秘書面接 26-4
4.TDF部長秘書とは?
「TDF秘書に応募した理由をお聞きしても?」
「今の現場から逃げ出したかっただけです」
「なるほど正当な評価欲しいと」
「そんなことは言っていませんが?」
「そう感じたんです」
「はあ」ライリィは呆れている。見透かされているのだろう。
「僕の秘書になるのですよ。大丈夫ですか?」
心配されている?
いやこれは確認か。
「それならばお訊ねしたいのですが、TDFはどのようなことを成されているのでしょう? 秘書という仕事についても知りたいです」
「僕が話さなければならないでしょうか?」
「部長さんの言葉から察することは出来ますが、私には裏サイト情報しかありませんので直接言葉で訊きたいです。『秘書潰し』というのが本当かどうか確認したいと思います」
「どうしても?」
逃げようとしても逃がすつもりはない。
「どうしてもです。私の未来が掛かっていますから」
「仕方がありませんね」
パーンは自分で説明する気が無いのだろう。そう見えた。
それから床に置いていた私用の鞄からタブレットを取り出すと隣の椅子の上に置いた。
「何を?」
個人端末を取り出すと連絡を取り始める。
「ああクリス? いま大丈夫? 仕事中本当にごめんね。うん。話をしてもらえないかと。そう君の声が聞きたいんだよ」
口説き文句か?
クリスは一人、TDF本棟の事務室の自分の席でモニターを見ながら仕事に励んでいる。
週に三日、オガワさんの奥様で総務の達人とも称されるパートルに経理も含めてお任せしていたが、それでも仕事は溜まっている。
仕事を分担しているキャスティも忙しくて、開幕前後に丸投げした分が多く残っていた。
重要案件や、早急に決済が必要なものはすぐにトラッティンに流してもらっているが、細々としたものがかなり残っている。少しでも片付けようとトラッティンにいるキャスティとラインでやり取りしながら、後回しにしていた事案を片付けている。
ある程度、裁量権はあったが、それでもこちらで判断がつかない案件はオガワとフィオーレに通知していた。
書類のデータ量が半分になったところで、モニターにパーンからのコールサインが入った。
パソコンの脇に置いていた端末を手にしてすぐに通話に出る。
「何か問題がありましたか?」二人だけということなので心配してしまう。
『いま大丈夫?』
「……大丈夫にします」クリスは切りの良いところで、仕事を止めた。「それで何か?」
『ごめんね。こっちへ来て話をして欲しいんだ』
「直接ですか?」
最初からパーンと行動していればよかったのだろうか?
『オリエナに頼んでいるから大丈夫。僕の口からよりもクリスやフェリウスから言葉の方が伝わりやすいかなと』
「フェリウスも呼んだのですか?」
『ちゃんと理解してもらいたから』
「そんなにあっけらかんと……、全部語ってもいいのですか? 逃げられたいのですか?」
『理解してもらいたいだけですよ』
「本当に? ……分かりました」深く考えないようにする。
パーンがこう言っているのだ。考えるだけ無駄だ。
モニターには準備が出来たとオリエナから通知が来ていた。
端末を立てかけると居住まいを正すクリスだった。




