表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/60

怠惰(1052文字)

 あるところに親の脛ばかり齧る怠け者がいた。

 彼はもう、大人になってからずいぶんと経つ。それでも、生まれてこの方、働いたこともなければ、誰かのためになることをやったこともなかった。

 じゃあこんな大人になってしまうまでに、なにか同情を誘うような過程があるのかといえば、別段何もない。ただ彼が、度の過ぎた面倒くさがりだったというだけだ。

学生時代はゲームをしたいがためにまともに学校もいかず、退学になった。それからずっと引きこもって、毎日布団の上から動かずゲームをして、これまでを過ごしてきた。

 家族からも見放されて、しまいにはこのように、ごくつぶしとなり果てたわけである。


 ある深夜のことだ。

 それは窓の向こうで、美しく星の輝く夜だった。

 流石の怠け者も気分が良くなって、窓を開けて夜風を浴びながら、いつものように夜更かしをしていた。携帯機でやる、対戦ゲームに熱中する。

 そのとき、彼の視界の端できらりとなにかが光った。なんだと思って見上げてみれば、たくさんの流れ星が降り始めている。彼のようなごくつぶしにも、息を呑ませるような絶景であった。

 そしてふと、彼は傲慢にも思い立った。

 流れ星に願い事をしてみよう、と。

 こんな生活をしていて、まだ何を望むのかと言いたいところだが、怠け者には怠け者なりの不満があるらしかった。

 たとえば、たまに風呂に入らないと体がかゆくなること。それから、いちいちトイレに立つのが面倒なこと。最近で言えば、家族の冷たい視線も鬱陶しいこと。

ああ、ただただ毎日、ゲームだけしていられればなぁ──彼はそんな不満を持っていた。

 だから彼は、気紛れに、流れ星に頼むことにした。そのすべてを解消できる願いを。

 すると、偶然にも大きな彗星が、とてもゆっくり尾を引きながら、夜空を流れ始めた。十分に、願いを三回唱えられるスピードだ。

 彼は、自分のツキにつくづく感心した。これまでまるで苦労してこなかったのに、まさかこんな幸運も引き当てられるとは。だからこそ、まさかとは思いつつも、なんだか本当に願いが叶う気がした。

そして彼は、不格好にも胸の前で手を組み、声に出して願った。


「どうか、もう一生動かずに生きていけますように。どうか、もう一生動かずに生きていけますように。どうか、もう一生動かずに生きていけますように」


 そしたら、流れ星がきらりと光った。

 怠け者はハッとした。なんだか、理屈で説明できないような予感が、体の中を駆け巡ったのだ。

そして次の瞬間、怠け者は家の屋根を突き破って、夜空へと吹き飛んでいった。

 地球は、自転している。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ