性が感じられなければ、忽然と現場から逃げ出して雲隠れしてしまっている。そのために秘書は苦労することになっていた。
対外的には無責任だったし、相手の心象も良くない。気付けよ。
それだけでなくさらに出来るだろうと仕事は無茶振りをしている。
最近ではただの総務畑に出航直前にコンテナ搬入作業のチェックを税関手続きとともに作業をやらせるなんて鬼畜すぎるだろう。
能力を見越してのことだろうが、それでもちゃんと評価しないまま仕事を強要しているように見えてしまう。
人は正当な評価を欲しがるものなのである。出来る、出来ないは問題ではない。
説明もなく初めての仕事を振られるのは迷惑千万である。
「ちゃんと説明して下さい」
「分かってくれるかと」
「説明不足です。TDFのメンバーの方々もそう思っていますよ」
「でも面倒なんだよね。難しいし」
「それでついてこられる人しかいないのは問題だと思います。産業博覧会はもっと多くの人が必要だったはずです」
「何とかなったよ?」
「メンバーの方々が限界まで頑張ってくれたおかげでしょう? それに報いるようにするのが部長の務めでは?」
「応えられるようにしていますが?」
「それに見合った報酬や言葉が必要なのです。士気も上がります」
「僕よりオガワさんやフィオの方からの言われる方がいいと思いますよ」
「部長は貴方ですよ? 肩書は誰よりも上なのです」
「はあ」パーンにはその認識が薄かった。
圧迫面接をしているつもりはなかったが、気にしていないようなので強い口調になっていて、どちらが面接官か分からない状況になりつつあった。




