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子ブタと狼(1423文字)

「助けてくれぇ!」


 絶体絶命の危機。

 長男子ブタと次男子ブタは、命からがら逃げ込んだ。


「さあ、早く入って!」


 迎え入れてくれるのは、三男子ブタ。ぜぇぜぇ言ってるお兄さんたちを、素早くレンガの家の中に隠れさせる。

 バタンと扉を閉めて、厳重なカギもかけた。


「もう安心だよ、兄さんたち」

「ありがとう、弟よ」「お前のような弟がいて、ほんとうによかった」


 二人の兄はどちらも、泣きだしそうだった。

 何故って、もう少しで食べられるところだったからだ。

 でも、ほっとしたのも束の間。三男子ブタが、窓の外を見てきゃっと声をあげる。


「追いかけてきたよ、兄さんたち!」


 それを聞いて、ひぇぇ!と抱きつき合う兄さんブタたち。三匹揃ってこっそり窓の端から顔を出してみれば──迫り来ているではないか。

 ムキムキマッチョの、凶悪なオオカミが。


「おしまいだ!」


 兄さんブタたちが声を揃える。でも、弟ブタだけが違った。


「大丈夫さ。だって、この家はレンガ造り。怪物みたいだと有名なあのオオカミだって、入ってこれるはずない……」


 そう言って、迫りくる悪魔を窓から睨みつけていたのだけど、奴の方は、全然怯む様子は無かった。


「そこにいるんだろぉ子ブタたち! 藁づくり、木造りと来て、次はレンガか!」


 窓越しにも、その大声がはっきり聞こえてくる。


「大丈夫、大丈夫……」


 三男子ブタは冷や汗を垂らしながら呟く。

 けれど、オオカミは足を止めることすらなかった。


「舐めるなぁ!」


 そういって、オオカミの体が風船みたいに膨らんだかと思えば──次の瞬間、どんな嵐よりも強い風が、レンガの家を吹き飛ばした!


「きゃああ!」「なんてこった!」「おしまいだぁ!」


 家と一緒に吹っ飛んだ三匹の子ブタが、原っぱにどてどて転げ落ちる。

 三匹とも泣きだしながらすぐに立ち上がり、一目散に逃げ出す。

 でも、またオオカミは追いかけてくる。


「諦めろぉ子ブタたち! もう逃げる場所もないだろぉ!」


 子ブタたちは体の底から力を振り絞って、ぜぇぜぇ走る。オオカミに返事をする余裕なんてない。

 でも、逃げる場所はどうしよう。このあたりで、オオカミから身を守れそうな場所──。

 ここで三男子ブタが、起死回生のアイデアを叫んだ。


「兄さんたち! どうにか頑張って、弟の家へ逃げよう。四番目の弟、コン太の家ならなんとか間に合うよ!」


 兄さんブタたちがそれぞれ、ほうほうの体で返事する。


「そうだな、それしかない!」「食べられてたまるかぁ! 死ぬ気で逃げるんだぁ!」


 さて、そんな絶叫が原っぱに響き渡ったところで、後ろのオオカミがふと足を止めた。

 あれ? となって、三匹の子ブタも足を止める。

 狼が、打って変わって、訝しんだ表情をしていた。


「おい、お前たち……まだ兄弟がいるのか?」


 三匹の子ブタたちもきょとんとしつつ、しかし根が優しい子たちなので、答えてあげた。


「ええ。僕らは八匹兄弟です。四番目の弟は、コンクリート造りの家に住んでるコン太、そして、五番目の弟は、鉄骨造りの家に住んでる鉄太と言って……」


 それを聞くと、オオカミは途方もない目をしたかと思えば、ため息をついた。

 そして、くるりと踵を返して、自分の巣の方へと帰っていった。



 三匹の子ブタたちは、何がなんだか分からないまま、顔を見合わせた。

 しかし、しばらくすると助かったという実感が湧いてきて、泣いて抱き合った。

 逃げ延びたお祝いに、八匹兄弟全員であつまって、パーティーすることになった。

 もちろん、場所は八男タン太の、タングステン造りの家である。

 


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